見出し画像

部下が成長課題に取り組まない本当の理由|失敗しない人材育成術①

はじめまして、Akiさんです。日系大手人事としてキャリアをスタートし、欧州駐在を経て外資系企業へ。いまは外資系企業でアジア9カ国の人事責任者をしながら、個人事業で全国の中小企業支援、そして、SNSで経営戦略人事のリアルについて発信しています。

突然ですが、想像してみてください。

あなたは部下を持つマネージャーです。以前から、部下のAさんに対して、「彼はなかなか優秀だ」と思っていたあなた。将来のマネージャー候補として本格的に育成をしよう!と気合を入れています。

あなたは、これから育成しようという期待を込めたAさんから、どのような態度や心持ちを期待しますか? あなたの理想は?

いろいろイメージをしながら、あなたは、育成されるAさん本人とも対話しながら、色々なサポートをしています。

  • あなた 「この資料は、会社の来年の戦略を議論するネタがいっぱい詰まっているから、しっかり読んでおくといいよ」

  • Aさん 「はい、わかりました」

  • あなた 「来四半期のどこかで、アメリカに出張してもらうことになったから、英語の勉強しっかりしておいてね。」

  • Aさん 「はい、がんばります」

という具合に。ところが、あなたが思っているスピード感で、Aさんのレベルアップがなかなか見られない。なんとなく受け身な気もする。その時、あなたならどういう感想を持ちますか?

Aくんから、もっと積極的にもっと学べることはないか? やってみてどうだったか、という感想を聞きたいけど、そういう主体性が見られない。

こんな感想を持つかもしれません。今日は、こうした「頑張ります、と言った部下がなぜか動かない」問題の正体と、その処方箋についてお伝えします。

このnoteでは、人材育成における最初のつまずきポイント――本人の「渇望」の解像度が低いまま成長課題に取り組ませてしまうこと――と、その解決アプローチについて書いています。

部下や後輩の育成に悩むマネージャー、人事の方に読んでいただきたい内容です。この記事は、失敗しない人材育成術シリーズの第一部です。


1. 私が現場で出会う、育成の3つのつまずき

私は、人事という仕事柄、いわゆる優秀人材と呼ばれる人たちと面談をすることがたくさんあります。彼らにキャリアの方向性を考えてもらい、そこに向かうための成長課題をあぶり出す。そして、その成長を支援することがねらいなのですが、このような光景にたくさん出くわすことがあります。

成長課題には、営業力や英語力のアップ、ロジカルシンキングなど、人によってさまざまなものがあります。そして、彼らにアクションを起こしてもらい、定期的にフォローアップ面談をしています。

これまで国内外で3桁を超える人材と1on1をして、フォローしてきました。しかし、多くの人達が成長課題に取り組む中でつまずいてしまっています。皆さんの職場でも、似たような光景に心当たりはありませんか?

多くの場合、

・そもそもアクションをする気に本人がなれていない
・時間が取れない
・アクションをすることが目的になって、こなすことにフォーカスしてしまっている

のいずれか、または、これを複合した罠に陥っていることに気が付きました。そこで、3部作に分けて、人材育成の罠を認識し、人材育成を成功させる秘訣を紹介していきます。本記事はその第一部です。

2. そもそも成長のためのアクションをする気に本人がなれていない

キャリアの目標について、1on1をすると、多くの人がこんな目標を話してくれます。

「英語を操れるようになって、海外転勤をしたい」
「マネージャーになって、チームを率いたい」
「これまで営業をやってきたので、マーケティングができるようになりたい」

もちろん、こうした目標を話してもらえるのは素晴らしいことです。そして、その方向に向かうために、アクションアイテムを以下のようにリスト化してもらいます。

・1日30分英語を勉強する、
・マネジメントの基礎を学ぶ、
・マーケティングの勉強をする など

しかし、どうも進捗が悪い。そんな時に、私はこう投げかけます。

「「英語ができるようになりたい」と、キャリアの方向性を言ってくれたけど、あなた自身が本当に喉から手が出るほどほしいことですか?

と。すると、「うーん、そうですね・・・」という反応が返ってくることが往々にしてあります。どうも本人的にはしっくり来ていないのです。

自身の成長のためのアクションは、自分を律しながら、コツコツと取り組まなければならないことです。人間は本来怠惰なもの。その人が心から渇望するものでない限り、そこに到達するためのアクションになかなか取り組むことができません。

逆に、何かを渇望すれば、人間は是が非でも、それを手に入れようと懸命になります。

たとえば、濁流が流れる川の対岸に数億円の札束があり、対岸にたどり着ければ、その札束を入手できる。そんな状況にあなたがいるとしたら、あなたはどうしますか?

きっと、それを手に入れるために、努力を惜しまないでしょう。そこには、その札束をなんとしても手に入れるという渇望があるはずです。

心理学の世界にも、これに通じる考え方があります。デシとライアンが提唱した「自己決定理論」では、人は誰かに強制されてやる(外発的動機づけ)よりも、自分自身が心からやりたいと思ってやる(内発的動機づけ)ほうが、パフォーマンスや粘り強さが高まるとされています。「英語を勉強しなさい」と言われてやる英語学習と、「海外で活躍したい」と心から渇望してやる英語学習では、続く力がまるで違うのです。

3. 渇望の解像度を上げる、というアプローチ

とはいえ、キャリアにおける渇望する目標といっても、そんな崇高で壮大な目標はなかなか見つかりません。そんな時には、焦らず、その人自身が本当に望んでいることを一緒に探していきます。私の場合、こんなアプローチで始めてみます。

多くの場合、「なんとなく」マネージャーになりたい、といった具合にふわっとしたキャリア目標を掲げています。そこで、マネージャーになって、どんなチームを作ってどんなことを成し遂げたいですか? 「海外で活躍」とは具体的にどのエリアや国ですか? そこで活躍することで、ビジネスにどんなインパクトを成し遂げたいですか?と、「その先の、ありたい状態」を問いかけます。

これをより具体的にしていくことで、いきいきと語れるようになっていきます。そこは、「その人らしさ」、「その人ならでは」がふんだんに活かされた世界だからです。

繰り返しますが、そんな一足飛びに答えが本人から出るものではありません。ですので、少しずつ問いかけながら、徐々に徐々に解像度が高めていきます。解像度が高まるほど、渇望のエネルギーと、そこに向かうための成長アクションへの本気度が高まっていきます。

こうしたアプローチはコーチングでも実践されています。以前、「答えは、いつも相手の中にある」という記事で、コーチングは答えを与えるのではなく本人の中にある答えを引き出す対話だと書きました。

まさにこの「渇望の解像度を上げる」プロセスも、本人の中にすでにある願望を、対話を通じて輪郭のあるものに変えていく作業です。「目指したい世界(理想の状態)」を具体的にイメージすることは、非常にメジャーかつ効果的なアプローチです。

できるだけ、具体的にイメージしてもらうのがポイントです。たとえば、事務所を構えているなら、どんなオフィスを構えているのか、家具は・・・など。脳科学的にも、理想を鮮明に描くと、脳が「これは自分にとって重要な情報だ」と認識し、チャンスや解決策を見つけやすくなるそうです。

キャリア支援や人材育成にあたっては、まず対話し、相手の「なんとなく」のキャリアイメージの解像度を上げていき、理想の状態を少しでもイメージさせることをおすすめします。いきなり成長課題のアクションを取らせるよりも相手の本気度が上がってくるはずです。

4. まとめ:いきなりアクションより、まず解像度を上げる

今回のポイントを整理すると、

  • 部下の成長課題が進まない最大の原因の一つは、「時間管理」や「やり方」以前に、本人の中に「渇望」が育っていないこと

  • 「英語を勉強しなさい」という外発的な動機づけより、「本当にそれを望んでいるか」という内発的な動機づけのほうが、パフォーマンスや粘り強さにつながりやすい

  • ふわっとしたキャリア目標は、対話を重ねることで少しずつ解像度が上がり、渇望のエネルギーに変わっていく

  • 具体的にイメージするほど、脳はその情報を「重要」と認識し、チャンスや解決策を見つけやすくなる

  • いきなり成長課題のアクションを取らせるより、まず対話で解像度を上げるほうが、結果的に本気度が高まる

次回の記事は、「失敗しない人材育成術②:時間を『支配』する」です。皆さんの部下育成にも、今日の問いかけを一つでも試してもらえたら嬉しいです。

あわせて読みたい

企業の人事担当者様・経営層の方向けの、人材育成・1on1スキルに関する研修・講演のご依頼も随時受けております。ご興味があればお気軽にお問い合わせください。

いいなと思ったら応援しよう!