「本を読ませる」だけの人材育成をやめる|アウトプット前提の読書指導法
はじめまして、Akiさんです。日系大手人事としてキャリアをスタートし、欧州駐在を経て外資系企業へ。いまは外資系企業でアジア9カ国の人事責任者をしながら、個人事業で全国の中小企業支援、そして、SNSで経営戦略人事のリアルについて発信しています。
「この本、ためになるから読んでおいて」
部下や後輩に、そう言って本を勧めたことはありませんか。しかし、その本の内容、3ヶ月後にどれくらい残っているでしょうか。今日は、「読ませるだけ」の人材育成から一歩進むための、具体的な読書指導法について、私自身を実験台にした実践例を交えてお伝えします。
このnoteでは、「本を読ませる」だけでは人材育成として機能しない理由と、読んだ内容を確実に定着させ、行動変容につなげるための具体的な方法について書いています。
部下や後輩の育成に読書を活用したい経営者・人事・マネージャーの方に読んでいただきたい内容です。
1. 「読ませるだけ」の人材育成が機能しない理由
ビジネス書を読むと、そこにはたくさんのスキルや考え方が紹介されていますよね。「あー、知ってる知ってる」ということや、「へー!」という発見。あるいは、「うーん、なんかしっくり来ないなぁ」というものまで、色々あると思います。
読んでいる最中は、「へー、参考になるな!」 「うんうん、そうそう」 「これは明日から使えるな!」と発見をしたにも関わらず、です。
皆さん自身の状態はどうなっていますか? 3ヶ月後には、どんな変化が起こっていますか?
多くの方は、ほぼほぼ元通りになっているのではないでしょうか。なんか書いてあったな、程度で覚えているくらいだと思います。これは、部下や後輩に課題図書を渡す人材育成でも、全く同じことが起こります。「読んでおいて」だけでは、行動はほぼ変わらないのです。私も昔そうでした。
こんなに良いこと、参考になること、自分ならこうしてみたい、と感じることがたくさんある。なのに、もったいない! そう思った私は、あることを捨て、あることを始めました。
2. 私自身を実験台にしてみた:捨てたこと・始めたこと
昨年秋に社会保険労務士の試験に合格し、ようやく心の余裕ができた私。ここ1年半くらい、試験勉強が中心で、ビジネス書、自己啓発本を読めていませんでした。その反動が爆発したのか・・・
この冬休みに、一気にビジネス書を7冊読んでしまいました。
そして、その中で、ビジネス書の活用方法について、ふと気づいたことがありました。
「俺って、割と実践したり、習慣化するのが速いかも?」
こんな実感がふと湧きました。それが、これから紹介する2つの習慣です。
習慣1:本をきれいに読むのを捨てた。
せっかくの新書だから、折り目もつけず、汚したくない。そう思うのは人間の性です。しかし、私はそれを捨てました。
習慣2:書き込んでいくことを始めた。
少しでも「いいな!」と思ったことは、線を引いたり、行の上に◯をしていく。場合によっては、段落ごと、上に「^」を入れてしまいます。その中でも、最重要クラスに大事だ!と思った時は、☆マークも入れています。ですので、私が読んだ本は、メルカリやアマゾンではもはや売れません(笑)
3. 本を「自分用に完全カスタマイズする」
とても良い本を読み終わったあなた。
読み終わった時に皆さんはどう思いますか?
また読み直したいと思いませんか。少なくとも私はそう思っています。そんな時のために、こうした印だけ追っていけば、あなただけの発見の道筋を辿ることができます。
こうすると、その本は、あなたが「また訪れたい発見の地点」だらけになります。ちょうど、世界地図の中に、あなたが訪れた街の印を次々と入れていくような感じで。言うなれば、この方法は、その本を「自分用に完全カスタマイズする」 ということです。
この「自分用カスタマイズ」を部下育成に応用するなら、単に本を渡すのではなく、「読みながら、印をつけながら読んでみて」と一言添えるだけでも、受け身の読書が能動的な読書に変わります。可能であれば、その本の担当マネージャーである自分自身も同じ本を読み、印をつけた箇所をお互いに見せ合う、という進め方もできると思います。
4. 部下育成に応用するなら:印を付けた部分は「すぐ使わせる」
私が始めたことがもう一つあります。それは、印を付けた中でも、「これはいい!使ってみたい!」思える部分についてです。皆さんにも絶対にあると思います。
私が始めたもう一つのことは、これらを「すぐに使う」ということです。ポイントは「すぐ」というところです。
実は、このnoteの記事でも、以下の3冊で得られたことを早速実践してみています。いずれも、この記事の執筆時点の2週間以内に読んだ本ばかりです。
・「人を惹きつける話し方」
・「きちんと伝わる説明の「型」と「コツ」」
・「リーダーのためのストーリーテリング入門」
本という「知識のマップ」に、自分が大切だと思う箇所については、豪快に記を付けていく。そして、すぐに使ってみることで、自身の日常生活のなかで、強烈な体験・経験として確かに残していく。私はこうして自分の考え方、行動習慣をアップデートさせてきました。
部下育成に応用するなら、「読んだら、その週のうちに1つでいいから実際の仕事で試してみて。次の1on1で、どうだったか聞かせて」という形で、期限付きの実践課題にするのが有効だと思います。以前、「1on1の質を無料AIで30秒改善する」という記事で、準備の質が対話の質を大きく左右すると書きましたが、ぜひこういった質問も入れていってしまいましょう。
5. アウトプットが記憶の定着を高める理由
さて、ここまで見てきた「読む」という行為は、インプットです。「聞く」もそうでしょう。受動的です。対して、アウトプットという言葉があります。書く、話す、教えるといった活動です。
「ラーニング・ピラミッド」という概念があります。この概念によると、アウトプットを行うほうが、記憶の定着率や理解の深さは飛躍的に高まるそうです。
(なお、「ラーニング・ピラミッド」自体は、学習方法ごとの定着率を具体的な数値で示した図として広く知られていますが、その数値の出典は実は明確ではなく、教育研究の世界では慎重に扱うべき、という指摘もあります。ただ、「アウトプットが記憶の定着を高める」という方向性自体は、認知心理学における「テスト効果(retrieval practice)」など、より厳密な実証研究でも支持されている考え方です。)
インプットしている最中は、著者の論理に乗っかっているだけで、「理解した気分」になりやすいのです。しかし、いざ自分の言葉で説明しようとすると、「あれ、ここはどうだっけ?」という情報の欠落に気づかされます。曖昧な概念を具体的な言葉に落とし込む作業そのものが、脳にとって強力なトレーニングになります。
また、脳の司令塔である「海馬」は、入ってきた情報を「生きるために必要か?」で仕分けしているそうです。アウトプット(=情報を使う)を繰り返すと、脳は「これは頻繁に使う重要な情報だ」と判断します。こうすることで、短期記憶から長期記憶へと格上げしてくれるのだそうです。
人材育成の観点で言えば、読んだ内容を部下自身の言葉で説明させる、あるいはチームに簡単に共有させる、という機会を作るだけでも、単なる課題図書とは全く違う定着効果が期待できるということです。本は、少しの価格で、私たちにとって多くの広がりをもたらしてくれます。使いようによっては、高価な研修を受けるよりも、コスパがとてもいいと思っています。
6. まとめ:「読ませる」から「使わせる」人材育成へ
今回のポイントを整理すると、
「読んでおいて」だけの課題図書は、3ヶ月後にはほぼ内容が残らない
「自分用にカスタマイズしながら読む」ことで、受け身の読書が能動的な読書に変わる
印を付けた部分は、期限を区切って「すぐ使わせる」ことで、実践課題として機能する
アウトプット(書く・話す・教える)は、インプットよりも記憶の定着や理解を深めると言われている
課題図書を渡すだけでなく、「実践→1on1で共有」というサイクルまでセットで設計することが、読書を人材育成に活かす鍵になる
うまく活用することで、部下やチームメンバーの行動習慣をいい感じに、そして、すぐにアップデートできると思います。私自身がそうだったからです。今日の記事が、皆さんの人材育成の一助になれば嬉しいです。
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