リスキリングが掛け声で終わる会社、機能する会社の分かれ目|「マニュアル作りました」で満足していませんか
「リスキリング」と言うはいいが、「何のために学ぶのか」を具体的に伝えている企業は4割前後。掛け声だけ。
このnoteでは、掛け声だけが先行し、現場は置き去りにされてしまうリスキリングの構造と、掛け声で終わる会社と機能する会社の分かれ目について書いています。
経営層・管理職の方、人事として研修やリスキリング施策を企画している方に読んでいただきたい内容です。
1. なぜ、リスキリングは「掛け声」で終わってしまうのか
新しい知識・スキルの獲得の掛け声だけが先行し、現場は置き去りにされる。多くの現場で、私自身も繰り返し目にしてきた光景です。
帝国データバンクの2024年調査でも、リスキリングに取り組む企業における課題として、「従業員のモチベーションの維持が難しい」が42.0%でトップに挙がっています。目的が共有されないまま学びが「こなすもの」になれば、モチベーションが続かないのは、ある意味で当然の結果だと感じています。
2. 「マニュアル作りました」問題
「マニュアルを作りました」「e-learningを3つ受けました」
こんなKPI (重要業績評価指標。達成度を測るための具体的な数値目標) の達成の報告を、現場でよく耳にしていませんか。
行動はしている。むしろ達成もしている。でも、それが何のためなのか、どんなインパクトを生んだのか。本人にも上司にも言語化されていません。目指したい状態との繋がりが抜け落ちたまま、学びが「こなすもの」になってしまっている。だから成長にもビジネスの成果にも繋がらず、やがてモチベーションが尽きて下火になっていく。これが、掛け声で終わるリスキリングの典型的な構造です。
3. 目標を「アクション」ではなく「インパクト」で語る
管理職研修などで、私が繰り返し伝えていることがあります。「目標はアクションそのものではなく、インパクトで語る」という原則です。
「マニュアルを作る」はアクションです。「そのマニュアルによって、新人の立ち上がり期間が半分になる」がインパクトです。行動そのものをゴールにすると、行動した時点で満足してしまう。目指す状態・変化をゴールに据えると、学びやアクションはそこへの手段として位置づけ直され、そこで初めて意味を持つのです。
リスキリングも同じで、「何を学んだか」ではなく、「学んだ結果、何がどう変わるのか」。あるいは「何が実際にどれだけできるようになるのか」。これを、上司と本人の間であらかじめ握っておく必要があります。
4. 管理職の率先垂範が問われている
もう一つ、見落とされがちなことがあります。マネジメント自身のあり方です。部下や後輩には「学べ」「成長しろ」と言う。では、皆さん自身はどうでしょうか。当のマネージャー自身が、部下以上に優れたアンテナを持っているか。自らを変化させ続けているか。ここが伴っていなければ、リスキリングは掛け声だけで終わります。
部下は、思っている以上に上司や先輩の背中を見ているものです。以前、「フィードバックを受けないおじさん・おばさんが終わる理由」という記事で、役職が上がるほど周囲から注意されにくくなる、という話を書きました。自らフィードバックを受けて、見つめ直して、改善していく姿勢が問われている。そして、学びについても同じ構造があると感じています。自分から学び続ける姿勢を見せない限り、部下は誰もついてきません。
私自身、30代後半から社会保険労務士やコーチングの資格取得に挑戦しました。40代に入ってExecutive MBAにも入学しました。これは経営者目線を養うためでもあります。同時に、「学び続ける姿を自ら見せる」という責任でもあると考えています。
5. ジョブ型雇用の広がりが、この問題をより切実にする
さて、ジョブマーケット全体に目を向けてみましょう。日本企業でも大手を中心に「ジョブ型 (職務内容を明確に定義し、それに合った人を採用・配置する雇用形態)」への移行が進んでいます。以前、外資系で生き残るための条件という記事でも、ジョブ型の世界では「そのポジションで活躍できるか」が全てだと書きましたが、この流れは日本企業にも及んでいます。
中小企業でも、外国人労働者は増えています。彼らの母国の労働慣行、つまりジョブ型に触れる機会も増えています。群馬銀行のジョブ型人事制度は、象徴的な事例だと言えるでしょう。
ジョブ型の世界では、「その分野で価値を出せるかどうか」が全てです。それがポジションそのものに直結します。メンバーシップ型(職務を限定せず、人に仕事を割り当てていく従来型の雇用形態)のように、なんとなく会社にいれば異動が回ってくる。在籍年数が経過すれば先輩になり、周りも一目置いてくれる。そんな前提が崩れていきます。そのポジションで先鋭的になっていく、つまり真のプロになっていくことが求められるのです。
足元では、こうした地殻変動が起こっています。そんな中、「何を目指して、何のために学ぶのか」を自分で言語化できるかどうか。その上で、成長を示せないと、キャリアの選択肢を狭めてしまいます。これが、リスキリングを掛け声で終わらせない鍵です。個人にとっても、会社にとっても、これから死活問題になっていくはずです。
6. 働き方改革の議論はいいチャンス
連続勤務の上限規制や、勤務間インターバルの義務化。働き方改革の議論も今後さらに進んでいくでしょう。効率的に働くことは、学びの時間を確保することにもなります。
現場の一人ひとりが「なぜ、これを学ぶのか」を自分の言葉で語れるようになる。そうすれば、働き方改革で時間を作ることと、学びを意味あるものにすることの二つが、しっかり繋がっていくと思われます。
7. 経営層・管理職への問いかけ
自社のリスキリング施策を振り返ってみてください。そして、ぜひ一度、次の問いを立ててみてください。
「学んだ結果、何がどう変わったら成功と言えるか」 「これを、本人と言葉にして共有できているか」 「その問いに、マネージャー自身も、自分ごととして答えられるか」
答えに詰まるようであれば、そこがまさに分かれ目です。掛け声で終わる組織と、機能する組織の分かれ目です。あわせて、働き方改革を通じて、学びのための時間を作っていくといいと思います。
8. まとめ:掛け声で終わる組織と、機能する組織の分かれ目
今回のポイントを整理すると、
「何のために学ぶのか」が共有されていないことが、リスキリングが掛け声で終わる最大の原因
目標は「アクション」ではなく「インパクト」で語る。行動そのものをゴールにしない
マネジメント自身が学び続ける姿を見せられるかどうかが、部下の本気度を左右する
ジョブ型雇用の広がりにより、「何のために学ぶか」を言語化できるかが、個人のキャリアの死活問題になっていく
働き方改革による時間創出と、学びの意味づけは、セットで進めるべきテーマ
「学んだ結果、何がどう変わったら成功と言えるか」「これを、本人と言葉にして共有できているか」「その問いに、マネージャー自身が自分ごととして答えられるか」。答えに詰まるようであれば、そこがまさに分かれ目です。
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