ブロックチェーンとスマートコントラクトが溶かす「金融業界の壁」―前編―
暗号資産というと、ビットコインに代表される「新しいお金」としての側面が注目されがちだ。しかし、その本質的な革新は、暗号資産を支える「ブロックチェーン技術」にある。また、スマートコントラクトは、ブロックチェーンの登場により実行環境が整った。
そのブロックチェーンとスマートコントラクトが金融を変えようとしている。
具体的には、銀行・証券・保険・カード・為替・送金などの境界があいまいになり、各サービスの融合が進むことで、SoFiが推し進める垂直統合された「金融スーパーアプリ」がますます有利になる世界の到来である。
<ブロックチェーンとは>
「すべての履歴を保持し、データの改ざんが不可能な取引の記録台帳」というイメージである。仕組みそのものに信頼性が担保されているのが特徴だ。
すでに多くの分野で使われ始めている技術だ。身近な例では、野菜や魚などを、いつ、どこで、誰が生産・出荷したといった情報を、ブロックチェーンに記録することで、改ざんが難しく、消費者も安心して確認できる仕組みが導入されている。
<スマートコントラクトとは>
契約内容を紙ではなくプログラムとして記述し、自動的に実行する「契約自動実行プログラム」である。ブロックチェーンの台頭によって実用化された技術で、ブロックチェーンがスマートコントラクトを実現するプラットフォームである。
<スマートコントラクトの具体例>
1.「人身事故で電車が遅延、振替輸送が必要になる場合」
【現在】
・電車が止まると、駅員がアナウンス
・他の鉄道やバスで使える「振替輸送証明書」を紙で配る
・乗客はそれを持って別の交通機関に行き、駅員に改札で見せて通してもらう
・後日、各交通機関で「どの会社が振替輸送で何人をどこまで運んだか」を精算
【将来】
-事前にルールをブロックチェーンに記録-
例:電車が1時間遅延した場合、乗客に無料振替輸送を実施
・システムが自動で1時間の遅延を検知
・乗客のICカード(例:Suica、ICOCAなど)に振替輸送可の情報が自動付与(スマホに「無料振替可」と通知)
・他社の改札にそのままICカードをタッチして通過
・スマートコントラクトに基づき、各交通機関がブロックチェーン上で自動精算
2.「飛行機が遅延した保険に入る場合」
【現在】
・ユーザーが遅延を申請
・実際に飛行機が遅延したかどうかを保険会社が調査
・問題がなければ、後日、ユーザーの口座に補償金を振り込み
※人手での確認や審査が必要で、数日〜数週間かかる
【将来】
-事前にルールをブロックチェーンに記録-
例:飛行機が遅延した場合、ユーザーに補償金を支払い
・ブロックチェーンに遅延情報が送信
・スマートコントラクトに基づき、ユーザーに補償金を即時自動送金
<ブロックチェーンとスマートコントラクトが溶かす境界の壁>
【壁を溶かす要素①:ブロックチェーン】
銀行や証券の世界でも、「銀行の勘定系システム(預金残高や入出金を管理する基幹システム)」「証券の決済システム」など、分野別に独自のインフラを持っている。
しかし、ブロックチェーンという共通のインフラ上で、今までばらばらだった取引が処理できるようになると、分野ごとの技術的境界がなくなっていく。
【壁を溶かす要素②:スマートコントラクト】
スマートコントラクトにより、複数機能が自動的にプログラムで実行可能となる。たとえば、上に見た「保険契約と送金の自動連係」や、以前の記事で紹介した『国際送金における「通貨両替+即時決済」』などである。
これにより、従来は別の企業や分野で担っていた機能が一体化して1つのサービス上で完結することが可能になる。
【壁を溶かす要素③:仲介機能の縮小】
加えて、これらは第三者の仲介を縮小、または不要にする仕組みとも言える。たとえば、以下のような事例である。
・クレジットカード:決済の仲介をしていたVisaやMastercard
・国際送金:為替取引や決済の仲介を担っていた銀行
・保険:審査や支払い手続きの仲介を担っていた保険会社
<境界がなくなる未来像>
ブロックチェーンとスマートコントラクトによって、分野ごとに存在していた仲介や管理の機能が縮小すれば、「銀行・証券・保険・カード・為替・送金」などの境界があいまいになり、サービスの融合がはじまる。結果、あらゆる金融サービスをワンストップで提供できる企業に有利に働く。
こういった点においても、SoFiが推し進めるワンストップサービスや、「金融スーパーアプリ」としてSoFiが描くプラットフォーム戦略は、今後もその優位性が際立っていく。
後編では、銀行と証券の壁がどのように変化していくかを具体的に見ていく。
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