ステーブルコイン市場 ─ 「金融インフラ覇権」を巡る争奪戦 ─ SoFiUSDの未来 Part1🚀
2026年現在、世界中の金融機関や決済企業がステーブルコインに注目している。
TetherのUSDT、CircleのUSDCだけではない。PayPalのPYUSD、StripeによるBridge買収、MastercardのMTN(マルチトークンネットワーク)、Visaのステーブルコイン決済対応など、従来の金融業界の中心プレイヤーたちが次々と参入している。
というのも、ステーブルコインは「金融インフラそのものを再構築する可能性を持つ技術」として注目されているからである。
<市場規模はどこまで拡大するのか>
現在のステーブルコインの発行残高は約3,000億ドル規模である。
そして、例えばCitiは2030年時点で、
・標準ケース:1.9兆ドル
・強気ケース:4兆ドル
の発行残高に達する可能性があると予測している。
またStandard Charteredも2028年までに発行残高が約2兆ドルへ拡大すると予測している。
一方で、より重要なのは発行残高ではない。実際にどれだけのお金がその上を流れるのかである。
Chainalysisは、6年後の2032年頃には「ステーブルコインを活用した加盟店向け決済ネットワークがVisa級の規模へ到達する可能性がある」と指摘している。

つまりステーブルコインは、世界のお金の流れを支える基盤そのものになろうとしている。
さらにBVNKのレポートを見ると、すでにステーブルコインは投機目的ではなく、実需ベースで利用され始めていることが分かる。特に新興国では、「送金・決済・給与支払い・資産保全」といった用途で利用が拡大し、ステーブルコインの利用が生活の一部になりつつある。
<急拡大する理由>
急拡大すると考えられる理由はシンプルだ。現在の金融システムがあまりにも非効率だからである。
例えば国際送金で、海外へ送金する場合、
・中継銀行
・決済ネットワーク
・各国銀行
など複数の機関を経由する。
その結果、
・着金まで数日
・高額な手数料
・営業時間の制約
といった問題が発生する。
一方、ステーブルコインであれば24時間365日、数秒から数分で送金できる。さらにブロックチェーン上で完結するため、中継コストも大幅に削減できる。
これはメールが郵便を置き換えたのと同じで、金融の世界でも「価値の移動」がインターネットネイティブな形へ変化し始めているのである。
<ステーブルコインは決済インフラになり得る>
重要なのは、ステーブルコインが「決済インフラそのものになる」という点である。
現在、私たちは複雑なことを考えることなく、日常的にクレジットカードを利用している。実際には、Visa、Mastercard、銀行、決済代行会社などが裏側で複雑な処理を行っている。しかし、利用者はその存在をまったく意識しない。
将来的には、「裏側ではステーブルコインで処理されているが、利用者は気づかない」という日常が確実に訪れる。
つまりステーブルコインは、金融の新しい共通基盤になろうとしている。なぜなら、従来の金融システムが抱える時間・コスト・地理的制約を大幅に軽減できる可能性が極めて高いからだ。
<Visa・Mastercard・Stripe・PayPalが参入する理由>
こうした未来を見据えているからこそ、大手企業が続々と参入している。
PayPalはPYUSDを発行した。VisaはUSDCを利用した決済実験を進めている。MastercardはMTNを立ち上げ、トークン化資産やステーブルコインを既存ネットワークと接続しようとしている。そしてStripeは2025年にBridgeの買収を完了し、ステーブルコイン決済インフラの構築を本格化させた。
ここで重要なのは、彼らが本当に狙っているのは、「次世代の金融レール」ということである。
鉄道会社が「人やモノが行き交う線路(レール)」を押さえるように、金融業界も「お金が流れる決済基盤(レール)」を押さえようとしている。一度そのインフラを手にすれば、毎日莫大な取引量が流れ続け、そこから大きな収益が生まれる。
すなわち、本当に重要なのは、どのネットワークが利用されるかである。
利用者が増えれば増えるほど、流動性・加盟店・決済先・企業利用が増えるという好循環が生まれる。これはVisaやMastercardが巨大化した理由と同じだ。
勝つのはネットワークを築いたプレイヤーである。ステーブルコイン市場も同じ道をたどる可能性が高い。
<「巨額の運用コスト」という現実>
もっとも、市場の成長だけを見ればよいわけではない。ステーブルコインは発行するだけなら比較的容易なのかもしれない。しかし、「継続的に運営し、収益化することは全く別の話」である。
というのもステーブルコイン事業を立ち上げるには巨額のコストがかかる。加えて、規制対応・AML(マネーロンダリング対策)・コンプライアンス・監査・システム運用など、多額の固定費が発生する。
一方、ステーブルコイン事業の収益源は主に「ステーブルコインの裏付け資産からの運用益」や「決済量から発生する手数料」に依存する。
そのため十分な発行残高や取引量を確保できなければ、これら固定費を回収できない。最終的に採算が取れるのは、「世界トップ10クラスの発行体」ではないだろうか。
そのため、短期的には多くの企業がステーブルコインを発行する時代が訪れるかもしれない。しかし、その大半は十分な利用者や流動性を獲得できず、最終的に少数の有力プレイヤーへ集約されていく可能性が高い。
その中で、SoFiが発行する「SoFiUSD」は、次世代の金融インフラを考える上で注目すべき存在である。この勝者総取りに近い市場構造の中で、有力な候補の一つになり得る。
しかし、この戦いは単なるコイン同士の競争ではない。最終的な勝負は、「誰が次世代の金融インフラを握るのか」である。次章では、その土台となるSoFiの商業銀行免許について見ていきたい。
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