Visa/Mastercardの終焉【後編】―SoFiが切り拓く“手数料構造の破壊”―
1970年代にフィルム市場を支配したコダックは、変化を恐れ自らの未来を封じた。前編では、その教訓を通じてVisa/Mastercardが抱える“構造的宿命”を見てきた。
後編では、Visa/Mastercardが直面する“限界”をさらに深掘りし、SoFiがどのようにしてその壁を打ち破り、決済の「手数料構造」を破壊しようとしているのかを明らかにする。
<ステーブルコイン時代をにらんだVisa/Mastercardの動き>
両社はともに従来の法定通貨ベースの決済に加え、USDC(Circle社)、PYUSD(Paxos社:PayPalと提携)などのステーブルコイン決済の受け入れ準備を進めている。このまま導入が進めば、決済構造がシンプルになるように思うかもしれないが、そうではない。
現在のクレジットカードは、「銀行」「加盟店契約会社」「カード発行会社」「カードネットワーク(Visa/Mastercard)」という決済構造で成り立っている。
具体的には、消費者がカードを使って支払うと、データは「加盟店契約会社」を経て「カードネットワーク」へ送られ、「カード発行会社」によって取引が承認される。最終的な清算には「銀行」も絡む。消費者には一瞬の決済に見えても、裏側では実に多くのやり取りが発生している。
VisaやMastercardは、世界共通の決済と清算の枠組みを定め、それを運営する企業である。ステーブルコインを「新しい決済通貨」として採用しても、取引・清算の流れそのものを変えることはできない。むしろ、ステーブルコイン発行者(例:Circle社)という新たな層が加わるため、“さらに多層化”する。
Visa/Mastercardはステーブルコイン発行体でなければ、銀行でもなく、単なる決済の仲介者である以上、消費者の資金を直接預かり、決済できない。そのため、決済構造は変えられないし、さらに多層化する以上、手数料の削減にも当然限界がある。
これに対し、SoFiのように銀行免許を持ち、自らステーブルコインを発行できる企業は構造を大きく変えることができる。SoFiのような自社発行型であれば、消費者と加盟店の双方がSoFiの口座を利用することで、取引・清算のすべてがSoFi内部で瞬時に完結する。これは現在のクレジットカードの仕組みでは、“絶対に”実現できない。
両者の違いは、決済構造そのものにある。時間はかかると思うが、構造がシンプルなステーブルコインが最終的に勝つのは明白である。
<GENIUS Actが突きつけるVTAP構想の壁>
Visaは「VTAP(Visa Tokenized Asset Platform)」という構想を掲げる。これはドルやユーロなどを裏付けされたステーブルコインなどのデジタル通貨をブロックチェーン上で発行・管理できる仕組みをフィンテックや金融機関向けに提供するものだ。
一見すると、新しいモデルのように聞こえる。しかし、米国ではGENIUS Actが「参入障壁」として立ちはだかる。この法律は、実質的にステーブルコインの発行体を銀行あるいは銀行と同等の監督体制を受け入れ可能な事業体に限定している。フィンテック企業が自由にステーブルコインを発行することは、認められない。
したがって、VTAPの「Visaネットワーク上でステーブルコインを発行できる」という特徴が、米国では制度的に活かされることはない。実現するためには、Visa自身がステーブルコイン発行主体となるか、銀行と組むしかない。
一方、銀行免許を持つSoFiは自らがステーブルコインを発行できるだけでなく、ほかのフィンテックや金融機関向けにBaaS基盤を介してステーブルコインやウォレット機能を提供することが可能だ。ステーブルコイン発行に伴う規制やリスクはSoFiが負うため、BaaS基盤の利用顧客にその負荷はない。
VTAPとは対照的に、簡単にステーブルコイン発行者になれないGENIUS Actの下では、このモデルが極めて有効に機能する。
<コダックの亡霊― “構造を壊せぬ者の末路”>
コダックはデジタルカメラの構造を自ら発明したが、フィルムという莫大な既存収益を失うのを恐れ、封印した。Visa/Mastercardも同じリスクを抱えている。
仮に自らステーブルコイン発行体になり、SoFi同様の構造を再現して中間業者を排除しようとすれば、現在の取引先から猛反発があると同時に手数料収益が激減する。
Visa/Mastercardは、それぞれ年間決済処理件数「数千億件」、手数料収益「数百億ドル」、ルールブックを握る寡占構造からなる世界最大級の既得権構造を持つ。自らの手でそれを破壊するとはとても思えない。コダックと同じ構造だ。
また、あらゆる取引業者の間を“中立的に”つなぐことで成り立ってきたVisa/Mastercardの存在意義を根本から崩す行為とも言える。中立であるはずの機関が一つの銀行になり、競合とも言える存在になる──それは、本質的な自己否定につながる。
しかし、その背後で、ステーブルコインという「黒船」が後ろに迫ってきている。果たして勝者はどちらになるか?
決定的な転換点はおそらく「Apple、Amazon、ウォルマートなどの大手企業が、自社の決済システムに中間業者を排除するSoFi型のステーブルコイン決済を標準搭載した瞬間」にクレジットカードの優位性は劇的に崩れ落ちる。
次回は「GAFAMが越えられない“銀行の壁” ― SoFi vs GAFAM、制度が決める明暗」を予定しています。お楽しみにしてお待ちいただけるとうれしいです。面白かったと思ったら、「スキ💖」「フォロー🙌」「拡散📢」をお願いします!
【免責事項】 本ブログは情報提供を目的とし、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。内容は執筆時点の情報に基づき、将来的に変更される可能性があります。投資判断は自己責任で行い、十分な調査のうえ決定してください。本ブログの内容を基にした投資損失について、当方は一切の責任を負いません。また、外部リンクや第三者情報の正確性も保証するものではなく、各自の判断でご利用ください。

