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【現物給与評価#05】住宅の現物給与評価はどのように決まる?計算の流れをわかりやすく解説

― 社会保険上の評価の流れを図解で整理 ―


※本記事は現物給与評価Q&Aシリーズの一部です。

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【ご留意事項】
本記事は、借上社宅制度に関する一般的な情報提供および制度理解を目的として作成しています。記載内容は、一般的な制度上の考え方や実務上の整理を説明するものであり、特定の状況に対する税務・法務・労務上の判断、助言または保証を行うものではありません。

実際の運用にあたっては、会社ごとの制度設計・契約内容・運用実態等によって取扱いが異なる場合があります。個別案件については、必ず税理士、社会保険労務士、弁護士、または管轄の行政機関等へご確認・ご相談ください。

また、制度改正や行政解釈等により、将来的に取扱いが変更される可能性があります。最新情報については、国税庁・厚生労働省等の公表情報をご確認ください。
内容の正確性には十分配慮しておりますが、本記事に基づいて生じたいかなる損害等についても責任を負いかねます。




Q1. 住宅の現物給与評価は、どのような流れで決まるのですか?

会社から提供される住宅について、
社会保険上の基準により住宅の利益を金額に換算し、従業員の負担額などを踏まえて現物給与として評価します。
 
借上社宅では、会社が従業員へ住宅を提供している場合、その住宅による
経済的利益が、社会保険上の「現物給与」として取り扱われることが
あります。
 
ただし、住宅を提供しているという事実だけで、直ちに社会保険料の金額が決まるわけではありません。
 
住宅の提供から社会保険へ反映されるまでには、次のような流れが
あります。
🏠 会社が従業員へ住宅を提供
      ↓
📏 住宅の広さと都道府県単価を確認
      ↓
💴 住宅現物給与価額を算定
      ↓
従業員の負担額を差し引く
      ↓
📊 社会保険上の現物給与額を算定
      ↓
金銭で支払われる給与と合算
      ↓
📋 標準報酬月額の決定・改定に反映
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方
 
このうち、最初に行うのが、
住宅の広さと都道府県単価を基にした住宅現物給与価額の算定です。
 
そのうえで、従業員が社宅使用料などを負担している場合には、
その負担額を考慮して、社会保険上の現物給与額を整理します。
 
さらに、その現物給与額を、基本給や各種手当などの金銭で支払われる
報酬と合算し、標準報酬月額の決定・改定に用いることになります。
 
つまり、住宅の現物給与評価は、
「住宅の提供」
から直接社会保険料が決まる仕組みではなく、
 
「住宅の提供」
  ↓
「住宅現物給与価額の算定」
  ↓
「従業員負担額の確認」
  ↓
「現物給与額の算定」
  ↓
「社会保険上の報酬への合算」
という
複数の段階を経て行われます。
 
この全体の流れを理解しておくことが、住宅の現物給与評価を理解するうえで最も重要なポイントです。

[参考]まずは「現物給与」そのものの考え方を整理したい方は、
               こちらの記事をご覧ください。
【Q&A:現物給与とは何ですか?】
📖 制度の仕組みを知りたい方

この流れのうち、本記事では
「住宅現物給与価額の算定」「現物給与額の算定」「社会保険への反映」の3段階を中心に整理します。


Q2. 住宅現物給与価額は、どのように算定するのですか?

住宅の広さと、適用される都道府県単価を組み合わせて算定します。
 
住宅現物給与価額とは、
会社から提供される住宅の利益を、社会保険上の基準に基づいて金額へ換算したものです。
 
これは、大家へ支払っている実際の家賃や、会社が独自に設定した金額ではありません。
 
社会保険上の評価を行うため、公表されている都道府県単価と住宅の広さを用いて算定します。


[参考]都道府県単価の決まり方や適用方法については、
               こちらで詳しく解説しています。
【Q&A:都道府県単価とは何ですか?勝手に決められますか?】
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方

 
基本的な考え方は、次のとおりです。
【2026年9月30日まで】
都道府県ごとの
居住用の室1畳当たりの価額 
× 居住用の室の畳数 = 住宅現物給与価格
 
2026年9月30日までは、居間、寝室、客間、書斎、食事室などの
「居住用の室」の畳数を基準として算定します。
 
そのため、玄関、台所、トイレ、浴室、廊下など、居住用の室に該当しない部分は、原則として算定対象に含めません。
 
一方、2026年10月1日からは、次のように評価方法が変更されます。
【2026年10月1日から】
都道府県ごとの
総面積1平方メートル当たりの価額 
× 住宅の総面積 = 住宅現物給与価額
 
改正後は、居住する住宅の床面積の合計である「総面積」を基準として
算定します。
 
この総面積には、
居間や寝室などの居住用の室だけでなく、その住宅に含まれる玄関、台所、トイレ、浴室、廊下、押し入れなども含まれます。
 
ただし、別棟の物置や車庫、共同住宅において共同で使用する廊下や階段
などの共用部分は、原則として対象から除かれます。
 
このように、住宅現物給与価額は、
 ・都道府県単価だけ
 ・住宅の広さだけ
 ・実際の家賃だけ
のいずれか一つで決まるものではありません。
 
適用する都道府県単価と、評価対象となる住宅の広さを組み合わせて算定
する点が重要です。


[参考]住宅現物給与価額の意味や考え方は、こちらの記事で詳しく
               整理しています。
【Q&A:住宅現物給与価額とは何ですか?】
📖 制度の仕組みを知りたい方

 
また、2026年10月改正では、単価が変更されるだけではなく、
評価対象となる住宅の広さも、

「居住用の室の畳数」から、「住宅の総面積」
へ変更されます。
 
そのため、改正後の評価を行うためには、新しい都道府県単価だけでなく、住宅の総床面積を正確に把握できるかどうかも重要になります。

実務では、賃貸借契約書や重要事項説明書などから総面積を確認できるかも準備事項の一つとなります。


Q3. 従業員が社宅使用料を負担している場合は、どうなりますか?

住宅現物給与価額から、従業員が負担している社宅使用料などを
差し引いて、社会保険上の現物給与額を算定します。
 
借上社宅では、
従業員が会社へ一定の社宅使用料を支払っていることがあります。
 
このような場合には、住宅現物給与価額の全額が、そのまま社会保険上の
現物給与額になるとは限りません。

 
基本的には、次のように考えます。
住宅現物給与価額
      -
従業員が負担する社宅使用料等
      =
社会保険上の現物給与額
 
例えば、
社会保険上の基準によって算定した住宅現物給与価額が50,000円で、
従業員が会社へ社宅使用料として30,000円を負担している場合には、
差額の20,000円が社会保険上の現物給与額となる考え方です。
 
住宅現物給与価額 50,000円
      -
従業員負担額   30,000円
      =
現物給与額    20,000円
 
一方、従業員負担額が住宅現物給与価額以上である場合には、
差額が生じないため、住宅による現物給与額は0円となることがあります。
住宅現物給与価額 50,000円
      -
従業員負担額   50,000円以上
      =
現物給与額    0円
 
ここで注意したいのは、
住宅の現物給与評価では、食事の現物給与に設けられている
「一定割合以上を負担していれば現物給与として取り扱わない」という
考え方を、そのまま当てはめるわけではないという点です。

住宅については、基本的に、
社会保険上の基準で算定した住宅現物給与価額から、従業員が実際に負担
している金額を差し引いて評価します。

 
そのため、
「従業員が家賃の半分を負担しているから現物給与は発生しない」
 
「会社負担が一定割合以下だから現物給与にならない」
 
といったように、
実際の家賃に対する負担割合だけで判断することはできません。
 
確認する必要があるのは、
 ・大家へ支払う実際の家賃に対する負担割合
ではなく、
 
 ・社会保険上の住宅現物給与価額
 ・従業員が実際に負担している社宅使用料等
 ・両者の差額
です。
 
また、給与から控除している金額がすべて住宅の負担額として扱われるとは限らないため、社宅使用料に含まれる費用の範囲についても確認が必要と
なる場合があります。

 
例えば、社宅使用料のほかに、
 ・共益費
 ・駐車場代
 ・水道光熱費
 ・その他の付随費用
などを
従業員から徴収している場合には、
それぞれの費用の内容や位置付けを整理しておくことが重要です。
 
つまり、住宅現物給与価額を算定した後は、
従業員がどの費用を、どのような名目で、いくら負担しているのかを確認
する必要があります。

[参考]社宅使用料の考え方や適切な負担額については、
               こちらの記事で詳しく整理しています。
【Q&A:社宅の家賃は何%負担(社宅使用料)なら妥当ですか?】
🏢 会社目線で知りたい方


Q4. 算定された現物給与額は、社会保険にどのように反映されるのですか?

算定された現物給与額は、基本給や各種手当などの金銭で支払われる報酬と合算され、標準報酬月額の決定・改定に用いられます。
 
社会保険では、給与が現金だけで支払われるとは限りません。
 
住宅、食事、通勤定期券、自社製品など、労働の対償として通貨以外のものが提供される場合には、その利益を金額へ換算して報酬に含めることが
あります。
 
住宅についても同様に、
算定された現物給与額を、金銭で支払われる給与と合算します。
 
基本給・各種手当などの金銭で支払われる報酬
      +
住宅による現物給与額
      =
社会保険上の報酬
 
例えば、
金銭で支払われる1カ月当たりの報酬が300,000円で、
住宅による現物給与額が20,000円の場合には、
社会保険上は合計320,000円の報酬として取り扱うことが考えられます。
 
金銭で支払われる報酬 300,000円
      +
住宅による現物給与額  20,000円
      =
社会保険上の報酬   320,000円
 
ただし、現物給与額が変わったからといって、
必ず直ちに標準報酬月額や社会保険料が変わるとは限りません。

[参考]住宅が現物給与として評価される理由から理解したい方は、
               こちらの記事をご覧ください。
【Q&A:なぜ住宅は現物給与として評価されるのですか?】
👥 📖 制度の仕組みを知りたい方

 
社会保険料は、原則として実際の報酬額そのものではなく、
報酬を一定の幅に区分した「標準報酬月額」を基に算定されます。
 
そのため、住宅の現物給与額が増減しても、
合算後の報酬が同じ標準報酬月額の等級内に収まる場合には、
社会保険料が変わらないこともあります。
 
一方で、現物給与額の増減によって報酬が等級の境界を超える場合には、
標準報酬月額や社会保険料へ影響する可能性があります。
 
また、
現物給与価額の改定は、社会保険上の「固定的賃金の変動」に該当すると
されているため、一定の要件を満たした場合には、月額変更届の提出が
必要になることもあります。
 
ただし、月額変更に該当するかどうかは、現物給与額が変わったという
事実だけで判断するものではありません。

 
実際には、
 ・固定的賃金の変動があるか
 ・変動後の一定期間に支払われた報酬の状況
 ・標準報酬月額に一定の等級差が生じているか
 ・各月の支払基礎日数
など、
社会保険上の要件を確認する必要があります。
 
したがって、
「住宅現物給与価額が上がった」
  ↓
「必ず標準報酬月額が上がる」
  ↓
「必ず社会保険料が上がる」
という単純な関係ではありません。
 
住宅現物給与価額の変更が、
従業員負担額との差額にどのように影響するのかを確認し、そのうえで、
金銭給与と合算した報酬全体への影響を整理することが重要です。


Q5. 2026年10月改正では、評価の流れがどのように変わるのですか?

評価の基本的な流れは変わりませんが、住宅現物給与価額を算定する際に
使用する「単価」と「住宅の広さ」が変更されます。

2026年10月1日から、住宅に関する社会保険上の現物給与評価方法が
見直されます。

[参考]2026年10月改正の背景や制度全体への影響については、
              こちらの記事で詳しく解説しています。
【2026年10月改正・背景編】なぜ現物給与評価は見直されるのか?
📅 制度改正


ただし、
「住宅の広さと都道府県単価を基に住宅現物給与価額を算定する」

「従業員負担額がある場合は、その負担額を考慮する」

「算定された現物給与額を金銭給与と合算する」
 
という基本的な流れそのものが、
まったく別の仕組みに変わるわけではありません。
大きく変更されるのは、住宅現物給与価額を算定する段階です。
 
【2026年9月30日まで】
居住用の室1畳当たりの価額
      ×
居住用の室の畳数
      =
住宅現物給与価額
 
【2026年10月1日から】
総面積1平方メートル当たりの価額
      ×
住宅の総面積
      =
住宅現物給与価額
 
つまり、改正前と改正後を比較すると、次のように変わります。
①評価単位
 畳単位から平方メートル単位へ変更
 
評価対象となる広さ
 居住用の室の畳数から住宅の総面積へ変更
 
算定に使用する単価
 居住用の室1畳当たりの価額から総面積1平方メートル当たりの価額へ変更
 
改正前は、居間や寝室などの居住用の室を中心に評価していました。
 
一方、改正後は、玄関、台所、トイレ、浴室、廊下、押し入れなどを含む
住宅の総面積を基準として評価します。
 
そのため、同じ住宅であっても、改正前後で評価対象となる面積の考え方が異なり、住宅現物給与価額が変わる可能性があります。
 
そして、住宅現物給与価額が変わると、
従業員負担額との差額も変わる可能性があります。
 
例えば、従業員負担額が変わらない場合でも、改正後の住宅現物給与価額が増加すれば、社会保険上の現物給与額が増加することがあります。
 
改正前の住宅現物給与価額
      ↓
2026年10月改正により変動
      ↓
従業員負担額との差額が変動
      ↓
社会保険上の現物給与額が変動する可能性
      ↓
標準報酬月額・社会保険料へ影響する可能性
 
ただし、すべての住宅で現物給与額が増えるわけではありません。
実際の影響は、
 ・適用される都道府県単価
 ・改正前の居住用の室の畳数
 ・改正後の住宅の総面積
 ・従業員が負担している社宅使用料等
 ・金銭で支払われる給与額
 ・現在の標準報酬月額の等級
など
によって異なります。
 
そのため、借上社宅制度を運用している企業では、改正後の都道府県単価
だけを確認するのではなく、
 
対象となる住宅の総床面積を把握できるか
適用する都道府県単価はどれか
改正後の住宅現物給与価額はいくらになるか
従業員負担額との差額はどう変わるか
標準報酬月額への影響が生じる可能性があるか
給与計算や社会保険手続へどのように反映するか
という
一連の流れで確認することが重要と考えられます。
 
2026年10月改正は、単に計算式の一部を変更するだけではありません。
 
住宅情報の収集、社宅使用料の管理、給与計算、社会保険手続など、
複数の実務に関係する可能性があるため、
制度全体の流れを踏まえて準備する必要があります。


■ ポイント

住宅の現物給与評価は、
会社が従業員へ住宅を提供した時点で、直ちに社会保険料が決まる仕組み
ではありません。

 
まず、適用される都道府県単価と住宅の広さを用いて、社会保険上の
住宅現物給与価額を算定します。

 
次に、従業員が社宅使用料などを負担している場合には、
住宅現物給与価額からその負担額を差し引き、社会保険上の現物給与額を
算定します。

 
そして、その現物給与額を基本給や各種手当などの金銭で支払われる報酬と合算し、標準報酬月額の決定・改定に用いることになります。
 
住宅の現物給与評価の全体像は、
次の流れで整理すると理解しやすいでしょう。
住宅の提供
   ↓
住宅の広さ・都道府県単価を確認
   ↓
住宅現物給与価額を算定
   ↓
従業員負担額を差し引く
   ↓
社会保険上の現物給与額を算定
   ↓
金銭で支払われる給与と合算
   ↓
標準報酬月額の決定・改定に反映
 
また、2026年10月1日からは、住宅現物給与価額の評価方法が、
居住用の室の畳数を基準とする方法
から、
住宅の総面積を基準とする方法
へ変更されます。
 
そのため、借上社宅や寮を提供している会社では、改正後の単価だけでなく、
住宅の総床面積を把握できるか
適用する都道府県単価はどれか
従業員負担額との差額がどう変わるか
社会保険上の報酬へ影響する可能性があるか
という
全体の流れを確認することが重要です。
 
住宅、住宅現物給与価額、現物給与額、社会保険上の報酬は、
それぞれ同じものではありません。

それぞれの意味と関係を分けて理解することが、
住宅の現物給与評価を正しく整理する第一歩となります。


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借上社宅制度は、税務・社会保険・規程設計が複雑に関係するため、
個別事情によって最適な対応が異なります。

本記事は一般的な考え方を整理したものですが、
実務では会社ごとの状況に応じた判断が必要になるケースも
少なくありません。

現在は情報発信を中心としていますが、
今後は制度運用に関する実務上のコミュニケーションの場も
広げていければと考えています。

なお、記事テーマに関するご質問やご感想があれば、
コメント等でお寄せいただけますと、
今後の発信の参考にさせていただきます。


著者
Yoshihiko Tagawa|借上社宅制度の研究家

借上社宅制度について、制度運用や社宅管理の観点から
情報整理・発信を行っています。
毎月3000戸超の社宅運営に携わる中で、
借上社宅制度の運用面・管理面に関する情報整理を行ってきました。

本noteでは、借上社宅制度に関する一般的な仕組みや運用上の考え方を
情報整理を目的としてまとめています。
借上社宅制度にはメリットがある一方で、
運用方法や会社ごとの事情によって、税務・労務上の取り扱いが異なる場合があります。

中小企業の制度理解や運用整理に役立つ視点で発信しています。



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