【現物給与評価#06】住宅現物給与価額と現物給与額は何が違いますか?
― 評価の流れの中で、それぞれの役割を整理しましょう ―
※本記事は現物給与評価Q&Aシリーズの一部です。
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【ご留意事項】
本記事は、借上社宅制度に関する一般的な情報提供および制度理解を目的として作成しています。記載内容は、一般的な制度上の考え方や実務上の整理を説明するものであり、特定の状況に対する税務・法務・労務上の判断、助言または保証を行うものではありません。
実際の運用にあたっては、会社ごとの制度設計・契約内容・運用実態等によって取扱いが異なる場合があります。個別案件については、必ず税理士、社会保険労務士、弁護士、または管轄の行政機関等へご確認・ご相談ください。
また、制度改正や行政解釈等により、将来的に取扱いが変更される可能性があります。最新情報については、国税庁・厚生労働省等の公表情報をご確認ください。
内容の正確性には十分配慮しておりますが、本記事に基づいて生じたいかなる損害等についても責任を負いかねます。
住宅の現物給与評価では、
・住宅現物給与価額
・現物給与額
・標準報酬月額
など、
似たような用語が登場します。
前回は、住宅の現物給与評価がどのような流れで決まるのかを
解説しました。
その中で、
「住宅現物給与価額と現物給与額は何が違うのですか?」
という疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
住宅現物給与価額は、
住宅そのものを社会保険上の基準に基づいて評価した金額です。
一方で、その金額がそのまま社会保険上の報酬となるわけではありません。
従業員が社宅使用料などを負担している場合は、
その負担額を反映して現物給与額を算定し、その後、基本給や各種手当などの金銭給与と合算して、標準報酬月額の決定・改定に用いられる報酬へ反映されます。
今回は、前回解説した評価の流れの中でも、特に混同しやすい
「住宅現物給与価額」と「現物給与額」の違いを整理していきます。
Q1 住宅現物給与価額とは何ですか?
住宅現物給与価額とは、
会社が従業員へ提供している住宅を、社会保険上の基準に基づいて評価した金額です。
会社が住宅を提供すると、
従業員は住宅を利用できるという経済的な利益を受けます。
[参考]住宅現物給与価額そのものの考え方や、どのように算定
されるのかは、こちらの記事で詳しく整理しています。
▶【Q&A|住宅現物給与価額とは何ですか?】
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方
社会保険では、このような現金以外で支給される利益(現物給与)についても、一定の基準に基づいて金額へ換算します。
住宅については、
・実際に会社が貸主へ支払っている家賃
・周辺の賃貸住宅の家賃相場
・従業員が住宅を借りた場合の家賃
をそのまま使用するわけではありません。
厚生労働大臣が定める現物給与の価額に基づき、住宅の広さや適用される
都道府県単価などを用いて算定します。
[参考]都道府県単価がどのようなものか、
なぜ地域ごとに異なるのかは、こちらの記事をご覧ください。
▶【Q&A|都道府県単価とは何ですか?勝手に決められますか?】
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方
本シリーズでは、このように算定される住宅自体の社会保険上の評価額を、分かりやすく「住宅現物給与価格」と表現しています。
つまり、住宅現物給与価額とは、
「住宅そのものを社会保険上どのような価値として評価するか」を表した
金額です。
Q2 現物給与額とは何ですか?
現物給与額とは、
住宅現物給与価額から従業員負担額を反映した後、社会保険上の報酬として取り扱われる金額です。
住宅現物給与価額は、住宅自体を評価した金額です。
しかし、従業員が社宅使用料などを会社へ支払っている場合、その負担部分まで会社から利益を受けたことにはなりません。
そのため、住宅現物給与価額から従業員負担額を反映し、実際に従業員が
受けている住宅の利益を算定します。
基本的な考え方は、
住宅現物給与価額- 従業員負担額= 現物給与額
となります。
つまり、
・住宅現物給与価額=住宅自体の評価額
・現物給与額=社会保険上の報酬へ反映される金額
という違いがあります。
この2つの金額は似た名称ですが、意味や役割は異なります。

[参考]現物給与そのものの考え方から整理したい方は、
まずはこちらの記事がおすすめです。
▶【Q&A|現物給与とは何ですか?】
📖 制度の仕組みを知りたい方
Q3 なぜ従業員負担額を反映するのですか?
従業員が住宅の利用について一定額を負担している場合、その負担分に
ついては、会社から利益の提供を受けていることにはならないためです。
例えば、
・住宅現物給与価額:20,000円
・従業員負担額:12,000円
だった場合、
20,000円-12,000円=8,000円
となります。
この場合、
社会保険上の住宅の現物給与額は、原則として8,000円となります。
つまり、
住宅現物給与価額20,000円が、
そのまま報酬へ加算されるわけではありません。
住宅現物給与価額は、住宅自体を評価した金額です。
一方で、現物給与額は、従業員負担額を反映した後、実際に社会保険上の
報酬として取り扱われる金額です。
この違いを理解すると、
住宅の現物給与評価の流れも分かりやすくなります。
また、従業員負担額としてどの金額を反映するかは、実際の徴収状況や
制度の運用方法などを確認する必要があります。
社宅規程に定められているだけではなく、
実際にその金額が徴収されているかを確認することも実務上重要です。
[参考]従業員負担額の決め方や制度設計の考え方は、
こちらの記事で詳しく整理しています。
▶【第10回|借上社宅の家賃設定、その決め方で本当に大丈夫ですか?】
🛠 制度設計を学びたい方
Q4 現物給与額になるまでの流れを教えてください
前回は、住宅の現物給与評価全体の流れを解説しました。
[参考]住宅の評価から標準報酬月額へ反映されるまでの全体像は、
こちらの記事で図解しています。
▶【Q&A|住宅の現物給与評価はどのように決まる?】
📖 制度の仕組みを知りたい方
今回は、その中でも住宅現物給与価額から現物給与額になる部分に
注目して、具体例で確認してみましょう。
【例】 ※2026年8月2日時点に基づく都道府県単価です
・都道府県単価:1畳当たり2,000円
・居住用の室:10畳
・従業員負担額:12,000円
・金銭給与:300,000円
ステップ① 住宅現物給与価額を算定する
まず、住宅の広さと適用される都道府県単価から、住宅現物給与価額を
算定します。
2,000円 × 10畳 = 20,000円
この20,000円が住宅現物給与価額です。
ここで算定される金額は、
実際の家賃ではなく、社会保険上の基準に基づいて住宅を評価した金額です。
ステップ② 従業員負担額を反映する
次に、従業員が社宅使用料などとして実際に負担している金額を
反映します。
今回の例では、
住宅現物給与価額20,000円- 従業員負担額12,000円= 現物給与額8,000円
となります。
この8,000円が、住宅について社会保険上の報酬として取り扱われる
現物給与額です。
つまり、
住宅現物給与価額を算定することが目的ではなく、
従業員負担額を反映して現物給与額を求めることが重要になります。
ステップ③ 金銭給与と合算する
最後に、住宅の現物給与額を金銭給与へ加算します。
今回の例では、
金銭給与300,000円+ 現物給与額8,000円=308,000円
となります。
このように、
住宅現物給与価額 → 現物給与額 → 金銭給与との合算
という順番で計算が進みます。

Q5 現物給与額は標準報酬月額とどのような関係がありますか?
住宅の現物給与額は、
基本給や各種手当などの金銭給与と合算され、標準報酬月額の決定・改定に用いられる報酬の一部となります。
全体の流れを整理すると、次のようになります。
会社が住宅を提供する
↓
住宅現物給与価額を算定する
↓
従業員負担額を反映する
↓
住宅の現物給与額を算定する
↓
基本給・各種手当などの金銭給与と合算する
↓
標準報酬月額の決定・改定へ反映する
このように、住宅現物給与価額がそのまま標準報酬月額へ反映されるわけ
ではありません。
また、住宅の現物給与額が変動した場合でも、
それだけで直ちに標準報酬月額が変更されるとは限りません。
実際の取扱いは、報酬全体の状況や、適用される制度・手続などを踏まえて判断されます。
[参考]借上社宅制度全体の流れや、税務・社会保険・制度設計の関係を
体系的に理解したい方は、こちらをご覧ください。
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📖 制度の仕組みを知りたい方
■ ポイント
住宅現物給与価額とは、
会社が提供する住宅を社会保険上の基準に基づいて評価した金額です。
一方で、現物給与額とは、
住宅現物給与価額から従業員負担額を反映した後、社会保険上の報酬として取り扱われる金額です。
つまり、
住宅現物給与価額- 従業員負担額= 現物給与額
という関係になります。
また、現物給与額は、基本給や各種手当などの金銭給与と合算され、
標準報酬月額の決定・改定に用いられる報酬へ反映されます。
2026年10月改正では、住宅現物給与価額の算定方法は変更されますが、
・住宅現物給与価額を算定する
・従業員負担額を反映して現物給与額を求める
・金銭給与と合算して標準報酬月額へ反映する
という
基本的な流れは変わりません。
そのため、住宅現物給与評価を理解する際は、
「住宅現物給与価額」と「現物給与額」は異なる金額であることを
押さえておくことが重要です。
[参考]2026年10月改正で住宅現物給与価額の算定方法が
どのように変わるのかは、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶【2026年10月改正・背景編】なぜ現物給与評価は見直されるのか?
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著者
Yoshihiko Tagawa|借上社宅制度の研究家
借上社宅制度について、制度運用や社宅管理の観点から
情報整理・発信を行っています。
毎月3000戸超の社宅運営に携わる中で、
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