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朝五時半、世界を巡る ~朝の二十分間トリップ~

目覚まし代わりに、テレビが自動でつくようにしている。

会社員だった頃は、疲労から、一分一秒でも長く眠っていたかった。
ぎりぎりまで布団の中にいて、起きた瞬間から慌ただしく支度をする。そんな朝が、当たり前だった。

退職してすぐの頃は、とにかく何もせず、体を休ませることに決めていた。焦らず、思う存分、休んだ。

すると、あるときから、朝いつまでも寝ている時間が、もったいなく思えてきた。
体が少しずつ動けるようになると、今度はやりたいことが次々と出てきて、時間がまるで足りない。
休むために眠っていた朝が、いつの間にか、動き出すための朝に変わっていた。



朝、テレビをつけると、たいてい情報番組がやっている。
だが、朝から人の心を重くするような報道が続くことも多い。
しかも内容が真実とは限らない。
かといって、シーンとした部屋も落ち着かない。
試しにEテレに変えてみたら、ちょうど語学番組が始まるところだった。

平日の朝5:30~ 月曜はイタリア語、火曜はフランス語、水曜はドイツ語、木曜はスペイン語、金曜は中国語とハングル。
曜日ごとに国が変わる。

ホームステイ先での会話、旅先でのやりとり、食卓を囲む場面。
現地の映像を見ながら、少しだけ、その国の空気を吸う。
旅行に行けるわけではないけれど、朝の二十分ほど、画面の向こうに連れていってもらう。

そしてポイントは「深く考えなくていい」こと。
朝起きたばかりの頭には軽い気持ちで見られるものがちょうどいい。

早起きが、こんな時間をくれるとは思わなかった。

今日は何曜日だったか、と思いながら、私はテレビの前でコーヒーを淹れる。


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