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でっかいミラクルを引き寄せた話 ~お礼は天ぷら2個でいいらしい~

5回目のトルコ行きは、出発三日前に暗雲が立ち込めた。

エーゲ海沿いの街、イズミルに住む知人の家にしばらく滞在してから、イスタンブールで数日過ごして日本に戻る。そんな旅程だった。
ところが会社の昼休み中、そのイズミルの知人から連絡が入る。
家族で親戚の結婚式に出ることになり、私が滞在する予定の日は家を空けるという。そのため、日程をずらして来てほしい、と。

そんな急に!?と思ったけれど、結婚式についてはお国柄の違いもあるのだろう。とやかく言うつもりはなかった。

問題は、すでに購入していた航空券だった。
もうすでに会社には休みの日程を申告してあり、休暇の日程変更は難しい。
そうなると、同じ日程内で納めるしかない。
イズミル→イスタンブール を逆にして
イスタンブール→イズミル に変更が必要ということになる。

旅行代理店に電話をすると、エコノミーチケットのためキャンセルしても払い戻しはされない。
そして変更には手数料が四、五万円かかるだろうという。
折しもシルバーウイークの時期で、ただでさえ航空券は高騰していた。
そこにこの手数料である。完全なる予算オーバー。

藁にもすがる思いで、某T航空の日本支社に直接電話してみた。
返ってきたのは同じ答えと、いくぶん冷たい対応だった。

どうしていいか分からなくなって、会社のトイレの個室に入って気を静めた。
そして、誰に言うともなく強くつぶやいた。

「誰か助けて…」

もちろん、そんな声が届くはずもない。がっかりしたまま自席に戻り、そのまま終業時刻を迎えた。
某T航空の電話窓口も、もう終わっている時間だった。

机の上のスマホが点滅していた。SNSの友達申請だった。

今そんな気分じゃないのに、と思いながら開くと、トルコ人の男性からだった。丁寧な日本語の挨拶が添えられている。
いつもなら日本語を話してくるトルコ人男性には警戒するのだが、この時は少し疲れていたこともあり、息抜きのつもりで返信してみた。
すると会話はすぐに続いた。

言っても仕方のないことだと分かっていながら、その日あった一連の出来事を話してしまった。彼は電話に切り替えて、親身に聞いてくれた。

そして、思いがけない一言があった。

「私がT航空に電話して交渉します」

会ったこともない、ついさっきSNSで繋がったばかりの人が、なぜそこまで。
半信半疑のまま、お言葉に甘えることにした。時差があるぶん、トルコではまだ営業時間内だという。

何度かやり取りがあった後、しばらくして、報告が届いた。

「T航空と喧嘩して、手数料が日本円で約2000円になりました」

続けて、「私は政府の仕事をしています」と。
まさか、圧力というやつだろうか。信じがたい話だったが、やり取りのメールも転送してもらい、事の次第は本当らしいと分かった。

今日中に手数料を払ってください、と言われ、家に帰ってから落ち着いて手続きをしようと考えていた矢先、また連絡が来た。

「手数料、私が払っておきました」

驚いて、どうやって返せばいいのかと尋ねると、返ってきたのはこんな言葉だった。

「私は日本が好きです。もし日本に来たら、天ぷらを2個ご馳走してください」

なんだ、この人。天使か何かだろうか。


そうして私は無事にチケットを発券し、変更された旅程で、トルコへと旅立つことができた。

後日、彼のSNSを見て、もう一つ驚くことがあった。
日本のある有名な政治家がトルコを訪れた際のレセプションらしき写真に、彼が一緒に写っていたのだ。

政府の仕事、という言葉は本当だったらしい。

見ず知らずの人からの友達申請が、まさかここまで大きな助けにつながるとは思わなかった。
あの日トイレの個室でつぶやいた「誰か助けて」は、誰にも届いていないはずだった。
それでも、何かが動いた気がしてならない。

天ぷら2個の約束は、今も果たせていない。


最後までお読みいただきありがとうございました。



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