見出し画像

【中央アジア旅#4】8年前の自分からのプレゼント(アゼルバイジャン)

2月下旬、ウズベキスタン・キルギス・タジキスタン・アゼルバイジャンのそれぞれの首都と、トルコのイスタンブールをひとり旅してきた。

このnoteでは、4カ国目、アゼルバイジャンの首都バクーで過ごした2日間について書く。バクーを訪れるのは2回目、8年ぶりだ。


#DAY4:タジキスタンからアゼルバイジャンへ

女ひとり旅特有の消耗

早朝4時、アゼルバイジャンの首都バクーに到着。8年ぶりだけど、この空港のデザインが素敵だったことはしっかり覚えていた。

アゼルバイジャンの入国審査といえば、日本人だけ常にアライバルビザが無料であることが有名だと思う。それもあって油断していたら、ウズベキスタンの出国審査と同様、パスポートの顔写真とじっくり見比べられてハラハラ。「アゼルバイジャンははじめて?」と聞かれ、緊張のあまり「2回目です。8年ぶり。このパスポートでははじめてですけどね!」と、聞かれていないことまで言ってしまう。

空港からはバスとメトロでホテルに向かう予定だけど、バスが動き出す時間までしばらく待つ必要がある。アライバルエリアで待機していると、同じ状況らしい人にGoogle翻訳で話しかけられた。ちょっとなら楽しいが、それが延々と続く。真顔でNoと言っても、スルーしても、イヤホンをつけても、電話しているふりをしても、ずっと話しかけてくる。その人が席を立ったタイミングで遠い席に移動したが、すぐ見つけられてしまった。

海外を旅していると、しばしばこういうことがある。エリアによってはひとりで行動する女性が珍しく、どうしても目立ってしまうからだと理解している。とはいえさすがに疲弊し、予定より早くその場を立ち去ることにした。女性ひとり旅ってどうにも不便だ。

詰めればあと20人は乗れますよ

バクーでは現金が必須である。交通カードのチャージに使えるのが現金だけだからだ。しかもお釣りは出ないという無茶な仕様。

仕様改善を願いつつ慎重にチャージを済ませ、バスに乗った。向かう先は市内の大きな駅だ。窓から見える景色に胸が躍る。

外を眺めているうちに、8年前の記憶がよみがえってくる。この街にはひと目惚れだった。バスでよろけた瞬間、私の体を支えてくれようとする手が四方八方から伸びてきたことも思い出した。

バスを降りたあとはメトロに乗るのだけど、通勤時間帯に当たってしまった。駅員さんが乗客を車両に押し込んでいるが、東京在住の私からすれば、誰もこの混雑に本気で向き合っていないように見える。だって、詰めたらあと20人は乗れそうだ。東京風に体を押し込むこともできたが、郷に入っては郷に従うことにして5本も見送った。

常連になる自分を想像してしまうカフェ

今日泊まるホテルはかなり好みの感じ。頑張って働いてきた自分のおかげで、こんなに素敵なホテルに泊まれる。あの日の私、ありがとう。

いつまでもホテルにうっとりしてたいけど、早くバクーの街と正式に再会を果たしたい気持ちもある。荷物を預けて街へ繰り出すことにした。

歩き出してすぐ気づいた。猫が多い。次から次へとポケモンのように出現するため、全然前に進めないくらいだ。

最初の目的地は「Moka Roastery & Eatery」。バリスタさんがコーヒーを淹れ、常連らしき人とぽつぽつ言葉を交わす様子をぼんやり眺めながら、フラットホワイトをいただく。

すこし時間が経つと、店内に私ひとりを残して、バリスタさんはどこかに行ってしまった。「どこの馬の骨とも知れぬ旅行者を信用しすぎでは?」とも思うけど、その土地の日常が顔を出す、こういう瞬間がどうしようもなく好きである。

街並みを楽しみながら次のカフェへ向かう。バクーの最大の魅力は新旧のコントラストだと思う。古い建物が現代風に使われていたり、奇抜なビルの隣に歴史あるモスクが佇んでいたりするのが、とても新鮮に映る。

到着したカフェ「42 Coffee Roasters」ではパソコンで仕事をしている人が数人。私も混じってnoteを書く。バリスタさんが魅力的で、私がバクーに住んでたらきっと常連になるのだろうと想像せずにはいられない。

8年前に泊まったホテルを見上げる

ホテルに戻り、チェックイン。どこもかしこも柄の効かせ方が素敵で、柄を探して目を光らせる。

共用部もやっぱり好みで、意味もなくうろうろしてしまった。

お昼ごはんは近くの「dulma restaurant」で。お料理を待っている間にピンときて調べてみると、なんと8年前も来たお店だった。

アゼルバイジャンはザクロが有名とのことで、選んだのはラム肉のザクロ煮込み。海外では食欲がなくなるたちだけど、あっという間に完食した。

そのあとは海岸沿いを歩き、バクーらしい建築物を見物することに。

カーペットミュージアムは絨毯のかたち

息を切らしながら階段をのぼり、バクーの街を一望できるスポットにも行ってみる。日本語勉強中だという人に話しかけられ、しばらく会話したあと、Google翻訳の画面を見せられた。どれどれと覗き込んだところ、「私は日本語を勉強しようとしましたが、諦めました」と表示されていて笑う。諦めたというわりにはずいぶん流暢であった。

続いて、バクーのシンボルであるフレームタワーをめざす。8年前はこの中にあるホテルに泊まったのだ。

当時を思い出しながらフレームタワーを見上げ、次々に吸い込まれていく高級車たちを眺めた。あの旅では夫とイランやウズベキスタンをまわったのだけど、よく一緒に来てくれたものだと思う(私のペースに合わせさせてしまった結果、その後は誘っても断られるようになったことも付け加えておく)。

高層ビルとモスクの組み合わせは大好物

夜もコートを着込んで出かけ、海外沿いを散歩してみた。ひんやりした空気が目に入り、眠気を誘う。よく考えれば昨夜はほとんど寝ていないのだ。大あくびをしながらお部屋に戻った。

#DAY5:首都バクーを観光

すべてのメトロ駅行きバスはホテルに通ず

朝イチで朝ごはん会場へ。早起きの甲斐あって、この空間をひとりじめ。

チェックアウトをし、メトロとバスでゾロアスター教の「アテシュギャーフ拝火教寺院」へ向かう。前回の旅では、時間が足りず、泣く泣く諦めた場所だ。

海外にいると、乗るバスがやって来ただけでガッツポーズしたくなる

ゾロアスター教は火を神聖なものとすることで知られている。この火を見られただけで、今日の目標は達成だ。

好きすぎる
好きすぎる!

帰りはカフェに寄ることに。Googleマップで調べたバスに乗ったはずが、想定と違う、山の中腹みたいなところで降ろされてしまった。カフェまでのアクセスを調べると、なんと徒歩98分。

バス停にいたこの猫ちゃんに気を取られて、行き先表示を見間違えたのかも
のんきにバスからの眺めを撮っていた頃

さすがにカフェは諦めよう。次に来たバスがどこかの駅行きであることを瞬時に読み取り、思い切って飛び乗った。すべてのメトロはホテルの最寄駅に通じているはずだ、と信じて。

トラブルといえばトラブルなのだけど、これぞ旅って感じでわくわくする自分もいる。案の定、メトロでホテル近辺まで戻ることができた。

ホテルに帰る前に、見ておきたかった2つのモスクにも行く。ただ、女性と男性では入れるエリアが違っていて、本当に見たかったものは見られず。

このドームを見上げたかったと思いながら覗き見
右奥にうっすら写ってるシャンデリアをじっくり見たかったと思いながら覗き見

モスクの全貌を見られなかったのは残念。でも、モスクに立ち寄ったおかげで、旧市街らしさあふれる路地を歩き回れた。

こうしてすこしずつ世界を広げてきた

あっという間に夕方になり、空港行きのバスに乗るために中心部の駅まで歩く。昨日の朝、満員電車に乗った駅だ。バクーと別れがたくて、メトロに乗るのではなく、ゆっくり歩くほうを選んだ。

雨も似合うバクー

バス車内では誰かがくしゃみをし、まわりの人が謎の言葉をかけていた。こういう文化って、現地に行かないとなかなか知り得ないから、地味だけどすごく楽しい瞬間だったりする。

※AIに聞いてみたら、アゼルバイジャンで一般的にくしゃみをした人にかける言葉は「ヤシャスン」で、「長生きしますように/万歳」という意味らしい。そもそも「長生きしますように」と「万歳」が同じ言葉で表現できることに驚きだけど、くしゃみをしたときに「万歳」と言われたら照れてしまう気がする。日本語だと「よいしょ〜!」みたいな感じだろうか。

19時に空港着。早朝4時半発の飛行機なので、ずいぶん時間がある。早いけどもうゲートまで行ってしまおうかと思っていたところ、驚きの光景が目に飛び込んできた。腕に立派な鷹を乗せたグループがいるのだ。

そのグループはカタール航空のカウンターでチェックインをしている。ゲートに向かおうと思って浮かせた腰を、再びベンチに落ち着けた。

AI作のイメージイラスト

AIに質問してみたところ、鷹狩りを嗜む湾岸の富裕層である可能性が高いとのこと。えっと、鷹狩りってなんだっけ?知りたいことが次から次へと出てきて、1時間以上AIに質問を重ねながら、鷹連れの方たちを視界に入れ続けてしまった(彼らはそれくらいチェックインに時間がかかっていた。カタール航空では鷹を客室内に持ち込めるが、それなりの手続きが必要だとChatGPT談)。

カタール航空のWebサイトより。どう見ても富裕な層なのにエコノミークラスのカウンターにいた理由が判明

鷹狩りの知識を深めたところで、私の今後の人生には何の役にも立たない。だけど、こうして旅しながらほんのすこしずつ世界を広げてきたのかもしれないとも思う。

さて、鷹狩りグループが去ったいま、もはやこのベンチに用はない。保安検査場を通るまでの時間をマックで過ごすことにした。

海外のマックでは、現地の限定メニューを試すのが好きだ。今回はシャワルマロール。トルティーヤの生地で、フライドチキンとポテト、ピクルスを巻いている。これが本当においしくて、ますますバクーを去りがたくなってしまう。

深夜に誰もいない保安検査場を通過。私のためだけにスタッフが立ち上がり、ベルトコンベアが動き出した。こんなのはじめてでちょっとテンションが上がってしまったのだった。

やっぱりこの空港が好き

あの日の私にハイタッチ

この旅は、同僚の「アゼルバイジャンって行ったことある?『VIVANT2』のロケ地らしいよね」のひと言から始まった。

「首都しか行ってないけど本当に好き!また行きたいけどなかなかチャンスがなくて」と返事をした、その数日後には航空券を決済していた。同僚には驚かれ(呆れられ)たけど、再訪の良いきっかけをもらったと思う。

今回、8年前と同じ景色を、年齢を重ねた自分の目で見て、いろいろと感じるものがあった。

旅を通して、将来の自分に思いがけないプレゼントを贈れることがあるなと思う。今回の旅はまさに8年前の自分から受け取ったプレゼントだったし、この旅を楽しめて、当時の私に笑顔でハイタッチしたような気分だ。

そしてきっと、今回の旅でも、未来の自分にプレゼントを手渡したはず。その中身が何なのか、いつ開封されるのか、もしくは開封されないままなのかは、まだわからない。

でも、この国にはまた帰ってくる気がしている。もしかしたら、次も8年先かもね。

▼前日までの旅行記はこちら


いいなと思ったら応援しよう!