敏感肌ブランド「オサジ(OSAJI)」は4月25日、京都・丸太町にブランド初のグローバルコンセプトストア「お匙 京都(オサジ キョウト)」をオープンする。なぜこのタイミングに京都に旗艦店を構えるのか。茂田正和ディレクターに、新店に込めた思想とブランドの現在地を聞いた。
「思想や美意識を体現する場所が欲しい」
「オサジ」がグローバル旗艦店を構える背景には、ブランドの現在地を見つめ直す転機が重なっている。同ブランドは2023年11月、総合商社の丸紅と資本提携契約を締結。東南アジア市場に向けた輸出販売を進める中で、グローバルな視点から見た日本ブランドの強みを再認識していた。一方で、25年には神奈川・鎌倉にあったレストラン「エンソウ(enso)」が建物の建て替えに伴い閉店し、東京・谷中の1号店も建物の取り壊しによりクローズした。茂田ディレクターは「僕らの思想や美意識を体現する場所が欲しいと常々感じていた」と振り返る。
そうした中で、今回の旗艦店の舞台となる酒蔵「キンシ正宗」との縁が舞い込んできた。「親族の方から『茂田さん、ここを使ってもらえないだろうか』と声をかけていただいた。願ってもないことだと思った」。資料館として残されていた築100年以上の酒蔵を引き継ぎ、日本発のブランドとしての発信拠点として育てていくことを決めた。
「新しさ」ではなく
「振り返って磨き直す」
旗艦店の構想にあたり、これまでのブランドの歩みを振り返った。谷中店1号店で「美を育む上での食の大事さを伝えたい」と甘酒を提供し、東京・蔵前のホームフレグランス調香専門店「家香(kako)」での調香体験を行ってきた。こうした取り組みを磨き直す形で、旗艦店では製品をディスプレーするほか、甘酒などを提供するカフェやお香作りのワークショップを展開する。
酒蔵という場の背景や甘酒の提供、スキンケアにおいて皮膚常在菌に着目している文脈から、「菌を醸す」を旗艦店のテーマに据えた。「化粧や美容もその人の魅力を醸す作業。僕らが日本の“醸す”という言葉に敬意を払ってきた歩みを表現したかった」。
同時に、その土地や集う人との「醸成」という意味も込めた。酒蔵も元の状態を生かしながら磨き上げ、中庭や小上がりのスペースなどの余白を大切に空間を設計。ギャラリーを設けたのも、自分たちだけで完結するのではなく、人やアイデアが交わる共創の場にしたいという思いからだ。「今が完成形ではないし、この先も完成形はない。常にさまざまな人と何かに取り組み、時代が変わればその表現も変わる。そうしたことを続けていける場所にしていきたい」。
プロダクトアウトで
期待する未来
店を構える丸太町は、地域住民の生活圏であると同時に観光地にもつながるエリアだ。来店客として、既存顧客はもちろん新たな出会いにも期待する。「市場に迎合するのではなく、自分たちが体現したいことを形にした。その表現がどう生活者に届くのか。今はドキドキとワクワクの両方がある」。
また、茂田ディレクターはブランドを「サプライヤーとユーザーの信頼の証」と捉える。「顕在化したニーズに対して応えることも社会には必要だが、それだけで文化に深みが増すのかという疑念も僕にはある。まだ見ぬものに対して『欲しい』『行きたい』を呼び起こすブランドでいたい。だからこそ、この空間もさまざまな人がカジュアルに訪れ、体験し、何かを感じてもらえることを期待している」。