見出し画像

銀河フェニックス物語<出会い編> 第十八話(6) オールスター狂騒曲

第一話のスタート版
第十八話(1)(2)(3)(4)(5

 そして、ことしの宇宙船レースS1プライムでは、レイターがエースの代わりに身代わり出場して優勝した。
 これは会社の極秘事項に指定されたから、ベルにも言えない。  

「さっきから話を聞いていると、レイターがすごいって話ばっかりよ。おのろけにも聞こえるわ」

 ベルの言葉に、わたしは首を思いっきり横に振った。

ティリーとベル横顔

「違うの。レイターは昔、飛ばし屋のリーダーだったのよ」
「そのぐらいじゃ驚かないわよ。エースより速い、って方がよっぽどびっくりだもの」
 わたしはさらに声を小さくして、隣の客に聞こえないように言った。

「わたしが言いたいのはそのことじゃなくて、レイターは今もマフィアとか悪い組織にも顔が利いて、脱法行為でお金を儲けてる、ってこと」

 ベルはわたしの目を正面から見ていった。
「ねえ、ティリー。そういうことは普通、ただの仕事仲間は知らないものよ」
 ベルに指摘されて、心臓がドキッとした。
 どうしてわたし、こんなにレイターのこと知っているんだろう。


 こんな話をしたせいで、家に帰ってもレイターのことが頭に浮かんでくる。
 しばらく厄病神とは会わないようにしよう。

 と思ったのに、翌日、顔を合わせてしまった。

 天気が良かったから、会社近くの公園でお弁当を食べようと、ベルと一緒に外へ出た。
 公園の備え付けバスケットゴールに、ボールのはねる音がする。

 よく知った顔が、シュートの練習をしていた。
 バスケ部キャプテンのトラットさんとレイターだった。

 わたしは、気づかないふりをして通り過ぎよう、としたのだけれど、ベルが大きな声であいさつしてしまった。
「こんにちわ、レイター」
「よ、ベルさん」

n201レイターウインク手あり

 わたしも挨拶しないわけにはいかない。
「こんにちわ、トラットさん」

 ベルがどんどん近づいていく。
 仕方なく、わたしも後ろからついて行く。

 ベルは楽しそうに二人に話しかけた。
「レイターがうちのバスケ部に入ったら、今度は優勝できるんじゃない?」
 トラットさんが答える。
「僕も、そう思って勧誘してるんだけどね」
「う~ん。バスケは好きだけど、ま、暇だったら、ってとこかな」
 レイターは乗り気じゃない様子だ。

 トラットさんがレイターに聞いた。
「じゃあ、次の週末は空いてないかい? オールスターゲームの前日祭イベントを手伝う人を探してるんだ」
「オールスター!!」
 ベルの声が興奮している。

「君たちも来るかい? 前日祭だけど」
 トラットさんの誘いに、ベルは大はしゃぎだ。
「行きたい! 行きたい、ね、ティリーも行こうよ。絶対、楽しいよ」
 わたしはバスケに詳しいわけでも何でもないけれど、ファン投票で選抜されるオールスターゲームが、バスケファンにとって、一大イベントだということは知っている。

 ベルがこんなに喜んでいるのなら、つきあってもいいか。
「週末は空いてるからいいわよ」
「ティリーさんが行くなら、俺が、船出してやるよ」
 突然レイターが言った。

 この展開は考えていなかった。
「レイター、ありがと」
「ちょ、ちょっとベル」
「いいじゃない。交通費タダだし。わたし飛んでいるフェニックス号に乗ってみたいし」

 何だか、思わぬ方向に話がまとまってしまった。     (7)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
イラスト集のマガジン

いいなと思ったら応援しよう!

48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」