銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第八話 雪の生まれる場所で(5)
アマンダは申し訳なさそうな顔で答えた。
「ごめんね、家で弟が一人で留守番してるのよ」

思い出した。お父さんは早くに亡くなっていて、アマンダの収入で病気がちのお母さんと弟さんを養っているという話だった。病気が悪化したお母さんを介護するために、地方勤続制度を利用してロヤ支社の配属になったのだ。
そのお母さんも去年亡くなったと聞いた。幼い弟さんを置いて夕飯にいけないという事情はわかる。でも、彼女に興味があった。
「じゃ、アマンダの家にお邪魔するのはどう? 食べ物は途中で買っていけばいいし」
わたしの思いつきに、顔を曇らせた。
「私、家に人を呼んだことがないのよ、ずっと母が寝たきりだったから。おもてなしってどうしたらいいのか、よくわからなくて」
「気を使わなくていいよ。アマンダとおしゃべりしたいだけだから」
「わかったわ。ティリーは変わらないわね」
アマンダが弟に連絡を入れているのを見ながら、ちょっと強引過ぎたかもと不安になった。
*
「この道、入ったところでいいんだよな」
「ええ」
雪がちらつく中、レイターが運転するエアカーが寂しい道を走る。会社から五分もかからない地区だった。通勤には便利だけれど、中心街からはかなりはずれている。
「そこから車を入れてください」
何の飾り気も無い四角い質素な建物が並んでいた。一目で救済集合住宅とわかる。収入が少ない貧困層への連邦の支援策だ。アマンダが自宅へ人を呼ばない理由がわかる気がした。
「父が死んでから、ここで暮らしているの。今は私のお給料があるから、本当は出なくちゃいけないんだけど、会社から近いし、弟が学校変わりたくないって言うから、家賃を払って住まわせてもらっているの」
玄関を開けると同時に、男の子が飛び出してきた。
「姉ちゃん、お帰り」
「弟のムーアよ。同僚のティリー」
「へぇ、姉ちゃんの友だち、べっぴんさんじゃん」
と言いながらわたしの手を握ってきた。物おじせず、腕白ざかり、という感じだ。

「あ、ありがとう。いくつなの?」
「十一だぜ」
レイターが後ろから不機嫌そうな表情で顔をのぞかせる。
「おい、俺の彼女に気安くさわるな」
「何だよおっさん」
「おっさんじゃねぇ、お兄さまと呼べ!くそガキ」
「くそガキじゃねぇよ、ムーアだ。おっさん」
二人は大声で言い合いをはじめた。
「もうレイターったら、子供相手に何真剣になってるのよ」
止めに入ったわたしにレイターが口を尖らせた。
「子供じゃねぇ、十一才なら十分に男だ」
「兄さん、よくわかってんじゃん」
ムーアの機嫌が急によくなった。そうだった。この人は女性だけでなく子供の扱いも上手いのだ。
(6)へ続く
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ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」