銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第八話 雪が生まれる場所で(6)
小さな食卓に四人分のパンと食器がセットされていた。買ってきた総菜を並べていく。
「ムーアもお手伝いできるようになって、助かってるわ」
「まかせろよ」
小さいのにしっかりしている。
「姉ちゃんの友だちが来るって言ったら、アガタばあちゃんがシチューとサラダ持って来てくれたんだよ」
「おばあさんが、近くに住んでるの?」
「ううん、一人暮らしのお隣さんよ。ここに引っ越してきてから家族のようにつきあってて。アガタおばさんのおかげで、これまで何とかやっていけたってところ」
干し肉のシチューにピクルスのサラダ。ロヤ星の伝統食だ。噛むほどに味が染み出てくる。
「うんめぇ~」
と言いながらレイターがばくばく食べている。

「もうちょっと、味わってゆっくり食べたら」
わたしが注意するとアマンダが笑った。
「レイターには昔、随分ごちそうになったから、遠慮しないでどんどん食べて」
ごちそうになった?
「二人で食事に出かけてたの?」
「あん? ティリーさん妬いてんの?」
レイターがにやりと笑った。
「違います。ただ、アマンダはあまりみんなと食事に行ったりしなかったから……」
彼女にはいつも残業しているイメージがあった。
「あの頃、母の治療費に結構かかったからお金が無くてね。仕事の後、よくフェニックス号でご馳走になったのよ。レイターの作るご飯はおいしかったからつい釣られちゃったわ」
知らなかった。彼氏は銀河中の女性に優しいから不思議ではないけれど。
「そういうティリーは、新入社員の頃は『エース命』だったのに随分と趣味が変わったわよね」
「しょうがねぇよ。俺のがいい男だから」
レイターが答える。でも、それは違う。
「ちょっと待って、いい男、っていう尺度だったらエース社長のがいい男に決まってるでしょ」

ムーアが不思議そうな顔をして聞いた。
「じゃあ、どうしてこんなおっさんとつきあってんの?」
「おっさんじゃねぇ! 俺がおっさんだったらエースはじじいだ」
レイターがムーアの頭をはたいた。アマンダが微笑みながらわたしの方を見た。
「確かに社長の方が年上だけど、じじいと呼んだ人は初めて見たわ。ティリーが社長の肩を持つから妬いてるわけね」
「うるせぇ!」
口いっぱいに肉を突っ込んだレイターを指さす。
「こんな姿をいい男とは誰も言わないでしょ。客観的事実よ」
普段エースのことなんて相手にしてないという顔をしてるくせに、本当は気にしているんだ。ちょっぴり嬉しい。
(7)へ続く
いいなと思ったら応援しよう!
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」