銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第八話 雪が生まれる場所で(7)
銀河フェニックス物語 総目次
第八話 雪の生まれる場所で (1) (2) (3) (4) (5) (6)
<恋愛編マガジン>
「ティリー姉ちゃんたちは、いつまでいるの?」
ムーアが聞いた。
「予備日を含めてあと二日滞在する予定なんだけど、アマンダが優秀だから仕事はほとんど終わっちゃったのよね。どこか観光にでも行っちゃおうかな」
と言う私に、アマンダが申し訳なさそうな顔を向けた。

「折角こんな遠くまで来てもらったけど、お客様に案内できるような観光地もあまりないのよね。昔はリゾート星だったけれど、吹雪ばかりで施設も老朽化しちゃったし」
ムーアが手を挙げた。
「遠足で行った『雪の誕生地』があるじゃん」
「あそこは夏しか入れないでしょ」
「『雪の誕生地』って随分おしゃれなネーミングね」
「近くのロヤ山にあるスポットなんだけど、この動画を見てみて」
アマンダが卓上のモニター画面を操作する。
「この街に降っている雪は、ロヤ山の山頂から吹き出る冷たい気流によってできるの。その噴出口を雪の誕生地って呼んでいてね」
見たことのない風景だった。
「これ雪なの?」
山の頂上から白い羽の様な雪が一斉に浮き上がって天へと昇り雪雲と同化していく。噴煙に似ているけれど、真っ白で幻想的だ。雲の切れ目から陽の光があたると、反射してキラキラと輝く。
「きれい……」
声が漏れる。目の前で見たら大迫力だろう。ムーアが続けた。
「気流が流れているときに願い事をするとロヤ星の神様が叶えてくれるんだ。好きな女の子と行くと結ばれるんだぜ」
「へぇ、じゃあ、ティリーさん、あした行こうぜ」
「わたしたち、すでに結ばれてるんじゃなかったっけ?」

アマンダが苦笑した。
「残念だけど冬は閉鎖されて山に入れないの。夏にもう一度来てちょうだい」
「だけど、夏に行ったってほとんど気流は吹かないんだよ。キャンプで行った時なんて、二日いてもダメだった」
「夏は子どもでも登れる山なんだけれど、冬はプロの登山家が何人も命を落としていてね。願いは簡単に叶うものじゃないってことよ」
とその時、ドアをノックする音が聞こえた。
「キッチンの明かりが切れちゃってさ、直すの手伝ってくれないかい」

お隣のアガタさんだった。どうやら照明が壊れたらしい。
「あん? 俺が見てやろか? 格安料金で」
思わずレイターの腕を引っ張った。
「こういう時に、料金とか言わないの」
「わかったわかった。困ったときのお互い様だろ。飯のお礼に行って来るよ」
*
「いやあ、男手は助かるねぇ。明かりだけじゃなくてさあ、壊れてた暖房器具とかみんな直してくれるってさ。ムーアも喜んで機械いじりをしてるよ」
アガタおばさんはアマンダの家で自宅のようにのんびりしている。
「船の整備免許持ってますから、普通の家電ならほとんど直せるんです。どんどん使ってやって下さい」
「便利な彼氏よね。料理も上手だし」
アマンダがお茶を運んできた。
「調理師免許も持ってるからね」
「ご飯の用意はエース社長にはさせられないわよね。それでレイターを選んだわけ?」
「そういう訳じゃないけど、それに近いかも」
女子トークで盛り上がる。
(8)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」