銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第八話 雪が生まれる場所で(8)
銀河フェニックス物語 総目次
第八話 雪の生まれる場所で (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
<恋愛編マガジン>
「S1見てて思ったけど、レイターの方が社長より操縦上手いわよね」
「え?」
「船の性能が違いすぎたもの。本社じゃそんなこと大声で言う人いないのかも知れないけど」
「結果がすべてよ、『無敗の貴公子』は無敗を守ったんだから」
レイターの方が上手いとわたしも思うけど、なぜか推しをかばってしまう。
「照れなくてもいいのに」
「あたしも、もう五十歳若けりゃほっておかないけどね」
「でもおばさん、ティリーは大変なのよ。彼は『厄病神』なんだから」
「そりゃ大変だ」
アガタさんがわたしを見た。
「でも大事にしなさいな。この星では『厄病神』は他人の不幸まで引き取ってくれる優しい神様でもあるんだよ。足蹴にしたら罰があたる」
「は、はい」
そんな風に言われたのははじめてだ。
「ただいま」
「直ったぜ」
レイターとムーアの二人が戻り、アガタおばさんは自分の家に帰っていった。
「ムーアが喜んでる」
アマンダの声がはずんでいる。二人はプロレスごっこを始めていた。ムーアの体がひっくり返って吊り下げられている。

「大丈夫かしら。怪我させないといいけど」
「助かるわ。このところの変な風邪のせいで、友だちと遊べなくてイライラしてて」
「というか、レイターの方が楽しんでない?」
ムーアは手足をじたばたさせながら、レイターに必死に抵抗している。
「父を早くに亡くしたから、あんな風に遊んであげたことがないのよね」
その声を聞きつけたレイターが異議を唱えた。
「父じゃねぇ、お兄さまだっつうの」
「父ちゃんって、こんな感じだったのかなぁ。俺、父ちゃんのことあんまり覚えてないんだ。三つの時に死んだから」
「ふぅ~ん。じゃあ、俺の勝ちだな」
レイターが技をほどきながら自慢げに言った。

「何が勝ちなんだよ」
ムーアがくってかかる。
「俺の親父は俺が生まれる前に死んだんだ。ついでに言えば俺のお袋は九つン時に死んだから、これも勝ったな。しかも、アマンダさんみたいな姉さんも親戚もいねぇんだぞ、どうだ」
この人はどうしてこんなに得意そうな顔をするのか。
「勝ったとか負けたとか、って話じゃないでしょうが」
ムーアがレイターをじっと見つめている。
「どうやって大きくなったの?」
レイターがにやりと笑う。
「マフィアに育てられたんだ」
「かっこいいー!」
目を丸くしているムーアにアマンダが口を挟んだ。
「冗談に決まってるでしょ。レイターの親代わりはマフィアじゃなくて将軍家よ」
「ま、どっちも似たようなもんさ。俺の周りにゃアガタおばちゃんみたいなお節介さんが、たくさんいたのさ」
(9)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」