銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第八話 雪が生まれる場所で(9)
銀河フェニックス物語 総目次
第八話 雪の生まれる場所で (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)
<恋愛編マガジン>
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レイターと初めて仕事をした時は新入社員だった。『疫病神』にたたられて同期のティリーが大変な目にあった、という話は聞いていたけれど、自分の契約の時には何も起きなかった。
「アマンダさん、あんた、ダイエットしてんの? あんな小さな弁当箱で」
「いえ、してませんけど」
あの頃、仕送りを増やすため食費を浮かそうと自炊をしていた。
「じゃ、たくさん作っちゃうぜ。俺、料理が得意だから」

フェニックス号で出されたものは、とにかく美味で、久しぶりに満腹になるまで食べた。
「これ、持っていきなよ」
レイターがくれた包みをあけると、中には色とりどりな料理がたっぷり入っていた。
「あ、ありがとうございます」
「美人の喜ぶ顔を見るのは、俺の趣味なんだ」
と、彼は気持ちのいい笑顔を見せた。
レイターはその後も時々、船での食事に誘ってくれた。「仕込み過ぎちまったんで、食ってかねぇか」とか「冷蔵庫に入り切らねぇから食材持ってってくれ」とか。
私は密かに彼の誘いを楽しみにしていた。もしかしてレイターは私に気があるのではないか、と妄想もした。ただ彼が、女性になら誰にでも優しいという噂は聞いていた。逆にそれなら好意をありがたく受け取っても罰はあたらないだろう、と考えた。
金銭的にギリギリの生活をしていた私は、レイターの申し出に随分と助けられていたのだ。そんなある日、母の容体が急変し地元へ帰ることになった。彼にお礼を伝える間もなく、私はソラ系を後にした。
昨シーズンのS1に出場したレイターの生い立ちを、メディアが特集していた。子どもの頃から天涯孤独の人生。その番組を見ていて気が付いた。将軍家が後見人とはいえ、相当に苦労をしたに違いない。たくさんの人に助けられて生きてきたのだ。それをわかっているから、上手に人を助けることができるのだと。
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「ティリーのご両親はお元気?」
アマンダがわたしに聞いた。
「ええ、申し訳ないぐらいに元気よ」
わたしの両親は故郷のアンタレスで病気もしないで普通に暮らしている。

父はわたしより年収も多いから、仕送りもしていない。普段は気がつかないけれど、自分は随分と恵まれている。レイターの基準からすると両親が健在なわたしは、負けたことになるのだろうか。
「アンタレスにはちゃんと帰ってる?」
「この間、帰省したんだけれどね。パパがレイターを嫌ってて、次はいつ帰ることになるやら」
「生真面目なアンタレス人とレイターの相性はよくなさそうだけれど、ご両親とは生きてるうちにしか会えないわよ」
生きているうちにしか会えない。当たり前のことなのに、アマンダが口にすると、哲学的な言葉のように重く響いた。
(10)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」