見出し画像

広東メシ 中国料理オタク目線の広東料理

筆者と嫁はなにかと広東料理に縁があり、昔からよく食べる。その飲食体験を元に、広東料理の3つの柱を中心に紹介する。

広東料理の3つの柱

筆者目線の広東料理は、
えつ語(広東語)を話す人たちの広府(広州)料理
・客家語を話す人たちの客家料理。東江料理とも言う
・閩南語系の潮州語を話す人たちの潮州料理。昨今では潮州・汕頭の潮汕料理とも言われる
の3つを柱とし、
・閩南語系の雷州語を話す人たちの料理
などを含めた広東省の各エスニックグループの料理の集合体。

方言分布と広東料理の柱(Google Mapsを利用し筆者作成、円で示した地域は大体のイメージ)

上図の各円の中にも多くの方言島が存在するが、細かくなりすぎるので省略する。

広東の西隣の広西チワン族自治区の東南部は粤語地域。1988年に広東省から分離した海南島の海沿いは大体閩南語地域で、一部は粤語などの地域、内陸部は黎族などの少数民族地域となっている。

広東省から海外への移民も多く、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナムなどの東南アジアで広東系華人が南洋料理を発展させている他、日本、アメリカ、イギリスなどでもチャイナタウンを形成し料理を発展させている。

筆者は独身時代、マレーシアのクアラルンプールで5年半仕事をし、それなりに香港に出張に行っていた。クアラルンプールは広府系華人が作った街で、華人間の会話は広東語が主流、広府系の料理が多い。潮州系や客家系の店もあり、南洋の広東料理から入った。筆者の嫁は大学卒業後、8年間広州で仕事をし、広州人の親友もいて、今も広州によく行くので筆者もくっついていったりする。

また、マレーシアで南洋潮州料理もよく食べた以外、厦門駐在時には「研究」と称して、(高速鉄道はまだできておらず)車をチャーターして潮州料理を食べに行っていた。

これらの飲食体験を元に、広東省に住まう人たちの歴史も少し交えながら各料理について紹介する。

(以下、中国語名のルビはマカオを除き普通話発音。)

広府料理

粤語を話す広府(広州)人の先祖の古粤人は、広西チワン族自治区梧州市が発祥の地と言われている。珠江の支流の西江沿いに広がり、東は広州を中心とする珠江デルタ流域まで分布、秦以降、北方から継続的に流入した漢人と交わりながら現代の広府人を形成した。

広州は明清以降、貿易港として大繁栄した。広州以外に、仏山、東莞、珠海、清遠なども粤語地域。仏山市順徳区は「食在広州,厨出鳳城(食は広州にあり、厨は鳳城より出る。鳳城は順徳の別称)」と称され広府料理の名料理人を排出している。また、改革開放後、経済特区となった深圳の発展も目覚ましい。但し、深圳には広府系や客家系の地元民のほか、潮州、湖南省をはじめとする全国各地から人が流入しており普通話の使用率が高い。

香港や澳門マカオも粤語地域で、香港料理や澳門マカオ料理は広府料理の下位分類と言える。それぞれ嘗ての宗主国イギリスとポルトガルの影響を受けながら発展してきた歴史がある。

香港の海鮮料理のイメージがあるせいか、広東料理は海鮮料理というイメージがあるかもしれないが、粤人は元々、内陸系なので、伝統的広府料理、水産物は淡水魚のものも多く使い、鶏、家鴨、鵞鳥などの家禽や豚肉も多用する。広州は珠江を100kmほど遡ったところにあり海岸線からはかなり遠く、海産物は乾物を多く利用する。また、飲茶店や茶餐廳(軽食屋)の点心や小吃も豊富。漢方食材入りのスープも欠かせない。

料理の味付けは、出汁となるスープを重視し、ネギ、紅葱頭ホンツォントウという小さい赤い玉ネギ、ショウガ、醤油、オイスターソースなどを使い、旨みが強い。よく広東料理はあっさり味と言われるが、筆者は、それほどあっさりしていないと思う。

広府料理の例(ごく一部)

撈鶏ラオジー。白切鶏に野菜を混ぜて食べる。
赤小豆チーシャオドウ鯪魚湯リンユィタン。淡水魚の鯪魚(ニゴイ)で出汁をとったスープ、鯪魚は出汁を取るのに使われ魚肉は入っていないことがある。
煲仔飯バオザイファン。土鍋炊き込みご飯。具は様々なものが使われる。写真の具は臘味(臘肉、香腸)
→写真クリックでリンクへ
滑蛋牛肉粥。広府料理には生卵も使われる。
乾炒牛河ガンチャオ ニウホー米粉ビーフンの一種、河粉の醤油炒め、牛肉入り
→写真クリックでリンクへ

広府料理は代表料理を羅列するだけでも、かなりの数になってしまう。ネタは沢山あるので追い追い充実させて行きたい。

客家料理

晋の時代から宋の時代に、北方の騎馬民族が中原に進出した時、戦乱を避けて、幾度も大量の漢人が南方に移住した。その時、江西、福建、広東3省にまたがる地域に逃れた人たちが客家語グループを形成した。近年のDNA研究では漢化した土着民という説もある。広東省内では珠江の支流東江沿いに分布、中心都市は梅州、恵州。客家のアイデンティティを持つ人たちの料理が客家料理。

客家が移住してきた時、開けた土地はすでに他のエスニックグループに占有されていたため、人口希薄地帯だった山地に住み、外来者を意味する「客」の客家と呼ばれた。食料保存のために漬物、燻製、乾物を多く利用する。味付けは塩気が強い。調理方法は素朴な煮物や蒸し物が多い。

客家料理の例(ごく一部)

梅菜扣肉メイツァイ コウロウ。お碗の中に下茹でしてから揚げ焼いた豚肉とカラシナの漬物「梅菜」を入れて蒸し、盛り付けの時に裏返して皿に乗せた、手間のかかる料理。伏せたり被せたりする動作をコウと言う。
醸豆腐ニャンドウフ。豆腐の肉詰め、小麦粉の入手が難しかった時代に、餃子の皮の代わりに豆腐を使ったと言われる。
塩焗鶏イエンジュイジー。塩釜で炊いた鶏。
土猪湯トゥージュータン。シンプルな豚肉スープ。
鶏湯ジータン苦麦菜クーマイツァイ。シンプルなチシャの一種、苦麦菜の鶏スープ煮。

客家は広東の以外にも、福建、江西、四川などにも分布し、それぞれ特徴があるので、いずれ客家料理の記載も充実させて行きたい。

潮州料理

唐宋の時代に福建の閩南地区や莆田から海沿いに潮州に移住した人たちがベースになり形成した閩南語系の潮州語を話す人たちの料理。近年、汕頭スワトウが発展し潮州と汕頭を合わせて潮汕チャオシャン料理とも言われる。

潮州は韓江の河口を40kmほど遡った所にあり、やや内陸、海産物は乾物の扱いに長け、肉料理も多い。汕頭は海辺で新鮮な海鮮料理が得意。

潮汕料理の例(ごく一部)

紅焼魚翅ホンシャオ ユィチー。潮州でフカヒレ料理が発展した。
滷味ルーウェイ。潮州は醤油ベースのタレに漬け込んだ各種お滷味も有名。写真は鵞胗、鴨翅、肉条、鵞腸、鶏蛋。
牛肉火鍋ニウロウ フオグオ。清末に潮州が開港し牛肉食が広まった。東南アジアから伝わって現地化した沙茶醤シャーチャージャン(サテーソース)につけて食べる。
魚飯ユィファン。耕地が少なく、大量に獲れる新鮮な魚を塩茹でして白米の代わりに食べた事から魚飯。各種の魚を使う。
→写真クリックでリンクへ
雑魚鼎ザーユィディン。たっぷりのネギ、ショウガ、香菜を敷いて揚げ焼きした小魚。シンプルだが美味しい。
→写真クリックでリンクへ
生腌ションイエン。醤油ベースにニンニクなどの香味野菜をきかせたタレに漬け込んだ生の海鮮。写真は蝦と蝦蛄の生腌。
炒粿条チャオグオティヤオ米粉ビーフンの一種、粿条の沙茶醤シャーチャージャン(サテーソース)炒め。東南アジアに伝わり広く食べられている。
→写真クリックでリンクへ

こちらも代表料理が多く、羅列するだけでもかなり多くなってしまう。潮州・汕頭は日本から行きにくいが、今では広州からも高速鉄道で行けるので、機会があれば是非、行って見て欲しい。

その他

雷州料理

広東省の西の雷州半島にも閩南語系の雷州語を話す人たちが住んでいて、潮州料理に似た雷州料理がある。中心都市は湛江ジャンジャン

海鮮料理が得意。牡蠣や鮑が有名。ブランド鶏の湛江鶏も有名。

湛江鶏鍋ジャンジャン ジーグオ
焗雑魚ジュィザーユィ。潮汕の雑魚鼎に似ている。

客家の方言島

広東省西部の茂名などにも客家の方言島がある。

その他

壮族、瑤族などの少数民族の方言島がある。

参考文献/ウェブサイト

葛剑雄主编(1997) 『中国移民史』 福建人民出版社
中国社会科学院语言研究所 / 中国社会科学院民族学与人类学研究所 / 香港城市大学语言资讯科学研究中心 (2012) 『中国语言地图集』 商务印书馆

Wikipedia 広東料理 https://ja.wikipedia.org/wiki/広東料理(2025年12月10日閲覧)

いいなと思ったら応援しよう!