HRBPの在り方④:これからのHRが持つべき、新しい価値とは何か
HRBPを先行事例に、HR組織全体の変革を考える
全4回のシリーズ、最終回です。
ここまでお付き合いいただいた皆さん、本当にありがとうございます。
振り返ると、このシリーズについて、一つの問いから始まりました。
「AIが進化するこの時代に、HRは何をする人たちなのか。」
第1回では、AIに代替されにくいHRの仕事として「構造を変える力」と「関係を作る力」を整理し、その能力が発揮できない「制度設計なき能力論」という落とし穴について記事を投稿しております。
第2回では、HRBPナインマトリクスという思考フレームを使いながら、HRBPが左下から右上へと信頼を積み上げていく成長の道筋を提示しました。
第3回では、CAMPモデルとコミュニティマネジメントという視点から、HRBPが現場の信頼を加速させる具体的なアプローチを共有しました。
今回は、これらを統合して、「これからのHR組織全体がどう変わっていくべきか」について私の考えを提言してみたいと思います。
いつも通り、理想論に終わらないよう、できるだけ正直に書きます。
では、いきましょう!
HRBPは「先行事例」であって「答え」ではない
まず、自分自身がHRBPとして役割を担っていることで日々感じていることも含め、大事なことなので、最初に触れておきます。
このシリーズを通じて、HRBPという役割を中心に論じてきましたが、みなさもお気づきの通り、HRBPを置けば組織が変わる、というほど単純な話ではありません。
HRBPは、これからのHRが担うべき役割
「構造を変える力」と「関係を作る力
を体現するための、一つの先行事例だと私はとらえています。
ただ、先行事例があることには大きな意味があると私は思っています。
組織の中に一人でも「あのHRBPは現場から信頼されている」「あの人がいると組織が変わる」という事例が生まれると、HR全体の評価が変わり始めます。
逆に言えば、HRBPが「何でも屋」のままでは、HR組織全体の価値向上にもつながらないということでもあります。
だからこそ、HRBPが機能することには、その個人の成長以上の意味があると感じています。
「制度設計なき能力論」を超えるために、経営陣と共に考え実行していくこと
このシリーズを通じて何度も出てきたキーワードが「制度設計なき能力論」でした。
能力の必要性は語られるのに、その能力が発揮できる制度・権限・時間が整備されていない状態です。
これを解消するために、取り組むべき事項を3つにまとめていますのでご参考ください。
① HRBPが動ける権限を明示する
「何を自分で決めていいか」が不明確なHRBPは、動くたびに確認が必要になり、現場から「人事はなかなか動かない」と思われてしまいます。意思決定できる範囲を明文化することが、HRBPの行動を変える第一歩です。
② HRBPの評価指標をアウトカムに昇華していく
「研修実施回数」「相談件数」といったインプット指標で評価されている限り、HRBPは右上(To-Be・Lv.3)への挑戦よりも、数をこなすことを優先するようになります。エンゲージメントの変化や部門の成果といった、アウトカムに近い指標に少しずつ移行することが必要です。
③ コミュニティ活動への参加が、キャリアに不利にならない設計を構築する
HRBPが現場のコミュニティに時間を使うことが「本来業務の外」として扱われる組織では、誰も本気でコミュニティに取り組みません。これも制度設計の問題です。
この3つがなければ、どれだけ優秀なHRBPを採用しても、能力は発揮されないのではないかと感じております。
採用や育成の前に、発揮できる環境を設計することが先です。
HR組織全体への提言:HRBPから学ぶ3つの姿勢
次に、HR組織全体として変わっていくために必要な姿勢を3つ整理してみます。
姿勢① 「答えを持って行く」から「一緒に考える」へ
従来型のHRは、制度や施策という「答え」を現場に届ける役割でした。これからのHRは、現場が抱える問いに「一緒に向き合うパートナー」であることが求められます。
これは能力論ではなく、スタンスの話です。「答えを持っていないと動けない」というHRの姿勢が、現場から「HRに相談してもわからない」という評価につながっているケースは少なくないと感じています。
姿勢② 「全社一律」から「現場文脈」へ
HR施策の多くは、全社一律で設計されます。それ自体は公平性の観点から必要なことです。ただ、現場が本当に必要としていることは、部門ごと・チームごとに異なります。
この部分は別記事の権限構造とのバランスもありますが、ぜひトライいただきたいです。
⇒ 権限構造から考えるHRBPの本当の動き方
また、HRBPナインマトリクスで言えば、各現場の組織文化のLv.(Artifact・Espoused Values・Underlying Assumptions)を理解した上で、介入の仕方を変えることが求められます。
同じ「1on1の仕組みを作ろう」という施策でも、現場の文化によってアプローチは全く変わってくるはずです。
姿勢③ 「人事部門の論理」から「ビジネスの論理」へ
HRBPに限らず、HR全体に求められる変化として、「人事部門の論理でなく、ビジネスの論理で考える」という視点があります。
「この制度は労務リスクがあるから難しい」という回答は、人事部門の論理です。「このリスクを取った場合の事業へのインパクトはどれくらいか、どう管理するか」という問いに向き合えるのが、ビジネスパートナーとしてのHRです。
これは一朝一夕に身につくものではありませんが、意識して現場の議論に入り続けることでしか、養われないスキルだと私は感じています。
コミュニティマネジメントが、HR全体の「場」になる
最後に、シリーズ全体を通じて私が最も伝えたかったことに戻ります。
コミュニティマネジメントは、HRBPだけの武器ではなく、HR組織全体の新しい価値になりうると考えています。
採用担当が候補者(Candidate)とのコミュニティを育て、入社前からエンゲージメントを高める。
HRBPが現場の社員(Active)と属性型・目的型コミュニティを育て、組織文化の深層に関わっていく。
人材開発担当がアルムナイ・退職者(Mentor)を巻き込み、組織の暗黙知を継承する。
外部パートナーとのコミュニティがパートナー(Partner)との関係を深め、専門性を組織に取り込む。
CAMPモデルのC・A・M・Pを、HR組織の各機能が分担しながら動かしていく。そういうイメージです。
もちろん、これも「制度設計なき能力論」の罠にはまりやすい構想です。
誰がどの時間で担うのか、どう評価するのか、という設計がなければ机上の空論で終わります。(この部分は私自身、まだ実行し切れていない課題です。。。)
ただ、だからこそ、まずHRBPという先行事例で小さく試し、成果を証明してから広げていく。そのアプローチが現実的だと考えています。
このシリーズを通じて
4回にわたって書いてきましたが、正直に言うと、これらの考えはまだ「仮説の集合体」です。
私自身が現場で試しながら、うまくいったこともあれば、まだ実現できていないこともある。外国籍コミュニティの自走は成功しましたが、中途コミュニティはまだ道半ばです。HRBPとして右上(Lv.3)の議論に入れた経験もあれば、壁②・壁③に阻まれてもどかしい思いをしたこともあります。
だからこそ、この仮説を発信することに意味があると感じています。
同じような課題を感じているHRBPの方、HR責任者の方、経営層の方と、この問いを一緒に深めていきたいと思っています。
もし記事を読んで「うちの組織でもこれが起きている」「こんな事例があった」「ここは違うと思う」という感想があれば、ぜひコメントやSNSで聞かせていただけると嬉しいです🙏
HRが、組織の変革パートナーとして機能する未来を、一緒に作っていけることを願っています🌱
シリーズのまとめ
ベースになっている記事
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