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HRBPの在り方③:HRBPの武器としての「コミュニティマネジメント」

CAMPモデルで考える、組織の人的資本を社内外に広げる新しいアプローチ


前回の記事では、HRBPナインマトリクスの「左下から右上へ」という成長の道筋と、それを阻む「制度設計なき能力論」の壁について話しました。

今回は、その続きです。

HRBPが現場の信頼を獲得し、組織文化の深層に関わっていくためには、「個人との1on1」だけでは限界があると、私はずっと感じてきました。

ではどうするか。

私が実務の中でたどり着いた一つのアプローチが、「コミュニティマネジメント」という視点です。

「コミュニティ? 社内サークルみたいなもの?」と思われた方もいるかもしれません(笑)。

そうではありません。
HRBPが意図的に「人と人がつながる場」を設計し、育てていくことで、現場への信頼構築を加速させ、最終的には組織の人的資本を社内外に広げていく。
そのための戦略的なアプローチです。

今回は、私が構想している「CAMPモデル(キャンプモデル)」を中心に、HRBPとコミュニティマネジメントの関係を一緒に考えていきたいと思います。

では、いきましょう!



なぜ今、HRBPにコミュニティマネジメントが必要なのか

まず、少し視点を広げて考えてみます。

AIの進化によって、HRの事務業務やデータ収集・分析は代替されていきます。第1回の記事で触れた通りです。

そうなると、HRBPが本当に価値を出せる領域は「組織の中の人と人のつながりをどう育てるか」という、より人間的な部分に移っていきます。

ただ、ここに一つ大きな問題があります。

「つながりを育てる」という仕事は、成果が見えにくい。

エンゲージメントが上がっても、それがコミュニティのおかげなのか、制度変更のおかげなのか、証明が難しい。だからこそ、経営やHR責任者に「コミュニティに投資する正当性」を説明しにくい。

私はこれを「コミュニティマネジメントにおける制度設計なき能力論」と呼んでおり、現場で日々苦悩しておりました。
つながりを作る力は大事だとわかっている。でも、その成果をどう測るか、誰が担うか、どんな権限で動くか。。。
この設計が抜けたまま「コミュニティを作ろう」と言っても、うまくいかないのです。

だからこそ、HRBPがコミュニティマネジメントに取り組む際は、「場を作ること」と「成果を設計すること」をセットで考える必要があります。


CAMPモデルとは何か

先に、私が考える「CAMPモデル(キャンプモデル)」について少し紹介あせていただきます。
CAMPモデルは組織の人的資本を「社内の在籍者」だけで捉えるのではなく、もっと広く定義しようというアイデアです。

ちなみに「CAMP=キャンプ」としているのは、人材の集う場を連想できるようにと思いネーミングしたのでそのイメージを持っていただけると嬉しいです🏕️

CAMPは以下の4つの頭文字から成ります。

C:Candidate(入社前に会社と接点を持っている人)
採用候補者や、将来的に入社を検討している人材。入社前からコミュニティとして接点を持つことで、採用ブランディングとオンボーディングの断絶を防ぐことを狙っています。

A:Active(組織で活動している社員)
現在在籍している社員。HRBPが最も深く関わる層です。

M:Mentor(退職者=知恵を残す存在として)
退職したアルムナイ(OB・OG)を「知恵を残す存在」として組織資産に組み込む発想です。多くのHRモデルは在籍者のみを対象にしますが、退職者が持つ暗黙知や人脈は、組織にとって貴重な資産です。

P:Partner(外部パートナー・業務委託などの専門家)
フリーランスや業務委託で関わる外部の専門家。正社員だけでは補えない専門性を持つ層です。
最近では、この領域の方々と業務を遂行する場面も増えてきていると感じております。

この4つのコミュニティを並行して、それぞれ独立した形・時には交わりながら運営するのがCAMPモデルの基本的な考え方です。
4つを無理につなげるのではなく、それぞれの文脈で意味のある場を作っていきます。
HRBPとしては、それぞれのコミュニティと時に深く関わりながら組織のパフォーマンスを最大化する意識を持つことで、新たな戦略が生まれてくると考えております。

今回の記事はHRBPの役割としての記載なので、紹介程度で終わりますが別の記事でCAMPモデルについても記事を書こうと思っておりますのでよろしくお願いいたします。


HRBPのフェーズに合わせたコミュニティ設計

ここが今回最もお伝えしたいポイントです。

コミュニティには大きく2つの種類があるといわれており、私もこの整理をしております。
今回は会社組織としての表現でまとめていきます。

属性型コミュニティ
入社年次、中途入社、外国籍、居住エリアなど、人の属性で集まる場。参加者が明確で、場を作りやすい。

目的型コミュニティ
会社の課題解決、イノベーションプロジェクト、育児やジェンダーなど、特定の課題・関心で集まる場。参加者の動機が明確で、アウトプットが生まれやすい。

そして、私が重要だと考えているのは、HRBPのフェーズによって、取り組むべきコミュニティの種類が変わるという点です。

図:HRBP コミュニティマネジメントマップ

こちらの図は過去の記事にあるHRBPナインマトリクスと相関してみていただくと理解が深まりますので、ご参考ください。
HRビジネスパートナー(HRBP)に求められる”9(ナイン)マトリックス思考”

HRBP初期(ナインマトリクスのLv.1期)

まずは属性型コミュニティから始める。入社年次や中途・外国籍などのコミュニティを作ることで、HRBPが現場のネットワークを構築し、信頼関係を獲得するための「加速装置」にします。

HRBP中期(Lv.2期)

育児やジェンダーなど、プライベートや思想が働き方に影響するテーマのコミュニティへ。属性型と目的型の中間に位置する、少し踏み込んだ場です。

HRBP後期(Lv.3期)

会社の課題解決やイノベーションプロジェクトなど、目的型・パブリックなコミュニティへ。現場からの信頼があるからこそ、HRBPが組織開発の観点で深く関与できます。


私自身の実践から学んだこと

少し、自分の実体験を共有させてください。

HRBPに着任して1〜2年目、私は中途採用者と外国籍社員のコミュニティづくりを行いました。自分のネットワーク構築の加速装置として活用しながら、現場の実態をより深く理解することができました。

このうち、外国籍コミュニティは自走することに成功しました。 他の人事スタッフがランチ会の企画を引き継いでくれて、週1回のランチ会が定着。私は完全に手を放せるようになりました。

一方で、中途採用者コミュニティの自走はまだ実現できていません。 振り返ると、「中途入社」という属性は時間が経つと薄れていくものです。2〜3年経てば「自分はもう中途じゃない」という意識が生まれ、コミュニティへの帰属動機が自然に低下してしまいます。

この経験から、私は「入社1年目コミュニティ」という設計に切り替えることを考えています。
入社1年目という、全員が通過する時間限定の役割を軸にすることで、毎月の新入社員をつなぐ場を作る。離職率の低下とオンボーディングのサポートを目的に、毎月のランチ会を企画し、2年間は伴走する形です。

また、特定地域に住む社員の飲み会コミュニティでは、特定のリーダーがいるわけではなく、毎回持ち回りで幹事をする文化が構築されて自走し始めています。これも一つの在り方として、非常に参考になっています。


コミュニティが自走するための条件

実体験から気づいたことを整理すると、コミュニティが自走するためには以下の条件が重要だと感じています。

① 形式が軽いこと
週1ランチ、月1飲み会など、参加コスト・開催コストが低い形式が継続を支えます。重厚な勉強会形式は自走しにくいです。

② 特定のリーダーに依存しないこと
外国籍コミュニティは「他の人事」が引き継ぎ、地域コミュニティは持ち回り幹事でリーダー依存を排除しました。どちらも「特定の一人に依存しない設計」になっています。

③ HRBPが「答える人」として参加すること
HRBPがコミュニティに残る場合、その立ち位置は「管理する人」でも「盛り上げる人」でもなく、「わからないことがあれば聞ける人」であることが重要です。これが場の心理的安全性を担保し、本音が出やすい環境につながります。


コミュニティの成果をどう設計するか

最後に、経営への説明可能性の話をしておきます。

コミュニティマネジメントへのリソース投下を正当化するためには、成果の設計が必要です。私は以下のように整理しています。

属性型コミュニティのKPI
エンゲージメントスコアの変化、離職率(特に入社1〜2年目)、「困ったとき相談できる社内の人がいるか」という単一設問のスコアなど。

目的型コミュニティのKPI
それぞれの業務につながるアウトプット(プロジェクトの成果、提案件数、実装された施策数など)。業務成果として評価できる部分です。

ただし一点、正直に申し上げると。エンゲージメントや部門成果は、コミュニティ以外の要因とも相関するため、「コミュニティのおかげ」と断言することは難しいです。

コミュニティ参加者と非参加者のスコアを比較する設計を取り入れると、説明力が上がります。小さくても、こういった「測る仕組み」を最初から設計しておくことが、長期的な活動の継続につながると感じています。
この部分は私も精緻に整理できていないので今後の課題として取り組んでおります。


次回予告

ここまで3回にわたって、AIの時代のHRの価値、HRBPナインマトリクス、そしてCAMPモデルとコミュニティマネジメントについて論じてきました。

最終回となる次回は、これらを統合して「これからのHRが持つべき新しい価値」を提言します。
HRBPを先行事例として、HR組織全体がどう変わっていくべきか。CHROやHR責任者への提言として締めくくりたいと思います。

コミュニティが自走し、
HRBPが組織の変革パートナーとして機能する
そんな組織が一つでも多く生まれることを願っています🌱



こちらの記事もご参考いただけると嬉しいです!


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Shugo HORIGUCHI 本記事が皆さまのキャリアや組織運営のヒントになれば幸いです。より良い職場環境づくりや人材育成に役立つ情報を発信していきますので、ぜひサポートいただけると励みになります!いただいたチップは、さらなる価値あるコンテンツの制作に活用させていただきます。

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