中国でトラブル体験しチャイナ#06/大量の札束ゲット事件
前編がまだの方はこちらからどうぞ!
ひとりで王府井
さて、タクシーに置き忘れて二度と戻らず、慌てて回線を止めたものの時すでに遅し・・・その間に7万円分も不正利用されていたという「痛すぎるケータイ紛失事件」のダメージは、もう起きてしまったことだから仕方ないとして。
夜は自由行動。残りの3人は部屋から出てくる気配もないので、ひとりで王府井へと向かう。 ホテルのスタッフにホテル名と「王府井」の文字を簡体字でメモに書いてもらい、それを頼りにタクシーを拾った。

王府井にはあっさり到着できたものの、いくら歩き回っても昨日のレストランが全然見つからない。 そうだった、わたしは極度の方向音痴(地理を覚えるのが苦手)なんだった・・・。
結局、似た雰囲気の別のレストランに入った。
そこで食べた中華料理がまたとても美味しくて。
お腹も満たされたところで「ここからはもう記憶をなくしてもいいだろう」と謎のスイッチが入り、また紹興酒を飲んだ。
とにかく飲みまくった。
・・・そして気がついたら、ホテルの自室のベッドだった。
美味しいごはんと酒を楽しんで大満足。そのまま眠りにつこうとまどろんでいると、隣の部屋からまた「トイレが! トイレが!」と焦る声が聞こえてきた。多分、トイレットペーパーを流しちゃいけないってことにまだ気がついていないんだろうな。
明日教えてあげよう・・・すー・・・すー・・・。
そして、夜が明けた
目覚めた朝。「あれ? そういえば昨夜はどれくらい飲み食いしたっけ?」と財布を確認すると、クレジットカードの明細書が入っていた。 明細といっても「お食事代」とだけ書かれた簡素なものだったんだけど・・・記載された金額を見て目ん玉が飛び出た。そして一気に酔いが覚めた。

・・・あれ? これ、明らかに「0」がひとつ多くない??
1万円くらい飲み食いした記憶はある。
でもそこには、日本円換算で「10万円」に相当する金額がしっかりと刻まれていたのだ。 きっと向こうの精算ミスだ。いや、実際たぶん精算ミスだったんだと思う。
悪気はなかったのかもしれないし、ちょっとはあったのかもしれないけれど。
幸い明細にはレストランの連絡先が書かれていたので、ホテルの客室から外線で電話をかけてみた。 誰かが出たけれど、もちろん中国語。こちらが英語で話しかけても、誰も英語を話せないらしく意思疎通ができない。
仕方なく電話を切り・・・「警察に電話してみよう」と決意した。
早速、中国の警察に電話をかける。幸い英語が通じる相手が出て、「これから署に来て事情を話してほしい」と言われた。しかも「日本語が喋れる警察官もいる」とのこと。 わたしはこの日の午前の学会参加をキャンセルし、指定された警察署へタクシーで向かった。
1回目の警察署
警察署に着くと、最初は英語が話せる警察官が対応してくれ、取調室のような部屋に通された。
「これから日本語が話せる担当者が来るから、彼女に詳細を話して」
と言われる。
なんのことはない、「多分料金を10倍間違えられた」と伝えるだけだ。これなら英語でも十分説明できたのだけど、「日本語が話せるならその方がもっと話しやすい」と思ったのが間違いだった。
現れたのは「日本語の単語をちょっと知っているだけ」の警察官だったのだ。
絶対にさっきの英語が話せる警察官の方が話が早い。
ちぇーんじ!
わたしは元の英語ペラペラ警察官を呼び戻してもらった。
・・・しかし。
いざ事情を話すと、
「あなたが本当に10万円分の食事をした可能性もあるから、警察ではどうしようもない」
と突っぱねられてしまったのだ。
らちが明かないと悟り、すごすごと一旦ホテルへ戻る。

・・・そうだ、日本大使館だ!!
大使館職員とのやりとり
さすが日本大使館。当たり前だけど普通に日本語が通じる安心感。
わたしはレストラン名を告げ、「おそらくクレジットカードで10倍の請求をされた」という事情を事細かに伝えた。
職員さんはむちゃくちゃ親身になって話を聞いてくれ、事件性がないかどうかもじっくり精査してくれた。
すると、なんとそのレストランでは「過去にも数例、似たような事件があった」という事実が判明した。
くそう。おっちょこちょいなのか悪意があるのかわからんけど、わたしが初めての被害者じゃないってことか!
その後、大使館職員が現地の警察と直接話し合ってくれることになり、「結果は翌日までにホテルへ連絡する」と約束してくれた。
翌日までに!? お役所仕事とは思えないこの迅速な対応!
やればできる優秀な人たちなんだよ、やっぱり日本の国家公務員は!
その日の夕方。
M先生、Nさん、Kさんの3人が学会会場から戻ってくる物音がしたので、わたしは彼らの部屋をノックして起きた事の顛末をすべて話した。
M先生はなぜか楽しそう。
Nさんは相変わらずどうでもよさそう。
Kさんに至っては、現地警察や日本大使館と堂々と渡り合ったわたしの行動力にしきりに感動している。崇め奉れ(笑
わたし「あと、ここのトイレに紙を流したら詰まるんで、備え付けのゴミ箱に捨てるようにしてくださいね」
それだけ言い残し、わたしは自分の部屋に戻った。
M先生「それでか!」
Kさん「紙も流せないんですか中国は」
Nさん「・・・・・・」
という言葉が後ろから聞こえてくる。今晩からみんなのトイレ事情は平和になることだろう。
その翌日・・・2回目の警察署
わたしたち4人は学会会場へ行き、発表の聴講を終えてホテルへ戻った。すると、わたしの部屋のドアの下に1枚の紙切れが挟み込まれていた。 「警察署に連絡されたし」 ホテルのスタッフからの書き置きだ。
すぐに警察署へ電話を入れると、「示談が成立したからすぐに来てほしい」とのこと。わたしは再びタクシーに飛び乗り、夕暮れの警察署へと向かった。
到着すると、部屋の中では警察官のほかに、「スキンヘッドで顔に青タンがある、めちゃくちゃ柄の悪い50代くらいのおじさん」が楽しそうに談笑している。なんと、そのスキンヘッドのおじさんが例のレストランの店長だという。 真っ白なジャケットに紫のワイシャツ。まじで柄が悪い。Vシネマか。
Vシネマン「そーりーそーりー! じゃすとみすていく!」
どうやら「10倍間違えた」という事実は素直に認めているらしく、返金してくれるようだ。しかし・・・。
Vシネマン「クレジットカードへの返金処理はできないから、現金で返すぜ。・・・ほらよ。」

もうちょっと薄い札束だったけど、ヤバい取引でもしているかのようだった。
このVシネマン、ちなみにむっちゃくちゃ似てる。
と、多分言ったのだろう。中国語だからわたしにはわからない。
しかし、机の上にどさりと置かれる札束。
警察官に促されて数えてみると、たしかに10倍請求された分の差額が・・・つまり食事代が適正価格になるようにしっかり返金されていた。
その額およそ9万円分。
使用済みの元のお札で、いろんな種類のお札が混じってるからかなり分厚い。でも、お金が戻ってきたことにわたしは安心していた。
この時のわたしは、「人民元から日本円に再両替できるのは、入国時に両替した金額が上限である」という中国の厳しいルールをすっかり忘れていたため、「まあ、お金が戻ってくるならいっか」とホイホイ札束を受け取ってしまったのだ。
ガラの悪いVシネマンこと店長は「にっこり」と笑い、なれなれしくわたしの肩を3回ポンポンポンと叩いて、そのまま嵐のように去っていった。
その後、示談書のような書類にサインするよう警察官に促され、「名前はそのまま漢字で書いていいよ」と言われたので「空野朱理」とサインし、母印を押した。
・・・これが、わたしが異国の地で大量の札束をゲットした事件の全貌である。
9万円分にもなる人民元の札束は、とてつもなく分厚かった。
身軽なポーチしか装備していなかったわたしは、ポーチに入りきらない分の現金をそのまま手で持つしかなかった。
だって現金で返ってくるなんておもってもみなかったんだもん・・・。
むき出しの札束を片手に、王府井の繁華街を歩く日本人。どう見てもカモである。何かに狙われる気しかしない。

・・・このまま歩き回るのは絶対にヤバいと本能で悟り、そそくさと警察署に引き返してタクシーを呼んでもらい、息を潜めてホテルへと帰った。
そして、その帰りのタクシーの中でハッと思い出したのだ。
え・・・これ、帰国する時に日本円に両替できないじゃん。わたし、入国するとき、2万円分の日本円しか元に両替してないよ!!
このままじゃ、7万円分増えたことになっちゃって、5万円分+使ってない元1万円分=6万円くらい日本円に両替できない・・・かなり使わないと!!
こうして、タクシー代も何もかも、このあとの支払いはすべて現金で消費することに決めた。
クレジットカード、完全封印である。あと、財布の紐も緩める必要がでてしまった。
いやぁ、ちょうどこの日前後に、まだ5日間しか勤めていない、新しい職場から給与が40ー50万円くらい振り込まれていたんだよね。初めてのドカッとした収入で、少し気も大きくなってしまった。←ポスドクの給与は昇給もボーナスもないので、月額単価が高い。
ちなみに、わたし、金銭感覚がわりとヤバい(今でも)
在任中は実験装置を自腹で勢いで買ったり、適当に学生にご飯を奢ったりしていたので、貯金はマジでほとんど無いまま退職してる。
やばいぞ退職金!もうなくなるぞ退職金!笑
(つづく)
続編はこちら
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