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OTA外伝スピンオフ後編: 「運命の受験編」Episode 0-B●Episode 0-B 第1話:「そして、炎は託された」 ~その火は、静かに、しかし確かに燃え始めた~

※この作品は【NOTE創作大賞2025】エントリー作品です。

前書き:『それは、たった一枚の紙切れだった。
だけど、その裏には──命を燃やしてきた男たちの“背中”が刻まれていた。』

スチームおじさんは、決して順風満帆な人生を歩んできたわけじゃない。
むしろ何度もつまずき、立ち止まり、ときには甘えていた。
だけど、ある職場で出会った男たちが、そんな彼の“生き方”に火を灯した。

この物語は、再出発を決意した一人の青年と、
その背中をそっと押してくれた、“おじさんたち”の記憶である。

もしあなたが、人生のどこかで立ち止まっているなら──
彼らの言葉と眼差しが、あなたにもそっと灯をともしてくれるかもしれない。

(シリーズ構成:OTA全4話 ▶ 本編6話 ▶ 語学学校編全10話予定▶大学編全14話予定▶大学院編13話へ続く)

👉シリーズ読破ナビ ▶

スチームおじさんは、現役進学ではなかった。
一度社会に出てから、再び進学の道を選んだのだ。
志望する学校に進む前、彼はある施設管理の会社で働いていた。
そこでは、スチームおじさんは唯一の若者で、周りの社員たちは皆、60歳を超えていた。
第一線で働ききって一度リタイヤし、年金支給までの“つなぎ”として働く人たちばかりだった。
その職場は、不思議な温かさに包まれていた。
自分の親より年上の人々に囲まれ、毎日を丁寧に過ごす環境。
そこでスチームおじさんは、人生の先輩たちから多くのことを教わっていた。
職場の長であり、大手お酒メーカーの営業職から部長にまで昇り詰めた男――〈四角さん〉は言った。
「スチームおじさん君、君はここにずっといちゃいけないよ。いるなら電験Ⅲ種でも取らなきゃね」
現役時代、全国を飛び回り、数字と人を動かしてきたバリバリの仕事人間。
だが今は、若者に目を向け、未来を語る男になっていた。
一方、もう一人の頼れる大先輩、〈三角さん〉は元・一等機関士。
大型タンカーで海の上の安全を一手に任された、まさに“海の男”だった。
彼は、ある日こんなふうに言ってくれた。
「君はさ…今、もしかしたら“つまずいたかな?”って思ってるかもしれないけど──」
「全然だよ。まだ若いんだ。これからの行動次第で、いくらでも取り返せる年だよ」
その言葉は、ただの励ましではなかった。
海上で命を預かる現場にいた男の、“確信”と“経験”からくる真実だった。
彼らは皆、どこかに体の爆弾を抱えていた。
腰が痛い、膝が悪い、バランスが取れない――
そんな“目に見えない不調”が、いつも現場の空気に漂っていた。
だからこそ、スチームおじさんは気づいた。
自分にできることは、率先して動くことだ、と。
「誰かの負担を軽くする」ことが、いつの間にか日々の使命になっていた。
高い天井の電球交換など、誰かが無理をする前に自分が動いた。
「まだ若いからね」と笑いながら、いつも脚立を抱えていた。
誰も口にはしなかったけれど、それを皆が、ちゃんと見ていた。
実を言うと、スチームおじさんは当時、まだどこか子どもっぽく、だらしないところもあった。
日曜日の昼休みには、職場のテーブルで「たけしのスーパージョッキー」を見ながら、いつまでもだらだらと過ごしていた。
「まあ、たまにはいいか」と、皆がテレビを見て笑っている空気が心地よく、つい甘えてしまっていたのだ。
しかも、それが毎週のように繰り返されていた。
でも、今になって思う。
あの頃の自分は、周りの大人に甘えていた、と――当時の自分は、それにまったく気づいていなかった。
四角さんと三角さんは、そんな自分をただ咎めるのではなく、静かに見守ってくれていた。
けれど、もしかしたら……あのままだと危ないな、と、どこかで危機感を持ってくれていたのかもしれない。
そういえば、あの職場では、いつの間にか“お兄ちゃん”と呼ばれていた。
誰よりも若く、けれど孫でも子でもない。
ちゃんと一人の仲間として、輪の中に迎えられていた証だったのかもしれない。
今になって、その呼び名の意味が、じんわりと胸に響いてくる。
母親の病気もあり、彼の中には“医療”という道が芽生え始めていた。
そんなとき、〈四角さん〉と〈三角さん〉をはじめとする職場の雄たちが、そっと道を開いてくれた。
彼らの勧めと尽力で、スチームおじさんは社会人推薦枠での受験に挑むことになる。
人生を変えるチャンスは、たった一枚の推薦書だった。
けれど、その紙には想像以上の想いが詰まっていた。
これは“チャンス”なんかじゃない。“託された火”だった。
四角さんも三角さんも、一線を退いた今もなお、「人に火を灯す力」を持っていた。
だが、その先に待つのは、戦場だった。
推薦があっても、合格は約束されない。
むしろ「推薦? ズルくない?」という視線さえある。
スチームおじさんは、再び“あの教室”へと戻った。
だが今度は、背負うものが違う。
誰かの想いごと、自分の未来に賭ける覚悟――
それが、受験という名の戦いに挑む“燃える理由”になっていた。
社会人推薦枠での受験、それはただの近道ではなかった。
限られた教科に集中できる分、燃やすべき薪は少ない。
けれど、その炎は純度が高く、燃え尽きる覚悟が要る。
〈おじさんたちの背中〉に押されて開かれたこの道で、
スチームおじさんは、すべての力を一点に注いだ。
それは、“魂を注ぎ込まれた者”の行動だった。
「それは、誰にも聞こえないかもしれない。
けれど、たしかに響いていた。
心の奥で上がった、“静かな雄たけび”だった。
……それは、誰かのためじゃない。
自分自身のために灯した、人生最後の火種だった。

後書き:“火を託された”という言葉がある。
それは何かを任されるというより、「未来に希望をつなぐ行為」なのかもしれない。

スチームおじさんが受け取った火種は、きっと、彼にしか燃やせないものだった。
誰かの代わりじゃなく、自分のために燃やし尽くす——
それを教えてくれたのは、年上の“おじさんたち”の、静かなまなざしだった。

若さとは、勢いだけではない。
迷い、恥じ、立ち止まりながらも、それでも前に進もうとする姿勢こそが、
真の“若さ”であり、“強さ”なのだと、このエピソードは語っている。

そして今日も、どこかの現場で。
誰かの背中を見て、静かに火を受け継いでいる人がいるかもしれない。

この物語が、そんなあなたの胸の奥に、
小さな灯をともすものであったなら、嬉しい限りです。

🔥次回予告🔥
「推薦書は届いた。だが、戦いはこれからだった──」
スチームおじさんは、再び“あの教室”に戻る。
ただし今度は、“想いを背負った受験生”として。
受験当日までの軌跡を描く、緊張と葛藤の記録。
Episode 0-B 第2話「冬期講習、追い込み、そして受験当日へ」

前編はこちら
👉OTA外伝スピンオフ前編
 「避けられなかった出会い」Episode 0-A
※スチームおじさんが“あの教室”に戻るまでの物語は、
OTA外伝スピンオフ前編「避けられなかった出会い」で描かれています。
👉 読んでおくと、彼の“受験への想い”が10倍伝わります。

📚 スチームおじさん本編シリーズ
第1編:IBSで苦しんでいる若い君へ

第2編:屈辱と催しの狭間で 〜3分間の死闘〜

第3編:青春、涙の初デート編

第4編:痔の手術 〜地獄のブートキャンプ編〜

第5編:アメリカ留学記〜自由な国で不自由な肛門〜

第6編:IBS 〜屈辱と悲しみを超えて〜

👉 続きはこちら ▶ OTA 0-B②「冬期講習、最後の追い込み」
👉 シリーズ全体の読破ナビ ▶

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#再挑戦ストーリ

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