The Hidden History of Coachingからの学び
「河童の目線で人世を読み解く」市井カッパ(仮名)です。
「すべての組織と人間関係の悩みを祓い癒し、自然態で生きる人を増やす」をミッションに社会学的視点から文章を書いております。
御覧いただき、ありがとうございます。
さて、今回は、過去4回の記事で翻訳しつつ読んできた、The Hidden History of Coaching(コーチングの隠れた歴史)から何を学ぶのか、ということを書いていこうと思います。
過去の記事はこちらです。
そして、各章で何が書かれているのかを時系列に並べてみたものが下記の図になります。

コーチングの思想史を語る上でとても難しいことは、コーチングについてあまり知らない人も多い(そもそもコーチングという言葉の日本における世間的な認知度は15%くらいだと言われています。)上に、我々が既に当たり前と思っていることも含まれている、ということです。後者の場合、コーチングが他と何が違うのかわからない、という感想を持つ人が出てきて、「わざわざそれをコーチングと名付ける意味がわからない」と言われたことがあります。ちなみにその方は年輩の女性の教師の方でした。普段からコーチング型の授業をされているんでしょうね。
ということで、できるだけ丁寧に「当たり前」も疑って拾っていきます。
まず、最初に出てくる「自己啓発(self-help)」ですが、この本を超えて、そもそもを探ると、どうやらアメリカ独立宣言の「幸福追求権」に遡れるようです。
われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている
この中で「幸福の追求」と書かれています。当たり前だろうと思われるかもしれませんが、例えば、フランス人権宣言には、この言葉はありません。
人は、自由かつ諸権利において平等なものとして生まれ、そして生存する。
幸福についてはこう書かれています。
立法権の行為および行政権の行為が、すべての政治制度の目的と継続的に比較されることによって、よりいっそう尊重されるためである。それは、市民の要求が、これからは単純で争いえない諸原理にもとづくことになるため、つねに憲法の維持とすべての人々の幸福に向けられるようにするためである。
このように、フランス人権宣言では、政府が市民の幸福を願いますよ、という内容。これに対してアメリカ独立宣言は、すべての人に幸福を追求する権利がある、という内容。
ちなみに私たちが「当たり前」と思ってしまうのは、そのアメリカ人によって原案が書かれた日本国憲法にも、この考えが入っているからです。
〔個人の尊重と公共の福祉〕
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
「公共の福祉に反しない限り」という言葉の方を覚えている方が多いかもしれませんが、このように明記されています。
これに対して、政府が保証しているのは、こちらの有名な一節。
〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
個人的には、最低限度ではなく幸福と感じられるレベルが欲しいと思いますが、そのあたりは下記の記事に書きました。
それはさておき、この「幸福追求権」があるが故に、アメリカのアメリカン・ドリームみたいな話につながるのです。
ちなみにもうひとつの当たり前として、この dream という単語の意味があります。日本語でも現在では、「夢」と言うと、未来の理想の姿やビジョンのような使われ方をします。しかし、こういう使われ方をしたのはジェームズ・トラスロー・アダムズが1931年の著書『ザ・エピック・オブ・アメリカ』で「アメリカン・ドリーム」というフレーズを創出してからのこと。それまでは寝ている間に見るものだけが dream だったのです。
話を戻しますが、この「アメリカン・ドリーム」に象徴されるような「小福追求権」に基づき、これを実現しようとする方々の「自己啓発(self-help)」をサポートする、というところがコーチングの源流にあります。そこに大きくざっくり分けて、東洋思想に影響を受けた身体やスピリチュアルといった言語ではないところにフォーカスした思想、精神分析から始まる心理学理論、社会が複雑化することによるニーズ、のようなものが合わさって、まずはestなどの自己啓発セミナー、そしてその反省からコーチングが生まれます。

これまで筆者は心理学の側面からコーチングを紐解いていこうという「コーチング心理学」のスタンスから編著書や講座に関わってきました。そのスタンスには意味があると思っていますが、その意義のようなものが、これで整理された印象です。
このコーチング心理学概論ですが、心理学分野の専門書でありながら、歴史の解説から始まる、非常なユニークな構成になっています。また、理論は前半で、後半にはその実践が書かれており、やはりコーチングは実践あってナンボなんだな、ということが理解できる一冊です。
ただ、「心理学」と言っている通り、「成功哲学・自己啓発」「東洋・神秘・スピ思想」についてはあまり書かれていません。
ここに出てくるすべての人の考えをすべて知る必要はありませんが、コーチングに携わる者としては、軽くでも良いので知っておいた方が良いな、と思いました。
心理学については、コーチング心理学がその助けとなるでしょう。それ以外の分野については、まだまだ体系だった知見が足りないという印象です。
現場からは以上です。お読みいただき、ありがとうございました。面白かった、参考になった、という方は是非、高評価いただけると嬉しいです。フォローも大歓迎です。
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