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【英国文豪、令和を歩く】第56回:Tobacco and Vapes Act—cut it back, keep on track!

京都、三条通の界隈。明治時代から続くような、重厚な木造りのカッフェー。琥珀色の照明の下、二人の奇妙な連れが向かい合っている。一人は、華やかなスカーフを首に巻き、知的な光を瞳に宿した女性、ウィル。もう一人は、ツイードのジャケットを無造作に着こなし、パイプ代わりに手にしたペンを弄んでいる男、ドイルである

ウィリアムシェイクスピア                                                                                                                    

「あらドイル、その顔……。まるでベーカー街の自室で、暖炉の火が消えかかっているのに気づいた時のような、何とも言えない渋い表情ね。さては、故郷から届いた例のニュースを読んだのかしら?」

ウィルは、カッフェーの窓から見える京都の町並みを眺めながら、悪戯っぽく微笑んだ。手元には二杯目のハイボールが運ばれてきている。

                                                                                                                            コナンドイル

「ああ、ウィル。隠し事はできないな。そうだよ、2026年からイギリスで始まるという、あの『タバコ禁止法案』のことだ。若者たちから、段階的に煙草を吸う権利を奪っていくという……。実を言うと、私は今、猛烈に困惑しているんだ。君も知っているだろう? 私にとって、煙草は単なる嗜好品ではない。複雑な事件の糸を解きほぐすための、いわば『思考の燃料』なのだからね」

ドイルは、習慣で上着のポケットに手を伸ばしかけ、そこにはもうパイプも刻み煙草もないことを思い出して、小さく溜息をついた。

「ふふ、あなたのあの『三つのパイプの難事件』なんて話、今なら保健当局から厳重注意を受けてしまうわね。でも、時代の流れというものは、どんな名探偵の推理よりも残酷に、そして着実に進んでいくものよ。劇の舞台設定が変われば、役者はそれに従うしかない……それがこの世という舞台のルールだわ」

「それは分かっている。健康が第一という理屈も、医学を修めた身としては否定できん。だがね、ウィル。北緯八十度の氷の海で、解氷を待ちながら煙草をくゆらす……あの瞬間の、運命を天に任せるような静寂。あるいは、重いランプの影で自殺者の謎を追う夜、灰皿に溜まった四つの吸い殻が語る無言の証言。それらがすべて『不健全な過去』として消し去られてしまうのは、何とも寂しい気がするんだ」

「ロマンチストね、ドイル。でも、言葉の魔術師たる私から言わせれば、煙が消えたなら、別の何かでその空白を埋めればいいだけのこと。ほら、目の前にあるこの唐揚げの芳醇な香りや、ハイボールの弾ける泡はどう? 煙に巻くよりも、ずっと鮮やかに五感を刺激してくれるじゃない」

「……確かに、君の言う通りだ。シャーロックも、もし現代にいたら、パイプの代わりにこの『ハイボール』の炭酸の数でも数えながら、事件を解決しているかもしれないな。ニコチンに頼らずとも、この京都の澄んだ空気と、美味い酒があれば、新しい思考の扉は開くはずだ」

「その意気よ。禁止されるからこそ、私たちは新しい楽しみを見出す天才になれるの。法案がどうあれ、私たちの想像力まで禁止することは、イギリス政府にも、誰にもできはしないわ。さあ、ドイル。煙草の代わりに、そのグラスを掲げて。新しい時代の、煙のない乾杯をしましょう?」

「ああ、ウィル。君の言葉はいつも、最高に効き目のいい気付け薬だ。……よし、この『禁煙の謎』も、案外悪くない結末を迎えられそうだ。乾杯!」

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