【英国文豪、令和を歩く】第54回:Project Hail Mary—last chance play, save the world in a risky way!
カッフェーのテラス席。五月の陽光が、ドイルの広げた科学雑誌の紙面と、ウィルの手元の戯曲集を等しく照らしている。ドイルは眼鏡を指で押し上げ、感嘆の溜息を漏らした

ウィル、驚くべき物語を読んだよ。アンディ・ウィアーという現代の書き手が記した『プロジェクト・ヘイル・メアリー』だ。一人の男が、記憶を失った状態で宇宙船の中で目覚める……。医学的、物理学的なディテールが実に見事で、まるで私自身が無重力の隔離室で検死を行っているような錯覚に陥ったよ

あら、宇宙の物語? 素敵ね。星々はいつだって、私たちの運命を司る舞台照明のようなものだわ。でも、ドイル。その孤独な主人公は、暗黒の虚空でたった一人、絶望という名の毒杯を仰ぐことになったのかしら?

いや、そこがこの物語の白眉だ。彼はそこで、異星から来た『友人』に出会う。姿形は全く異なるが、数学と科学という共通の言語を持つ存在にね。ロンドンで私とワトソンが初めて出会い、化学実験の火花を通じて互いの信頼を確信したあの瞬間の、銀河規模の再現と言ってもいい。論理的な推論が、種族の壁を超えて二人を固い絆で結びつけるんだ

種族を超えた友情……。それは、ロミオとヂュリエットが家柄という名の『星の巡り合わせ』に抗おうとした物語の、遥かな未来版ね。外面は天使、心は夜叉……なんて疑い合う必要のない、純粋な魂の交流かしら。たとえ姿が恐ろしい『毒龍』のように見えたとしても、その知性が奏でる調べが、ナイチンゲールの歌声のように美しければ、それは真実の愛(アモーレ)と呼べるのかもしれないわ

まさに。異星の友人『ロッキー』は、炭素ではなくアンモニアの海から来たような存在だが、その献身的な精神は、どんな高潔な英国紳士にも引けを取らない。彼らが絶滅の危機に瀕した太陽を救うために、限られた資源と知略を尽くして挑む姿は、まるで最も困難な暗号解読に挑む名探偵のようだ。科学は、死の宣告を覆す唯一の『呪文』になり得ると、私は確信したよ

でも、ドイル。天の分は永劫不滅、貴方の分は死が取るといえば与らぬわけにはゆかない……。どんなに科学の光を掲げても、宇宙という巨大な劇場の幕が下りる瞬間は、神のみぞ知るものよ。その主人公は、最期の瞬間に『心の慰め』を見つけられたのかしら? 涙を乾かして、迷迭香(ローズマリー)を供えるような悲劇で終わらなければいいけれど

それは読んでのお楽しみだが、一つだけ言えるのは、これは『自己犠牲』という名の、最も気高い人間の証明を描いた物語だということだ。彼は地球という名の故郷へ帰る道よりも、友を救う道を選ぶ。……ウィル、もし私が宇宙の果てで記憶を失っても、君ならきっと、その鋭い台詞回しで私の理性を呼び戻してくれるだろうね?

ふふ、もちろんよ。貴方の耳元で、雲雀かナイチンゲールか分からないような高調子で、新しい喜劇のプロットを囁いてあげるわ。そうすれば貴方も、死の眠りから飛び起きて、また『事件だ!』と叫び出すに違いないわ。……さあ、その『ヘイル・メアリー』の結末を、私の想像力が追いつかないうちに、もう少し詳しく聞かせてちょうだい
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