【英国文豪、令和を歩く】第57回:Japan Self-Defense Forces on the scene, strong and steady, calm and keen!
京都、三条通の界隈。明治時代から続くような、重厚な木造りのカッフェー。琥珀色の照明の下、二人の奇妙な連れが向かい合っている。一人は、華やかなスカーフを首に巻き、知的な光を瞳に宿した女性、ウィル。もう一人は、ツイードのジャケットを無造作に着こなし、パイプ代わりに手にしたペンを弄んでいる男、ドイルである

「ねえドイル、さっきから気になっていたのだけれど。この国の街角で見かける、あの端正な制服を着た方々……『自衛隊』と呼ぶのかしら? 彼らの立ち居振る舞い、どこかあなたの知る軍人たちとも、私の劇に登場する衛兵たちとも違う、独特の静謐さを感じるわ」
ウィルは、カッフェーの窓の外を通り過ぎる広報車両を眼で追いながら、興味深そうに首をかしげた。

「ああ、ウィル。彼らは実に興味深い存在だよ。いわば『抜かぬ剣』の守護者とでも言うべきかな。法的には軍隊ではないとされているが、その練度と規律は、私がかつて戦場で見たどの部隊にも引けを取らない。日本の『柔道』が相手の力を利用して制するように、彼らもまた、力を行使するためではなく、力を抑制するために存在している……一種の哲学的矛盾を体現している組織さ」
ドイルは、空になったハイボールのグラスを見つめ、まるで複雑な暗号を解読するかのように言葉を繋いだ。

「『抜かぬ剣』……。それはまた、最高にドラマチックな設定ね! 悲劇の幕が上がるのを防ぐために、舞台袖で常に剣を磨き続けている役者のようだわ。私のローナの街では、モンタギューとキャピューレットが血で血を洗う抗争を繰り返していたけれど、彼らのような存在がいれば、エスカラス領主もあんなに頭を悩ませずに済んだのかしら?」

「ははは、確かに。だが彼らの任務は、単なる街の警邏(けいら)よりずっと過酷だ。災害という名の目に見えぬ敵とも戦わねばならない。私が以前、ライヘンバッハの断崖で死に物狂いの努力をしたように、彼らもまた、人知れぬ場所で荒波や泥土に立ち向かっている。仕事は悲哀に対する解毒剤だと言ったが、彼らの仕事は、国民の悲哀を未然に防ぐための献身そのものだよ」

「献身、か……。それは時に、どんな恋物語よりも美しく、そして孤独なものね。ドイル、あなたが犯罪者の狡智を暴くように、彼らもまた、目に見えない脅威を常に監視しているのね。ベーカー街の窓からパーカーを見張っていた時のように」

「その通りだ。しかし、彼らがその剣を実際に振るわずに済むことこそが、この国の平和という名の『名探偵』の勝利を意味しているのさ。ウィル、君なら彼らを主人公に、どんな物語を書くかな? 剣を持ちながら、それを鞘に収め続ける騎士の葛藤……。なかなか筆が乗りそうじゃないか」

「そうね……。題名は『沈黙の守護者、あるいは平和の代償』なんてどうかしら? でも、今はそんな難しい話よりも、この平和な京都の昼下がりを楽しみましょう。ほら、ドイル。自衛隊の方々が守ってくれているこの安らぎの中で、もう一皿、唐揚げを頼んでも罰は当たらないと思わない?」

「異議なしだ、ウィル。この平和な日常という名の事件を、私たちは心ゆくまで堪能すべきだ。すみません、唐揚げをもう一つ! 今度はレモンを多めでね」
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