【英国文豪、令和を歩く】第14回:The Oscars—stars, guitars, and dreams in jars.
京都、寺町通の片隅にある、琥珀色のランプが灯る古風な喫茶店。使い込まれたビロードの椅子に、二人の人物が向かい合っている

(琥珀色の珈琲を静かにかき混ぜながら)
……ウィル、昨夜の喧騒は耳に届いたかい? この現代の「芝居の祭典」――アカデミー賞の授賞式があったようだ。街の至る所にあるあの光り輝く板(モニター)に、タキシードやドレスに身を包んだ人々が溢れていたよ。

(扇子で口元を隠し、悪戯っぽく目を細めて)
ええ、もちろん知っているわ、ドイル。黄金に輝くあの「オスカー」という名の騎士像でしょう? 先ほどあなたの資料を少し覗かせてもらったけれど、ホームズがベーカー街で囮に使った「蝋人形」を作ったのも、確かオスカーという名の彫刻家だったわね。何かしら、この名前には人を欺き、あるいは魅了する魔力でもあるのかしら。

(苦笑して)
おっと、鋭い指摘だ。確かに、あれはグレノーブルのオスカー・ミュニアー氏が心血を注いだ見事な模型だった。……だが、この映画という見世物は実に不思議だ。実像ではない「影絵」に過ぎないものが、世界中の人間を熱狂させ、最高の栄誉を競い合う。私のワトソンが見たら、それこそ「驚いた、全く驚いた!」と悲鳴を上げるに違いない。

(身を乗り出して)
影絵、ですって? 言葉が足りないわよ、ドイル。あれは鏡よ。人間の愚かさ、気高さ、そして救いようのない悲劇を映し出す魔法の鏡。昨日オスカーを手にしたあの俳優たちの涙を見た? あれは単なる演技ではないわ。己の魂を削り、別人の人生を「生きた」証なの。……ねえ、もし私の『ハムレット』や『マクベス』があの銀幕に掛かったら、今の世の人々はどう反応するかしら?

君の劇なら、視覚効果(特撮)など使わずとも、言葉の力だけで観客を震え上がらせるだろうね。……ただ、最近の傾向を見ていると、どうも「事実に着想を得た」物語が強いようだ。私がかつて、未解決事件の記録を紐解いてホームズの物語を編んだように、現代の人々もまた、現実の迷宮の中に真実のドラマを求めている。

現実はいつだって、どんな虚構よりも奇なり、ね。でもね、ドイル。あの華やかな授賞式の裏側には、選ばれなかった無数の「敗者」たちがいる。スポットライトの当たらない暗闇で、唇を噛み締める役者や書き手たち……。私は彼らの溜息の方に、より芳醇な物語を感じてしまうわ。リチャード三世が王冠を求めたような、あの渇望こそが芸術の源泉だもの。

(パイを一口食べて)
論理的に言えば、賞というものは一つの指標に過ぎない。ホームズが、自らの捜査の成功を「芸術家が創作の上に持つ歓喜と矜持」と同じものだと感じていたように、真の報酬は自分自身の中にあるべきだ。……とはいえ、あの黄金の像を手に取って、世界に向かって「僕は確信している」と宣言するのは、悪い気分ではなさそうだがね。

ふふ、ドイルったら。あなただって、自分の騎士道物語が認められたら、あの壇上で少しは得意げな顔をするんでしょう? ……さあ、次はどんな物語が世界を席巻するかしら。京都のこの静かな喫茶店から、新しい「オスカー」にふさわしい脚本でも書き始めてみない?

おあいにく様、ウィル。私は今、この「割り切れない」美味なアップルパイの謎を解くのに忙しいんだ。……君が書くなら、主演はぜひ、あのベーカー街の偏屈な友人をモデルにしてくれよ。もっとも、彼は「賞などという世俗的なものには興味ない」と言って、授賞式を欠席するだろうがね。
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