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【英国文豪、令和を歩く】第13回:Pi Day today—slice of pie on display.

京都、寺町通の片隅にある、琥珀色のランプが灯る古風な喫茶店。使い込まれたビロードの椅子に、二人の人物が向かい合っている

ウィリアムシェイクスピア                                                                                                                    

(窓の外、鴨川のせせらぎを眺めながら)
ねえ、ドイル。この街の学生たちが、何やら円周率の近似値……「3.14」にちなんだお祭りをしているのを見かけたわ。たしか「パイデー」とか呼んでいたかしら。

                                                                                                                       コナンドイル

(手元のアップルパイをフォークで小さく切り分けながら)
ああ、今日がその日だね、ウィル。3月14日。数学者や科学者たちが、あの果てしなく続く数字の列に敬意を表する日だ。……もっとも、私にとっては、この皿の上のパイの方が、論理的な裏付けがあって好ましいがね。

(くすくすと笑って)
あら、あなたらしいわ。でも、終わりのない数字の羅列なんて、まるで迷宮に迷い込んだ王の独白みたいじゃない? 割り切れない、答えの出ない苦悩……。私の劇なら、その「割り切れなさ」こそが物語の核心になるわ。

(真面目な顔で)
いや、ウィル。謎には必ず解があるべきだ。たとえば、あの「臨時急行列車の紛失」事件を思い出してごらん。一直線の線路の上で列車が消えるという、一見すれば超自然的な怪異でさえ、精査すれば炭坑の引込線という「物理的な経路」に辿り着く。円周率だって、どれほど長くとも、それは円という完璧な図形を定義するための、厳格な法(ルール)なのだよ。

(頬杖をついて)
法、ね。でもドイル、あなたの愛するシャーロックだって、時には理屈を超えた「直感」で動くでしょう? このパイだってそうよ。リンゴの甘みと生地の重なりが、口の中で調和する……この幸福を数式で説明できるかしら?

……確かに、感情の機微までは計算できないな。ヴァイオレット・スミス嬢が自転車でさらわれた時の、あの切迫した恐怖や、その後の安堵の表情を数式に置き換えるのは、私にも不可能だ。

でしょう? 数字は冷たいけれど、言葉は体温を持っているわ。円周率が「3.1415……」と永遠に続くように、人の業や愛もまた、終わりのない物語として紡がれていく。……ねえ、ドイル。そのパイ、一口ちょうだい?

(苦笑して皿を差し出し)
いいとも。だが気をつけて。あまりに美味しいからといって、これを題材に悲劇の一幕を書かないでくれよ。「毒入りのパイを巡るデンマーク王子の苦悩」なんて、せっかくのティータイムが台無しだ。

(パイを口に運び、満足そうに目を細めて)
ふふ、約束するわ。今はただ、この円いパイの完璧な調和を楽しみましょう。……ねえ、ドイル。このパイの直径を測って、円周率を導き出す必要なんて、今の私たちにはないと思わない?

……ああ。今はただ、この珈琲の香りと君との雑談があれば、それで十分「正解」だよ、ウィル。

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