【英国文豪、令和を歩く】第6回:Water cremations bring cleaner transitions for future generations.
京都、鴨川沿いの古びた喫茶店。使い込まれた木のテーブルに、琥珀色のコーヒーが二つ。窓の外には雨に濡れた先斗町の路地が見える

(少し身を乗り出して):
ねえ、ドイル。さっきのニュース見た? スコットランドで『水葬』……正確には『加圧式水葬(ウォーター・クレメーション)』が合法化されるんですって。なんだか、私の時代のオフィーリアを思い出して、少し胸がざわついちゃったわ

(眼鏡を指で押し上げ、新聞から顔を上げて):
ああ、あの記事だね、ウィル。アルカリ加水分解というやつだ。遺体を強アルカリの溶液に入れて、熱と圧力をかける……。数時間で骨だけが残り、あとは液体に還るという。実に論理的で、現代的な解決策じゃないか。まさに『塵は塵に、水は水に』というわけだ

(ふふっと微笑んで):
ロマンチックとは言い難いけれど、不思議な潔さがあるわね。炎に焼かれる激しさよりも、静かな水の中で溶けていく方が、今の私にはしっくりくる気がするの。ほら、私の物語でも、水は常に生と死の境界線だったでしょう? 現代の科学が、それを『エコ』という言葉で再定義したのが面白いわ

(コーヒーを一口啜って):
エコ、か。確かに火葬に比べて温室効果ガスの排出が激減するそうだよ。スコットランドが英国で最初にこれを認めたというのも興味深い。あそこの荒々しい海や深い霧を知っている身としては、死者が水に還るというのは、霧の中に消えていくようで、どこかケルト的な情緒さえ感じるよ。……もっとも、私のホームズなら、その溶液の化学組成を分析して、完璧な証拠隠滅に使われないか心配しそうだがね

(声を立てて笑いながら):
相変わらずね、ドイル! でも、この記事には『愛する人の遺灰を、より柔らかい形で受け取れる』って書いてあったわ。骨も白く、もろくなって、粉末にしやすいんですって。形を失って、ただの概念に近い存在になる……。それは、魂が肉体という牢獄から解き放たれる、究極の劇的な幕切れだと思わない?

(少し遠い目をして):
魂の解放、か。……私はね、ウィル。晩年は心霊主義に傾倒しただろう? だから、肉体がどう処理されるかよりも、その後に残るエネルギーの行方の方が気になるんだ。だが、この『水葬』が選べるようになることで、死への恐怖が少しだけ『浄化』されるなら、それは医学的にも精神的にも、生者にとっての救いになるのかもしれない

(窓の外を眺めて):
京都のこの雨も、いつかは海へ流れ着く。私たちも一度は物語の中で死んで、こうしてまた現代の風に吹かれている。次に私が眠りにつく時は、炎よりも、こんな静かな水のリズムに身を任せるのも悪くないわ。ねえ、ドイル、もし私がそうなったら、あなたはどんな詩を添えてくれるかしら?

(苦笑して):
手厳しいな。君の前で詩を書くなんて、大英博物館の前で砂遊びをするようなものだよ。……だが、そうだな。もし君が水に還るなら、私はただ『事件は解決し、物語は海へ還った』とだけ記すとしよう。それが一番、君らしい幕引きだろうから

(満足げに):
あら、名探偵の生みの親にしては、随分と詩的な回答じゃない。……さあ、冷めないうちにそのコーヒーを飲み干して。次は、この『水葬』の技術がもっと普及した未来のミステリーについて、プロットを練りましょうよ
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