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【英国文豪、令和を歩く】第59回:London Marathon, strong and grand, runners racing hand in hand.

京都、三条通の界隈。明治時代から続くような、重厚な木造りのカッフェー。琥珀色の照明の下、二人の奇妙な連れが向かい合っている。一人は、華やかなスカーフを首に巻き、知的な光を瞳に宿した女性、ウィル。もう一人は、ツイードのジャケットを無造作に着こなし、パイプ代わりに手にしたペンを弄んでいる男、ドイルである

ウィリアムシェイクスピア                                                                                                                    

「ねえドイル、今のニュースを見たかしら? 私たちの故郷ロンドンの道が、まるで魔法にかけられたような驚異の舞台になったわ。一人の男が、二時間を切る速さで風のように駆け抜けたというじゃない。これこそ、どんな劇的な幕切れよりも手に汗握る真実(リアリティ)だわ!」

ウィルは興奮を隠しきれない様子で、手にした扇をせわしなく動かした。彼女の瞳には、かつてグローブ座の舞台で見た熱狂以上の光が宿っている。

                                                                                                                             コナンドイル

「ああ、ウィル。私も今、その報に接して驚嘆していたところだ。二時間を切る……。これはもはや、肉体の限界という名の『密室』を打ち破る、人類史上最大のトリックと言っても過言ではないね。私がかつて診察室で診てきたどの患者の心拍よりも、彼の鼓動は力強く、そして正確なクロノメーターのように刻まれていたはずだ」

ドイルは、まるで事件の証拠物件を精査するように、手元の端末で記録を確認しながら深く頷いた。

「考えてもみてよ、ドイル。ロンドンのあの石畳や橋を、たった一人で、風を追い越すように走り抜ける姿を。それはさしずめ、宿命に抗う悲劇の主人公が、自らの足で新しい運命を切り拓くようなものだわ。二時間という壁……それは、神様が人間に課した禁忌(タブー)だったのかもしれないのに」

「確かに。かつて私が『白銀の失踪』で見た名馬たちの疾走も壮大だったが、自らの足だけでその領域に達するというのは、全く別の次元の話だ。ホームズなら、彼の筋肉の動きや、一歩ごとの歩幅から、その勝利の必然性を瞬時に導き出しただろうな。これは偶然の産物ではない。緻密な計算と、ヘラクレスのような強靭な意志がもたらした『必然の結末』だ」

「でも、ドイル。二時間を切った瞬間のあの歓声! テムズ川のせせらぎさえもかき消すような、あの人々の叫びを想像してみて。言葉を操る私でさえ、あの感動を表現するには新しい語彙が必要だわ。人間は、ただ生きるだけではなく、こうして『不可能』という名の怪物に挑み続ける生き物なのね」

「全くだ。事件が難解であればあるほど、解決した時の喜びは大きい。彼にとっての二時間の壁は、私にとっての最も複雑な暗号のようなものだったのだろう。……しかし、ウィル。そんな偉業の後に、彼は一体何を口にしたんだろうね? 私なら、この京都の『カッフェー』で、彼に最高の一皿を振る舞いたい気分だよ」

「ふふ、それなら決まっているわ。この、外はカリリと、内は情熱を秘めた『唐揚げ』よ! 限界を超えて走り抜いた英雄にこそ、この黄金色の報酬がふさわしいわ。ねえドイル、私たちも彼の快挙に乾杯しましょう? 記録が破られるたびに、世界は少しずつ、新しい物語へと書き換えられていくのね」

「その通りだ。さあ、ロンドンの風と、限界を超えた勇者に。乾杯!」

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