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【英国文豪、令和を歩く】第60回:Hot spring, dip and grin, warm it up and soak right in!

京都、三条通の界隈。明治時代から続くような、重厚な木造りのカッフェー。琥珀色の照明の下、二人の奇妙な連れが向かい合っている。一人は、華やかなスカーフを首に巻き、知的な光を瞳に宿した女性、ウィル。もう一人は、ツイードのジャケットを無造作に着こなし、パイプ代わりに手にしたペンを弄んでいる男、ドイルである

ウィリアムシェイクスピア                                                                                                                    

「ねえドイル、この国の『オンセン』という文化……これこそ究極の喜劇、あるいは至高の官能小説だわ! 裸一貫となって、大地の熱い吐息に身を委ねるなんて。まるで、すべての役者が衣装を脱ぎ捨てて、ただの『人間』という名の原稿に戻るような清々しさだわ」

ウィルは、カッフェーの壁に貼られた温泉宿のポスターを扇で指し示しながら、その瞳をいたずらっぽく輝かせた。

                                                                                                                              コナンドイル

「ああ、ウィル。温泉か。実は私も、この国のその習慣には並々ならぬ関心を抱いているんだ。医学を修めた身としては、あの成分の調合……硫黄や塩分が皮膚を通じて血流を促すというプロセスは、実に理にかなった『治療』だよ。シャーロックがライヘンバッハの激流で負った傷も、もしあの時近くに温泉があれば、もっと早く癒えていたかもしれないな」

ドイルは、あたかも未知の薬品の効能を分析するかのように、顎に手を当てて深く頷いた。

「あら、あなたは相変わらず理屈っぽいのね。でも、あの湯気に包まれる感覚を想像してみて? それはまるで、舞台の幕が上がる前の、あの白く煙った静寂のようよ。あるいは、ロミオとジュリエットが、憎しみのない世界で二人きり、温かい雲の上でまどろんでいるような……。あんな場所なら、毒薬も剣も、ただの無粋な小道具になってしまうわ」

「ははは! 確かに。温泉という密室では、どんな凶悪な犯人も、ただの『のぼせた男』に成り下がってしまうだろう。隠し持てる武器も、偽装するための変装道具もない。あるのは、ただ一つの手拭いと、無防備な魂だけだ。これこそ、真実を暴くための最も平和な尋問室かもしれないね」

「まあ、尋問だなんて! 私はもっとロマンチックに、言葉の魔法を楽しみたいわ。例えば、雪が舞い落ちる中で入る『ロテンブロ』。冷たい空気と熱いお湯のせめぎ合い……それはさしずめ、情熱的な恋の告白と、冷ややかな拒絶が織りなす、最高に贅沢な対比(コントラスト)だわ。ドイル、あなたならその湯気の中から、どんな謎を見つけ出すの?」

「そうさな……。湯船に浸かりながら、隣の男の肌の色の変化や、立ち上がる蒸気の流れを観察する。そこから、彼がどこの街から来たのか、どのような労働に従事しているのかを推理するのも悪くない。だが、ウィル。温泉の真の魅力は、推理を『放棄』させることにあるのかもしれない。あの熱の中に身を沈めれば、私の脳の灰色の細胞も、一時的に休戦を宣言して、ただ心地よい無に浸ることを選ぶだろう」

「あら、名探偵もお手上げというわけね? それこそが、八百万の神々がこの国に与えた最高の贈り物だわ。ねえドイル、私たちも今度、その『オンセン』とやらに出かけてみない? 私は湯船の中で新しい喜劇の構想を練るわ。あなたは、湯上がりの牛乳がなぜあんなに美味しいのかという謎を、じっくり解明すればいいじゃない」

「いい提案だ、ウィル。仕事は悲哀に対する解毒剤だが、温泉は人生そのものの解毒剤になりそうだ。……店主、すまないが、温泉に行く前に、もう一杯だけハイボールを。この琥珀色の液体を飲み干したら、次は大地の恵みに『潜入』するとしよう!」

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