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【英国文豪、令和を歩く】第61回:Amazon, vast and grand, delivering dreams across the land.

京都、三条通の界隈。明治時代から続くような、重厚な木造りのカッフェー。琥珀色の照明の下、二人の奇妙な連れが向かい合っている。一人は、華やかなスカーフを首に巻き、知的な光を瞳に宿した女性、ウィル。もう一人は、ツイードのジャケットを無造作に着こなし、パイプ代わりに手にしたペンを弄んでいる男、ドイルである

ウィリアムシェイクスピア                                                                                                                    

「ねえドイル、この『Amazon』という巨大な市場……。まるであらゆる欲望を飲み込む、底知れぬ大海のようだわ! 指先一つで、ロンドンの劇場にあるどんな衣装も、東洋の不思議な香料も、瞬時に手元へ届くというじゃない。これこそ、魔術師プロスペローも顔負けの、現代の魔法そのものね」

ウィルは、カッフェーの片隅で配達員が荷物を手渡す様子を眺めながら、感嘆の声を上げた。

                                                                                                                         コナンドイル

「ああ、ウィル。確かに驚異的なシステムだ。かつて私が記した、バーミングハムの『仮事務所』で人名住所録を書き写していた哀れな青年の話を覚えているかい? 彼は何日もかけて鉄器商の名前をリストアップしていたが、この『Amazon』とやらの検索エンジンを使えば、ホームズが煙草を一口くゆらす間に、フランス全土の業者を特定できてしまうだろうね」

ドイルは、手元のハイボールのグラスを回しながら、少し苦笑いを浮かべた。

「でも、ドイル。あまりに便利すぎて、物語の『溜め』がなくなってしまうのではないかしら? 恋文が届くのを首を長くして待つ焦れったさや、怪しげな商店の奥で偶然見つける古びた短剣……。そういった『偶然の出会い』という名の舞台装置が、すべて効率という名の波に飲み込まれていくようで、少し寂しい気もするわ」

「鋭い指摘だ、ウィル。確かに、推理の醍醐味は『情報の欠如』にこそある。この巨大なネットワークは、すべての真実を白日の下に晒そうとしているようだ。だがね、私はこうも思うのだよ。どれほど便利な物流網ができても、最後に箱を開ける人間の『心』までは、アルゴリズムとやらには予測できまい。届いた荷物が、依頼人の運命を劇的に変える『切り札』になるのか、それともただの『屑籠行きのガラクタ』になるのか……。そこには依然として、君の愛する人間喜劇の余地が残されているはずだ」

「ふふ、さすがはドイル。どんなに時代が変わっても、謎解きの情熱は失わないのね。名前が何であれ、薔薇は同じように香る……。たとえそれが、段ボールの箱に詰められて、翌朝あなたの玄関に届いたとしても、その美しさは変わらないということかしら?」

「その通りだ。ただ、一点だけ困ったことがある。もしホームズが現代にいたら、彼は一歩もベーカー街から出ることなく、必要な化学薬品や変装用具をすべてネットで注文してしまうだろう。それではワトソン君とのあの愉快な散策が、ただの『配達待ちの退屈な時間』になってしまうからね。……おっと、ウィル。君が欲しがっていたあの珍しい扇も、もしかしたらこの『Amazon』で、今すぐ見つかるかもしれないよ?」

「あら、それは素敵ね! でも、今は注文するよりも、このカッフェーでもう一杯、あなたと語らう時間を『キープ』しておきたいわ。時間はAmazonでも買えない、最高に贅沢な品物なんですもの。店主さん、おかわりを!」

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