【英国文豪、令和を歩く】第27回:Charles Chaplin, classic and happenin’, funny from start to the endin’!
鴨川の流れが見える、こじんまりとした古風な喫茶店。使い込まれた木のテーブルの上には、琥珀色のコーヒーと、少し厚切りのバタートーストが置かれている。窓の外では、現代の京都を謳歌する人々が往来している

(カップをそっと置き、長い睫毛を伏せて微笑む)
ねえ、ドイル。この街は不思議ね。古い石畳と、あの騒がしい銀色の箱――電車だったかしら――が、まるで見事な悲喜劇の舞台装置みたいに混ざり合っているわ。

(眼鏡を指で押し上げ、手元の新聞から目を離す)
全くだよ、ウィル。ロンドンの霧も深かったが、この盆地の湿気というのも、また独特の情緒がある。……ところで、さっきから君が熱心に眺めていたあの古い写真、喜劇王チャップリンじゃないか。

(写真を指先でなぞりながら)
ええ。この「チャーリー」という男、実に興味深いわ。あの山高帽にステッキ、そしてあのだぶだぶのズボン。一見すれば道化(フール)のようだけれど、その瞳の奥には、私がかつて舞台に刻んだどんな王の独白よりも深い憂いがある。彼は、言葉を持たぬ「沈黙」という名の詩人ね。

(頷き、コーヒーを一口すする)
鋭い観察だ。私の友人のホームズなら、彼の靴の磨り減り具合からその苦労の歳月を読み解くところだろうが……。確かに彼は芸術家だ。あのドタバタ劇の裏側には、数学的なまでに精密な計算と、人間性への冷徹なまでの洞察がある。犯罪捜査にも通じるような、徹底した「型」の完成を感じるよ。

(ふふ、と軽やかに笑って)
計算、ですって? あなたはいつも理屈っぽいわ、ドイル。でも、彼の凄みはそこじゃない。彼は「悲劇」を「喜劇」の衣で包んで、民衆に差し出したのよ。空腹や孤独、格差……それらは本来、胸を掻き毟るような絶望の種でしょう? それを彼は、一本のステッキで魔法のように笑いに変えてみせた。

(少し考え込み)
「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」……彼が遺した言葉だったかな。それはまさに、君がかつてグローブ座で鳴らした、あの変幻自在な人間模様そのものではないか。

(窓の外を眺め、独り言のように)
そうね。ロミオとジュリエットの毒薬も、一歩間違えれば滑稽な取り違えの喜劇。彼はその境界線の上を、あの不器用な足取りで踊り続けていた。現代のこの京都の街角に彼が立っていたら、きっとスマホに夢中な若者たちを尻目に、見事なパントマイムで彼らの孤独を暴いてしまうでしょうね。

(苦笑して)
そして、最後には警官に追われて角を曲がっていく……。彼のスタイルは、論理では割り切れない「人間の情」に根ざしている。私の書く物語が「秩序」を取り戻すためのものだとしたら、彼の笑いは「混沌」を抱きしめるためのものだ。……認めざるを得ないな、彼は最高の「観察者」だよ。

あら、ドイル。あなたにしては珍しく、感情に寄り添った評価ね。でも、そんな彼もきっと、このカッフェーの静寂は気に入るはずだわ。ねえ、もう一杯お代わりしましょう? 今度は、あの甘い「あんみつ」というものも試してみたいわ。

(時計を見て微笑む)
いいだろう。君の知的好奇心には、名探偵でも追いつけない。店員さん、こちらに同じものを。それと、彼女にその甘い菓子を。
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