【英国文豪、令和を歩く】第49回:Major earthquake—feel the shake, ground starts moving, hearts awake!
カッフェーの窓の外、京都の街並みは穏やかな午後の光に包まれている。しかし、ふとした拍子にテーブルの上のコーヒーカップが微かにカタカタと震え、二人は顔を見合わせる。揺れはすぐに収まったが、ドイルは眉をひそめて手帳を取り出した

……今のを感じたかい、ウィル? 地面の底から響くような、不吉な振動だ。この国に転生して以来、どうにもこの『大地震』という現象には慣れない。ロンドンの霧の中を歩く方が、よほど足元が確かだと思えるくらいだよ

あら、ドイル。貴方ほどの観察眼があれば、大地の溜息くらい予見できそうなものだけれど? でも確かに、今の揺れは少しばかり心臓を騒がせるわね。まるで舞台の奈落で、出番を待ちきれない役者が暴れているような……そんな不気味な予感

冗談じゃない。これは舞台装置の故障などという生易しいものではないぞ。地質学的な必然だ。かつて私が書いた物語でも、断崖から大石が転がり落ちる場面があったが、この国の地震は大地そのものが牙を剥く。医学的に見ても、人間の三半規管はこれほど予測不能な揺れに対応するようには作られていないんだ

ふふ、科学的な分析ね。でもね、ドイル。万有の母たる大地は、私たちに命を与える子宮であると同時に、すべてを飲み込む墓所でもあるのよ。美徳も法を誤れば悪徳と化すように、豊かな恵みをくれるこの山々も、時にはその裏側の顔を見せる。それは避けられない『自然のいたずら』だわ

自然のいたずらにしては、あまりに惨劇の予感が強すぎる。私はね、ウィル、常に最悪の事態を想定して動くのが癖になっていてね。このカッフェーの梁の強度や、避難経路を無意識に計算してしまう。君のように、ただ『嵐が過ぎるのを待つ』という優雅な構えはできないよ

あら、私はただ、怯えて過ごす時間がもったいないと思っているだけよ。死がいつ訪れるかは、神のみぞ知る脚本。もし明日、この京都の街が揺れて、私たちの物語に終止符が打たれるとしたら……。私はその瞬間まで、貴方とこうして美味しい珈琲を飲んでいたことを、最高のフィナーレとして受け入れるわ

……君のその、楽観主義とも虚無主義ともつかない死生観には恐れ入る。だが、私はまだ『完結』させるつもりはないよ。少なくとも、君がそのスコーンを喉に詰まらせないように見守る義務がある。ウィル、万が一の時は、私のジャケットの裾を掴んで離さないことだ。私の足腰は、まだ犯人を追跡できるくらいには頑健だからね

心強いわ、名探偵さん。でも、もし大地が割れて私が奈落に落ちそうになったら、詩的な台詞の一つでも吐かせてちょうだいね? 貴方のその『科学的な救助』に、少しばかりの華を添えてあげるわ

やれやれ、非常時まで劇作家でいるつもりか。……さあ、揺れも収まったようだ。今のうちに、その『分け前』のスコーンを食べてしまいなさい。エネルギーを蓄えておくことも、立派な生存戦略の一つだからね
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