見出し画像

「本心を口にすること」と「本心だと受け取られること」は全然違う

会話の中で時々、「この人は『本心を口にすること』と『本心だと受け取られること』の区別がついてないんだな」と感じることがあって、驚かされてしまう。

例えば、こういう話題の時に僕がよく例に出すのが「太っちゃったんですよ」みたいな会話である。「女性が『最近太っちゃって』みたいなことを言った場合になんて返すか」という話だ。関係値がある相手なら「確かに太ったよね~」みたいなことを言っても大丈夫なパターンもあるかもしれないが、とりあえず今回はそうじゃないとしよう。その場合、多くの人が、「えー、全然太ってないよ~」みたいなことを言うんじゃないかなと思う。

もちろん、それが正解の場合もある。「これは確実に、『えー、全然太ってないよ~』って返答を求めてるな」みたいな状況であればそれでいいだろう。でも、そうじゃない場合もある。相手が本当に「太っちゃった」と感じていて、それについてちょっと話したいことがある、みたいなパターンだってあるはずだ。そしてその場合に「えー、全然太ってないよ~」と返すのは得策ではない。というか、相手に「こいつは本心を言っていないな」と受け取られる可能性が高いように思う。

つまり、「太ってるようには見えない」が「本心」だとしても、それをそのまま伝えたところで相手がそれを「本心」だと受け取らないケースもあるというわけだ。で、こういうことが本質的には全然理解できてない人っているよなと思う。「自分は本心を口にしたんだから、相手はそれを本心と受け取るべきだ」みたいなマインドの人間が時々いて、「マジかよ」ってなる。

もちろんその逆もあって、つまり「全然本心なんか口にしていないのに、相手に本心だと思わせるのが上手い」みたいなことだが、それは嫌だなぁと思う。詐欺師とかホスト・キャバ嬢なんかが、こういう能力に長けている印象がある。個人的には「嫌だなぁ」と感じるのだが、ただ「コミュニケーションの本質を分かってるなぁ」とも感じるから、「本心を喋ったんだから本心だと受け取れよ」ってマインドの人よりは全然マシだなと思う。ホントそういう人と会話をすると、大前提が食い違っているが故に酷く疲れる。下りと上りのエスカレーターにそれぞれ乗りながら会話しているみたいな気分になってしまうのだ。

よくあるのは、「相手を褒めているつもりなのに、相手はそれを褒め言葉だと受け取らない」みたいなパターンだろう。そもそも「褒められる」というのは「何を」より「誰に」の方が重要で、だからまずは「自分は相手のことを褒めるのに適した存在だろうか」みたいな部分を考える必要がある。例えば、異性愛が前提となる場合、「男性が女性を褒める」という行為は一般的に「恋愛的な好意を向けている」と受け取られるだろう(女性が男性を褒める場合も同じと言えば同じだが、大分意味合いが異なる。が、その辺りのことを説明するのは煩雑なのでここでは省略)。だから、男性が女性を褒める場合は、「『恋愛的な好意を向けている』という情報とセットでその褒め言葉が届いても問題ないか」をまず精査する必要がある。そして、「それだと問題があるな」と感じる場合は、「そもそも褒めない」か「『恋愛的な好意を向けている』と受け取られないように褒める」ようにしなければならないのだ。

つまり、まずは「相手からあなたがどういう人に見られているか?」が重要なのであり、この点を認識せずに「褒める」という行為を行うと大体失敗するんじゃないかなと思う。

また「そもそも褒められるのが苦手」みたいなタイプの人もいる。例えば自己肯定感が低い人の場合、「こんな自分を褒めてくれるなんて申し訳ない」とか「褒めるところがない私を無理に褒めてくれてるのかな」みたいに感じてしまったりもするのだ。褒めている側は「相手に喜んでほしい」と思っているわけだが、結果としては逆効果になってしまうのである。

あと、これも結構ありがちだと思うが、「困ったら相談して」とか「言ってくれなきゃ分からない」みたいなことを口にしている人は注意した方がいいなと思う。例えば僕だったら、「『困ったら相談して』と言えば困った時に相談してくれるはず」なんて粗い考えしか持ってないような人には相談なんか出来ないよな、と考えてしまう。本質的には、「『困った時にはあの人に相談しよう』と思ってもらえるような振る舞いを普段からしている」ことが最も重要であり、そういう人が「困ったら相談して」と言っているなら全然いいが、普段の振る舞いが伴わないのに「困ったら相談して」と言っているだけの人は気をつけた方がいいと思う。

また、「言ってくれなきゃ分からない」についても同じように考えられるだろう。そんな風に言う人は大前提として、「そもそもあなたには言おうとは思えないんです」みたいに見られていることが多いはずである。なのに、そういう自身の問題は棚に上げて(というか単に気づいていないだけだとは思うが)、「あなたが言ってこないことが問題だ」みたいに主張するのは大いに問題があるなと思う。

こういうことを理解しないで、「自分の本心を素直に伝えているだけなんだから別に悪いことじゃないよね」なんて思って会話をしていると、いつの間にか嫌われていたり、なんなら「パワハラ・セクハラ」だと受け取られたりもするだろう。「何でパワハラ・セクハラだって言われるのか分からない」みたいに感じる人は、こういう部分が理解できていない可能性もあるなと思う(もちろん他にも理由はあるだろうが)。

ちなみに僕は、「最近太っちゃって」と女性に言われたら、まず「へぇ、そうなんですね」みたいなことを返すことが多い。これには、「あなたがそう認識していることは理解した」という伝える意図がある。でそこからは、相手がさらにこの話を続けたそうなら、「なんか食べすぎちゃったんですか?」とか「自分の理想体重から何キロプラス?」みたいなことを聞いたりする。大体の場合僕だって、「いやいや、別に全然太ってないじゃん」と感じているのだが、それをそのまま言ってもあまり意味がないので、「『太っちゃった』というあなたの認識をベースに色々聞きますよ」というスタンスを明示するようにしているというわけだ。これが正解の振る舞いかどうかは分からないが、そんなに間違ってはいないだろうとは思っている。

「全然本心なんて言っていないのに本心だと受け取られる」みたいなのもまあ嫌な状況ではあるが、それより「本心を口にしているのに全然本心と受け取られない」方が問題だろう。この場合、前提となる認識が大分間違っているので、何段階かステップを遡って、自分の振る舞いを見直した方がいいなと思う。

いいなと思ったら応援しよう!

長江貴士 サポートいただけると励みになります!