Vincen Garcia来日インタビュー'26
2025年に初来日を果たしたVincen Garcia(ヴィンセン・ガルシア)。
Vincenは現代のモダン・ジャズ&ファンク・シーンを代表するベーシストと評される、今大注目のプレイヤーだ。スペインのバレンシア出身で、初のソロアルバム『Ventura』を2023年にリリースすると同時に、彗星のようにシーンに躍り出てきた。
彼はInstagramでも多くのフォロワーを獲得し、モントルー・ジャズ・フェスティバル、ノース・シー・ジャズ・フェスティバルなどにも出演。現在、SNSやストリーミングを通じて世界で最も聴かれているベーシストの一人とも言われている。
そんな彼が、2026年に最新アルバム『VIVACE』をリリースして、ビルボードライブに再来日した。
筆者は『Ventura』の日本盤ライナーノーツを執筆した縁で、今回の来日前にリモートでVincenにインタビューを行い、その記事はRolling Stone Japanに掲載された。
そしてビルボードライブ横浜での公演を観た後、幸運なことにVincenとマネージャーから追加の対面インタビューを依頼された。
このインタビューは5月2日のビルボードライブ東京公演の日に行われたインタビューである。おそらく、2026年の来日では唯一のインタビューとなるだろう。
今回のビルボードライブ横浜で筆者は初めてVincenの生演奏を聴き、音源よりも圧倒的に躍動感のあるグルーヴと、バンドとの阿吽の呼吸によるコンビネーションに非常に感銘を受けた。
彼こそがまさに今自分がもっとも聴きたいプレイヤーとバンドの一つである、という確信を得たので、その状態でVincen本人にさらに質問ができるというのはまたとない機会であった。
今回は、そんな横浜でのライブを観たホットな状態で、彼のグルーヴやサウンドなどについて、前回のRolling Stone Japanでのインタビューを前提にさらに深堀りをしたものとなっている。是非、最後までご覧いただきたい。

――横浜公演で、あなたの生のグルーヴを初めて体験して非常に驚きました。とてもタイトでありながら、わずかに常にハネているような躍動感が素晴らしかったです。
前回のインタビューであなたはO’funkilloとPepe Baoから強い影響を受けていると話してくれましたが、本当にあなたのグルーヴはPepeに良く似ていると感じました。改めて、あなたが受けた影響について、そしてO’funkilloがどんなバンドかについて教えていただけませんか?
Vincen:そうだね、O’funkillo(オファンキージョ)とPepe Bao(ペペ・バオ)は僕にとってとても重要なバンドとベーシストだ。前のインタビューで彼らの『En El Planeta Aseituna』がフェイバリットなアルバムだと話したよね。
僕がベースラインをいろいろ学んでいた最初の頃、O’funkilloを知った時は「なんだこれは!?」って感じで、とても驚いた。なぜならO’funkilloはファンクとフラメンコ、つまりスペイン特有のスタイルをミックスしているバンドなんだ。
(筆者注:彼らは自分たちの音楽スタイルを【Funky Andaluz Embrutessío 最高に骨太なアンダルシア・ファンク】と表現している)
ファンク、フラメンコ、ロック、メタルの融合だね。そしてPepe Baoはスペインではとても有名な存在なんだ。例えば、アメリカでのJaco Pastoriusのような感じかな。
――なるほど! それは分かりやすいですね。
Vincen:彼はスラップを弾いてもソロを弾いても非常に上手いし、そして本当に素晴らしいベースラインを弾くんだ。だから僕は、彼の曲を自分の部屋や、バンドでたくさん弾いていたのを覚えているよ。
それだけじゃなくて、実は彼とは何度も会う機会があった。彼は本当に素晴らしい人なんだ! 気さくな人でね。今でも、彼は僕にとってビッグ・キングなんだ。彼からは本当にたくさんの影響を受けた。
もし君や、このインタビューを読んでくれる人たちがPepe Baoに興味を持ったら、是非聴いてみてほしい。彼は本当に、スペインのアメイジングなベーシストなんだ。そして、O’funkilloも素晴らしいバンドだよ。
彼らはスペイン語でファンクをやるんだ。これは本当にすごいことでね。なぜなら英語で歌うとフロウがあるように感じやすいけど、スペイン語ではそう簡単じゃないんだ。グルーヴするような言葉をうまく見つけないといけない。彼らはアンダルシア出身だから、スペイン語の中でもまた違う響きを持っている。だからすごくいいフロウなんだ。
O’funkilloやPepe Baoは、スペインにおけるファンク・フュージョン・ロック・メタルのクロスオーバーを象徴する存在なんだよ。
――では、あなたのベースラインの発想はどのように生まれているのでしょうか?
Vincen:そうだね。たとえば家で作曲しているときに、「このパートには何が必要だろう?」と考えることがあるんだ。そんなとき、僕は口で歌いながらベースラインを考えることがある。もちろん重要なのはベースラインなんだけど、実際に歌ってみることで、曲とより深く繋がれる感覚があるんだよ。
だから、何かを作ったり弾いたりしていて、「もう少しフロウがほしい」とか「何かが足りない」と感じたときには、歌うことを意識すると、グルーヴや音楽そのものをより強く感じられるんじゃないかと思っているんだ。
――ちなみに、歌うことと言えば、あなたのライブやアルバムはバラードのプレイも素晴らしいと思います。バラードのフレーズやプレイの影響元は誰でしょう?
Vincen:そうだね、ありがとう。僕のバラードのプレイは、Jaco Pastoriusや、Victor Wootenなどの影響が強いかな。
――なるほど、Marcus Millerはどうでしょう?
Vincen:そうだね! 彼もキングだね。
――ベースラインの話をもう少しさせて下さい。あなたが、Eli Soares の「Os Anjos Te Louvam」が一番好きなベースラインだと話している記事を読みました。
このベースラインはグルーヴ感が最高だと話されていましたが、確かにグルーヴ感が素晴らしい一方で、James Jamersonのようにフレーズがかなり自由に歌っている感じも素晴らしいと思います。このラインのどんなところが素晴らしいと思うのか、改めて教えてください。
Vincen:OK。このベースは、Junior Braguinha(ジュニア・ブラギーニャ)がレコーディングしたんだ。
――なるほど、そうだったんですか! あなたに最近影響を与えているブラジルのベーシストですよね。
Vincen:そうだね。彼は僕の大好きなベーシストの一人で、彼と演奏するチャンスもあったよ。
Junior Braguinhaは本当に素晴らしい人で、モンスターみたいに力強く弾く。彼のプレイは常に素晴らしい。そしてこの曲、「Os Anjos Te Louvam」のベースラインは本当に優れていると思うよ。歌心もあるし、スペースや息継ぎのような感覚もしっかりと意識している。サウンドはクラシックなベースサウンドで、大らかなフィールもある。もちろん音使いも素晴らしい。僕は本当にこのベースラインが大好きなんだ。
――ベーシストの名前が沢山出てきたので……このインタビューが掲載される私のnoteはVulfpeckのファンが数多く読んでいるので、Joe DartやVulfpeckについてあなたがどう思っているかを聞かせていただいてもよろしいでしょうか?
Vincen:もちろん、Joe DartやVulfpeckは大好きだよ。Joe Dartのプレイも最高だ。彼の音使い、サウンド、そしてカラーは素晴らしいよね。彼はミニマリストなベーシストだと思う。
――仰る通りですね。
Vincen:彼はとても多くのファンクやソウルの引き出しを持っているね。そして彼の強みはグルーヴ、音使い、そしてサウンドだと思う。とても個性的なサウンドだ。
そしてVulfpeckはトップレベルのミュージシャンでありながら、人々が楽しめる音楽を作っているのが素晴らしいよね。とてもポップなファンクだ。ステージでも、同じメンバーがドラムを叩いたりキーボードを弾いたりして、すごく見応えがある。
彼らは最高だし、そしてJoe Dartは今の時代の素晴らしいベーシストの一人だ。いつか一緒に演奏できたらいいなと思っているよ。
――ありがとうございます。前回のインタビューであなたは「僕自身はベースを聴かせたいというより、音楽を作りたいと思っている。僕は今、自分自身のスタイルをちゃんと見つけていく段階なんだ」と語ってくれました。
あなたは既に、スタイルは確立されていると言ってもいいような素晴らしいプレイヤーですが、これからさらにどのような方向へ進んでいきたいと思っているのでしょうか?
Vincen:そうだね。僕は今はベーシストとして、動画やライブで知られている状態だと思う。でも、このところ3年間、僕は自分のプロジェクトで作曲を続けてきた。そして僕が本当に求めているのは、本当にみんなを楽しませて、深くみんなと繋がることなんだ。
つまり僕は、みんなに僕の音楽、バンド、曲を通して僕のことを知ってもらいたいと思っている。
僕のプロジェクトはジャズ・フュージョンで、ミュージシャンそれぞれが即興する部分がある。だからみんなにライブに来てもらって、バンドでの演奏や曲を聴くことで、僕やバンドと繋がってほしいんだ。僕のベースのテクニックや、ソロでの動画を知るだけじゃなくってね。
そうすれば、それはただ音楽を聴いたっていう時間だけじゃなく、より深くみんながエネルギーのようなもので繋がれる体験になると思う。もちろん音楽体験なんだけど、でもそれ以上の体験になると思うんだ。それを目指していくのが僕の進む道だと思っている。
――では、若いミュージシャンへのアドバイスをお願いします。
ちなみにCory Wongは「偉大な先人たちを研究すること」「自分だけの個性を見つけること」
Joe Dartは「できるだけ多くの経験豊富なミュージシャンと演奏すること」「楽器に何時間も向き合うことに勝る近道はない」という風に語ってくれました。あなたのご意見も是非聞かせていただきたいです。
Vincen:OK。僕のところにはいろんな人が、「あなたのように、もっと速く弾くにはどうすればいいか?」と言ってくるんだ。
でも、それに対しての僕のメッセージは「リラックスして」なんだよ(笑)。
君は、自分の道を進むんだ。そしてとにかく、楽しんだほうがいい。ベースを持ったとき、君は楽しむ必要があるんだ。それが成長に繋がる。
そして、自分が感じていることをやるべきだ。情熱を持って、でもリラックスして。
そして、自分より上手いミュージシャンと一緒に演奏すること。それが一番学べるからね。ライブをやって、音楽を聴いて、少しずつ成長していけばいいんだ。
――最後に、改めて日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
Vincen:日本のみんなへ! 僕は日本のお客さんが大好きだよ。去年の来日の時も、まるでホームに帰ってきたかのような安心感があった。もちろん今回の来日も最高の体験だ。君たちは、僕の音楽を本当に愛してくれている。ライブに来てくれて、いつも応援してくれて、本当にありがとう。
また次のライブで会えることを願っているよ。日本のみんなと一緒にいられて、とても幸せだ。日本は僕にとってトップクラスの国の一つだからね。本当にありがとう!
――ありがとうございました! また会いましょう!

Thank you so much Vincen!!!
インタビュー&著:Dr.ファンクシッテルー

宇宙からやってきたファンク博士。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。「KINZTO」と並行して、音楽ライターとしても活動しています。
過去の他のVulfpeckメンバーのインタビュー
■バンド公認のVulfpeckファンブック■
■ファンクの歴史■
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