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短編105「バニーガールズの盆踊り」 暴走バニーはみんなをハッピーにする #8 〜商店街創生編〜

登場人物紹介(最新話を元に構成・更新しています。そのため本編のネタバレとなる場合がございますので、閲覧にはご注意ください)

あらすじ
バニーガールのコンセプトカフェ、『Lop-Ear Café(ロップイヤーカフェ)』。夏が近づき、町内会長がやってきた。町内会の要望に応えようとするが、案の定ニーナは暴走して……?

 これが私たちのやり方!
 盆踊りだろうがブレイクダンスだろうが、熱い魂を揺らすダンスは、すべてを巻き込むんだYO!

 夏も近づいたある日。栄門町さかえもんちょう町内会長の福武が来店した。見た目は身長140センチほどの小さなお爺さんだったが、町内会に対して真摯に向き合っているということをレナは知っている。
「来月の地域の納涼会で、ぜひ華やかな出し物をお願いしたいと思っている。若い力を町内会にも注ぎ込んで欲しい。ぜひ、ロップイヤーカフェさんにもステージ出演をお願いしたいと思っている」
 その要望に素直に嬉しいと思いながらも、レナは冷静に確認を取り始めた。
「会長、光栄です。ただ、私たちはバニーガール姿での出演でよろしいのでしょうか? 公の場では風紀の問題などが生じそうなので、明確にしておきたいです」
 それに福武は豪快に笑う。腹の底からの笑いに、レナは目を丸くした。
「結構、結構! 細かいことは良いではないか、熱意があれば! 若い力は、地域の宝だ。ぜひともお願いしたい」
 福武の豪快な笑いに、レナは頭を深々と下げた。

「ステージですか! プロとして、全力でハッピーを届けます୧(⑅˃ᗜ˂⑅)୨」
 その話を聞いて、ユメは嬉しそうに答えた。両手をぶんと振りかざしてガッツポーズを決め、やる気満々といったところである。
「よっしゃ、祭りだ! お祭りだ!」
 右手をぐいと握りしめるのはニーナ。これは予想通りである。
「ba、バニーガールは芸術。地域の皆さんの魂を揺さぶる作品にしてみせます」
 アリスも何故か乗り気だ。周囲に流されやすいからかもしれない。

 そんなわけで、バニーガールズは納涼会に参加することになったのだった。

 ……という流れになったものの盆踊りの経験者は誰もおらず、バニーガールズは動画を見ながら練習を始めることになった。夜の公園の片隅に集合してとりあえず練習を開始する。
 ユメは動画を0.25倍再生して型を研究するがガチガチすぎ。アリスはバレエの優雅さを取り入れる。ニーナは全てのステップをブレイクダンス風にアレンジする。
 つまり、統一性などない状態だった。
「ちょっと、一度ストーップ!」
 たまらずレナが一括した。
「みんな聞いて。盆踊りというのは元々、お盆のときに先祖を供養するために始まった、集団舞踊と言われているわ。つまり、全員の息を合わせる必要があるの」

「オッホッホ……そのような実力で納涼会を盛り上げることが、できるのでしょうかねえ?」
 突然の声に全員が振り向く。そこには、婦人会の高田さんと他のメンバーたちが、腰に手を当てて立っていた。
「あらまあ、最近の若い子は大胆ね。そんな随分と可愛い格好で、皆さんには刺激が強すぎないかしら?」
「ご心配には及びません。バニーガールという衣装は、米国特許商標庁によって世界初の商業用制服として登録されています。つまりこれは、プロフェッショナルなエンターテインメントを保証するという証なのです」
 レナの説明に、婦人会一同は一瞬たじろいだ。そこに追い打ちをかけようと、ニーナが立ち上がる。
「そうなんです。私たちは、みんなをハッピーにするプロなんです!」
「――いいでしょう、そこまで言うのなら」
 高田は少し視線を落とす。その瞳がきらりと光ったような気がした。
「私たちの本気の盆踊りと、あなたたちの踊り。どちらが祭りにふさわしいか勝負しましょう」
「もちろん! 勝負よ!」
 脊椎反射でそう言うニーナに、レナは頭を抱えて「あ〜あ……」と呟いた。

 あっという間に時間は過ぎて、翌月。納涼会当日を迎えた。
 かつて城下町や宿場町として栄えた栄門町。宿場町の中心であったと言われる広大な敷地に、栄門町中央公園はあった。
 先攻は婦人会。安定感と伝統を体現する美しい盆踊りに、会場は拍手に包まれた。
「さすがね……」
 その踊りを見ていたレナは、静かに呟いた。

 ――勝てるのだろうか?
 あまりにも正統派な踊りに、自分たちが勝てる要素が見当たらない――。

「やるしかない!」
 ニーナが叫んだ。そうだ、もう考えている時間などない。

 やるしかないのだ。

 ステージ上にニーナを中心に、ユメとアリスとレナが並んだ。納涼会にバニーガールというのはあまりにも不思議な光景だったが、観客は色めき立ち、カメラのフラッシュの数が明らかに増えた。音楽が始まり、全員が練習した通りの踊りを始める。
「盛り上がってきたぁ!」
 ニーナは熱狂に身を委ね、どんどんと動きが大きくなっている。ここまでは想定内だと、レナは思っていた。
「プロとして、完璧なステージを目指します!。゚゚(*´□`*。)°゚。」
 ユメは練習通りの完璧な踊りを目指すが、ニーナの動きの大きさにはそんなことなど関係ない。どん、と激しく激突する。だがニーナは即座にユメを抱きかかえてフォローした。

「地域のみなさーん! これがロップイヤー流の、生の熱によるハッピーだよ!」
 マイクを掴んでニーナが心の叫びを伝え出す。
 ニーナは音楽のリズムに合わせて、身体を揺らしながらステージの中央へ飛び出す。黒いバニースーツが全ての照明を吸い込むようなその光景に、観客の視線はニーナに集中した。

 その視線を集めたままニーナは、トップロックのブロンクステップで、腰から下を回しながら高速のステップを見せつける。それから重力を無視したヘッドスピンのパワームーブ。
 ニーナの技は観客の度肝を抜き、ステージ全体に熱狂の渦を生み出した。彼女のストリートの熱と生命の爆発そのものなパフォーマンス。それは単なる技の披露ではなく、かつてストリートで『死の熱』を乗り越えた彼女の、剥き出しの生きた熱の叫びだった。
 それは観客の魂の奥底に眠る熱を強制的に揺さぶった。彼女の動きは盆踊りのリズムを内包して超越して、その生命の熱は老若男女全ての心を鷲掴みにしている。その命の熱は、会場のすべての心の砂漠を潤す、熱帯のスコールのような熱流を会場に浴びせていた。

「みんなー! 生きてるかーっ!?」
 ニーナのコールに、戸惑っていた観客たちも「おおおおー!」と熱狂的なレスポンスを返す。
「もっと熱くなれんのかーっ!?」
「なれるぞー!!」
 会場は熱狂に包まれて、観客たちは一斉に声を上げた。
「ウサギは寂しいと死んじゃうんだぞー!?」
「おおおおー!!」

 そこでまさかの乱入。婦人会のメンバーたちが、会長を先頭にステージに飛び出してくる。
「あんた、凄いねえ! 魂が震えるよ!」
 高田は浴衣姿でニーナのブレイクダンスに合わせてアドリブの盆ダンスを見せつける。地域の伝統とストリートの熱が融合して、予想外のダンスバトルが始まる。二人は微笑みながら、お互いのダンスに対抗して、呼応する。

「栄門町のみんな! これからも熱い魂を忘れるなよ!」
 ニーナの最後の叫びで、会場の熱気は最高潮を迎えた。会場は怒涛の歓声に包まれ、その中でニーナと高田は熱い握手を交わす。ユメやアリス、それに婦人会のメンバーが二人を取り囲みながら跳ね回っていた。

「……まあ、こんな感じでいいのかもね……」
 舞台袖でその光景を見ながら、レナは呟いた。

「……盆踊りとは……?」
 隣で福武が、ぼやくように呟いていた。


注記
この物語は筆者の想像に基づいたフィクションであり、登場する人物、団体、および物語上の設定はすべて架空のものです。作中に登場する名称などは物語を彩るための舞台装置として用いており、現実の出来事や人物とは関係がありません。


最後までお読みいただきありがとうございました。
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また次の作品でお会いできることを楽しみにしております。

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