ワウペダルの歴史 ― トランペットからロック、そしてイタリアのカオスへ
ギターを弾く人なら一度は踏んだことがあるか、少なくとも見たことはあると思います。
ワウペダル。
踏むと
「ワウワウ」
と喋るような音が出るあのエフェクターです。
でもこのワウ、歴史を調べてみるとかなり面白い。
というか、途中からかなりカオスになります。
今日はその話です。
ワウの始まりはトランペット
最初のワウは
Vox Clyde McCoy Wah

というモデルでした。
名前にある
Clyde McCoyは、実在のトランペット奏者です。
この人はトランペットにミュートを付けて
「ワウワウ」
と歌うような音を出す奏法で有名でした。
それを
「ギターでも出来たら面白いのでは?」
という発想で生まれたのがワウペダルです。
つまりワウは
トランペットの真似から始まったエフェクター
なんですね。
ロックギターを変えてしまった男
ワウを有名にした人物は、ほぼ間違いなくこの人です。
Jimi Hendrix
ジミヘンドリックス。
ワウを踏みながらギターを歌わせるプレイは、完全に彼の代名詞になりました。
「Voodoo Child」のイントロなんて、
ワウの教科書みたいな演奏です。
この頃ワウを使っていたギタリストは他にもいて
Eric Clapton
Jimmy Page
Jeff Beck
など、60年代ロックのスターが揃っています。
この時代、ワウは
サイケデリックロックの象徴
でした。
ところがここから話がややこしくなる
ワウの歴史が面白くなるのはここからです。
最初のVoxワウは
アメリカで販売していた会社
そしてイタリアの製造工場
という関係で作られていました。
この工場が
Jen Elettronica
というイタリアのメーカーです。
ところが、ここで会社の契約関係がこじれます。
結果どうなったか。
同じ工場から
Vox Wah
Cry Baby Wah
など
違うブランドのワウが出てくる
という状態になります。
Cry Baby誕生
この流れで生まれたのが
Cry Baby Wah
です。
Cry Babyはその後
世界で一番有名なワウ
になります。
ただしこの頃はまだ
イタリアのJen工場製
でした。
つまり
VoxもCry Babyも
実は同じ工場で作られていた時期があるんです。
イタリア時代のカオス
そしてここがワウ史の一番面白いところです。
イタリア製ワウは
めちゃくちゃ個体差があります。
同じモデルでも
部品が違う
回路が微妙に違う
音も違う
ということが普通に起きていました。
つまり
同じワウなのに音が違う
という状態。
現代の機材からするとかなり不思議ですが、当時はそれが普通でした。
そのためビンテージワウの世界では
「この個体は当たり」
みたいな話がよく出てきます。
ワウの音を決める部品
ワウの音を決める重要な部品があります。
それが
インダクター
です。
有名なのが
Fasel
Halo
といったもの。
この部品によって
ワウのキャラクターがかなり変わります。
だからビンテージワウは
「Faselだから良い」
「Haloだから特別」
みたいな話になるわけです。


90年代のワウ復活
70年代以降、ワウは少し落ち着きます。
しかし90年代になると再び脚光を浴びます。
この頃の代表プレイヤーは
Tom Morello
Kirk Hammett
John Frusciante
この頃にはCry Babyが完全に定番になります。
ワウは実はかなり変な機材
こうして歴史を見てみると、ワウはちょっと変なエフェクターです。
トランペットの音を真似して作られ
ロックで大流行し
会社の分裂でブランドが増え
イタリアの工場でカオスな時代を迎え
そして今もギタリストに踏まれている。
普通のエフェクターの歴史とは、ちょっと違います。
まとめ
ワウの歴史をざっくり並べると
トランペット
↓
Vox
↓
ジミヘン
↓
Cry Baby
↓
イタリアのカオス
↓
そして現在
という流れになります。
こうして見ると、ワウって実はかなり変な機材です。
トランペットの音を真似して生まれ、
ロックの象徴になり、
会社の事情でブランドが分裂し、
イタリアの工場では個体差だらけの時代を迎える。
それでも、いまだにギタリストは踏み続けています。
踏むと
「ワウワウ」
と喋るだけのエフェクターなのに、
なぜかロックの歴史のど真ん中にいる。
ワウって、そういうちょっと不思議な機材なんだと思います。
ちなみに僕は最近、イタリア製の古いワウを一台手に入れました。
その話はまた別の機会に書こうと思います。
