【創作大賞2025】リリがくれた魔法のカツラ 第3話 #オールカテゴリ部門
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第3章 わたしの髪の毛、ぜんぶあげる!
リリがあるいていくと、木の葉にかこまれた、不思議な小さなびよういんが見えてきました。
窓はまるく、木の葉がかべにからみついています。
かんばんには、ちいさな字でこうかいてありました。
「アルのびよういん」
リリはドキドキしながら、そっとドアをあけました。
「こ、こんにちは・・・」
びよういんの中には、ふわふわのいすと、大きな鏡がずらり。
木の棚には、リボンやハサミ、ブラシがきちんと並び、やさしい香りがただよっています。
天井からは木のつるであまれたランプがぶらさがり、窓からさしこむ日差しが床をぽかぽか照らしていました。
鏡のそばには、小さなかびんやカラフルな毛糸がはいったかご。
まるで森の中の秘密のアトリエのような、心があたたまる場所ーー
その奥の鏡の前に、つやつやとしたグレーの毛の、小さなリス・アルが立っていました。
めがねを鼻にのせ、大きなしっぽをピンと立てて、くるっとふりかえります。
「・・・ん?人間?」
アルは、リリをじっと見つめました。
「この店は、動物しか来ないはずだが・・・」
リリはせすじをのばして、大きな声であいさつします。
「こ、こんにちは!わ、わたし、リリ!きょうはママのためにここに来たの。ママが、病気で髪の毛がぜんぶなくなっちゃって・・・ママにかわいいカツラをつくってほしいの!」
リリがそういうと、アルはおどろいたように目を大きくしました。
そして腕をくんで、ちょっぴり困った顔で、リリを見つめていいました。
「・・・なるほどね。ママのために、ここまでやってきたのか・・・」
リリはコクンコクンとうなずきます。
「トンボ森の入り口で、モグラと小さな木にも会ったの?」
リリはまたコクンコクンとうなずきます。
「ミンゴに気に入られたか・・・」
アルはすこしかんがえた後、静かに口をひらきました。
「カツラをつくるにはね、ほんとうの髪の毛がたくさんいるんだ。ふわっとして、つやがあって、においのないやつ。でも君のママにはもう髪の毛がないんだろう?」
リリはまたコクンコクンとうなずきます。
「・・・それじゃ、むずかしいな。髪の毛がないと、カツラはつくれないんだ」
リリはぎゅっとこぶしをにぎり、深く息をすいこみました。
「じゃ、じゃあ、わたしの髪の毛をつかって!ぜんぶきってもいいから、ママにカツラをつくってあげて!」
アルはおどろいたようにリリを見つめました。
「ぜんぶ・・・?それはつまりぼうずになるんだよ?本当に、それでもいいの?」
リリは大きくうなずきました。
「いいの!ママが笑ってくれるなら、リリ、ぜんぜんへいきだよ!」
そういってリリは、涙をこらえながら、まっすぐアルを見つめました。
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【作者のプロフィール】
出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、これまでに世界中の絵本を年間120冊以上、トータルで700冊ほど、娘と一緒に読み重ねてきました。
絵本の読み聞かせを通して「娘にどんな物語を(本)語ってあげたいか」、また「どんな言葉を残したいか」を考えるうちに、絵本に関係なく、「私が娘に伝えたい事は?」という気持ちが大きくなり、自ら児童文学を書き始めるようになりました。
私自身はこれまで、国際線CAや通訳、企業コンサル、飲食のブランディングなど、さまざまな仕事や起業を経験してきました。
その中で常に大切にしてきたのは、「異なる文化や人を理解し、自分や他者を受け入れること」でした。
そしてハーフである娘の成長を見つめながら、これからぶつかるであろう困難に立ち向かう為に、母親ができる事を模索しています。
これからは、子供達が成長の過程で苦しんだり悩んだりしなくていい様に、自分の周りの人との“違い”を肯定し、“他人と比べずに自分を愛する”事の大切さを語る様な、そんな児童文学を子どもたちに届けていきたいと思っています。
読んでくださった方に、優しい気持ちが届けば幸いです。
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