元請けに突きつける、3つの問い。〜下請けの「安売り」は自己責任ではない〜
はじめに
先月、ある会社の経営者と話しました。
循環型経済のど真ん中にいる会社です。社会に必要とされている事業をやっている。
でも、原料の争奪戦に巻き込まれ、製品は買いたたかれ、利益が出ない状態が続いていました。
「良いことをしている会社ほど苦しい」
その言葉が、ずっと頭に残っています。
この記事は、私がここ数週間で書いてきた構造論の続きです。
今回は、その延長線上にある話です。
構造の歪みは、会社の中だけでなく、会社と会社の間にもあります。
むしろそちらの方が強固です。
「あなたがその値段を出したんでしょ」という詭弁
こういう話をすると、必ず出てくる反応があります。
「でも、その値段を出したのはあなた自身でしょう。自己責任ではないですか」
一見、正論に聞こえます。
でも、これは詭弁です。
相見積もりで最安値を出さなければ仕事を失う。
固定費は毎月かかる。「嫌なら他に頼む」という言葉がちらつく。
そういう状況の中での価格提示は、選択の形をした強制です。
「自分で決めた値段」という言葉は、この構造を見えなくさせるための言語です。
誰も悪くないのに、全員が苦しい
では、元請けが悪いのか。私はそうは思いません。
調達担当者は悪人ではありません。相見積もりでコストを下げることが評価される仕組みの中で、正しく動いているだけです。
下請けの原価構造を知らないまま、KPIに従って動いている。
下請けの線で見れば、明日の資金繰りのために安値を出さざるを得ない現実があります。
元請けの線で見れば、原価を知らないまま「最安値=適正価格」と判断している現実があります。
場の線で見れば、デフレの30年が「安くて良いもの」という価値観を当たり前にして、コスト圧力を自動的に下に流すTier構造が出来上がっています。
誰も悪意を持っていない。でも全員が苦しい。
これが構造の問題の定義です。
構造は、正しさでは変わらない
「適正価格を払ってください」
この訴えが、10年通らなかった現場を私は知っています。
倫理の訴えで構造は変わりません。変わるのは、元請けが自分自身のリスクとして認識した瞬間だけです。
だとすれば、交渉の起点を変える必要があります。
「うちは正当な価格をもらえていない」という訴えから、「あなたの会社にとってのリスクは何か」という問いへ。
元請けに突きつける、3つの問い
①「その部品の原価を、言えますか?」
最安値が適正価格だという錯覚があります。
でも、原価を知らない相手に「安すぎる」と言っても届きません。
こちらから原価を開示して、値決めの土俵を作ることが最初の一手です。「うちがこの値段でしか作れない理由」を数字で示す。
感情の訴えではなく、事実の提示です。
②「その安さは、止まりませんか?」
以前サイゼリヤの記事を書きました、
サイゼリヤは増収増益の優良企業です。
それでも2026年、鶏肉の供給不足でメニューを販売休止せざるを得なくなりました。
「安く調達できること」と「安定して調達できること」は、別物です。
安さだけに依存した調達は、外部環境が変わった瞬間に物理的に止まります。これは某企業の話ではなく、どの調達にも潜んでいるリスクです。
③「弊社が被災したら、御社のラインは動きますか?」
2016年の熊本地震で、多くの大手メーカーのラインが止まりました。止まったのはTier1ではなく、Tier2・Tier3の下請けです。
下請けに利益を残すことは、元請けにとって自社のBCP投資です。
サプライヤーを守ることは、自社のサプライチェーンを守ることと同じです。
構造を見ることは、恨みから解放する
この3つの問いは、元請けを責めるためのものではありません。
元請けの担当者が「自分のリスク」として腹落ちした瞬間、交渉の構造が変わります。被害者と加害者の構図ではなく、リスクを共有するパートナーとしての関係に変わります。
自己責任と思い込んで自分を責める必要はありません。元請けの個人を恨む必要もありません。
見るべきは構造で、構造には崩し方があります。
最後に
今回の3本の記事を通じて、私が伝えたかったことは一つです。
個人の努力では復活しない。組織の中の構造が壊れている。そして会社と会社の間の構造も壊れている。
でも、構造には崩し方があります。
今回の支援は、私にとっても実証の場です。
社外から構造に触れることで、本当に何が変わるのか。
3つの問い以外に、何が必要なのか。
現場で試しながら、答えを見つけていきます。
そしてもう1つ。
中の人間はこの構造に触れられません。
外の人間だから触れられる。
それがYEES FACTORYが存在する理由であり、日本の製造業を復活させるための最初のステップです。
YEES FACTORY|治部康臣(やすにぃ) 製造組織の構造改革者
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