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黒パグAIショートショート ⑧ #しろくま文芸部 お題 猫を飼う


こんにちは黒パグです🐾
GWも緊急対応で呼び出しがありつつ徹夜で業務をこなして、その帰り道。しろくま文芸部のお題について考えていました。
今は黒パグしかいませんが実家には二匹の猫がいました。猫飼いの皆様にはご理解していただけると思いますが、あの愛くるしい姿は癒される反面、人間は猫の下僕に過ぎないことを痛感した事を思い出しつつ筆を走らせました。
今回のショートショート 黒パグ執筆 100% 手打ち 画像ノートブックLM100%です。 誤字脱字誤用はコメントで教えてください。

以下本文です。


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飼育
 男は猫を飼うことにした。少なくとも、男はそう思っていた。

 きっかけは、覚えていない。気がつくと、部屋に猫がいた。

茶色と白のまだら、瞳は黄色い。男は餌を買いに行き、トイレを買いに行き、爪とぎを買いに行った。

週末はそれだけで終わった。それでも男は、不満を持たなかった。

 猫は気まぐれだった。男が呼んでも来ない。来ないと思っていると、深夜に枕元で鳴く。男は起きて、餌をやる。眠い目で皿を洗う。皿を洗いながら、なぜ自分はこれをしているのだろう、と一度だけ思った。だが、思っただけだった。


 猫はソファを爪で削った。男は新しいソファを買った。猫はそれも削った。男は、削られないカバーを買った。猫はカバーをくわえて持ち去った。男は、別のカバーを買った。

 春が過ぎ、夏が過ぎた。

 秋のある朝、男は冷蔵庫を開けて、ふと手を止めた。猫の缶詰が、隙間なく並んでいた。三段、ぎっしりと。自分の食べるものは、奥に押しやられて見えなかった。

 男は、何かを思い出しかけた。だが、思い出さなかった。

 冬になった。男は、毛布の上で丸くなる猫を見て、満ち足りた、と感じた。形容しがたい、しかし確かに、満ち足りた、と。猫はゆっくりと尻尾を振った。男はコーヒーを淹れに立った。

 夜中、男は何度も起こされた。鳴き声で。物音で。膝の上で寝られて。男は寝不足になった。会社では、ぼんやりすることが増えた。だが、家に帰って猫を見ると、それは消えた。

 ある日の夕食、男は皿を見て、これは自分の分だったか猫の分だったか、と一瞬迷った。匂いを嗅いでみた。よく分からなかった。男はそれを猫の皿に移した。猫はそれを少し舐めて、離れた。男は冷蔵庫を開けたが、自分のための何かは、もう、見つからなかった。

 あるとき、男は鏡を見て、自分の顔を見つめた。少し痩せた、と思った。それから、ずいぶん前から痩せている気がした。いつから痩せているのだったか。鏡の中の男は、首をかしげていた。

 ある夜、男はベランダから空を見上げた。月が出ていた。ふいに、自分はずいぶん長くここにいる、という気がした。どこから来たのか、思い出そうとした。思い出せなかった。男は部屋に戻った。猫が振り返って、男を見ていた。男は、頭を下げた。なぜ下げたのかは、分からなかった。

 翌朝、男はいつも通り、餌をやり、トイレを掃除し、出勤した。会社の名前を、エレベーターのボタンを押してから思い出した。だが、それも、すぐにどうでもよくなった。猫の缶詰が切れかけていた。帰りに買って帰らなければ、と男は思った。

 すべては良好だった。

 *  *  *

 地下三階の管制室で、白衣の職員が画面を確認していた。
 壁一面のモニタには、無数の部屋が映っていた。それぞれの部屋に、男が一人と、猫が一匹。職員は、その一画を拡大した。

 ——個体番号7234、観察記録更新。被飼育体は本日も飼育環境に対し良好な反応を示しています。給餌、排泄処理、夜間の鳴声反応、いずれも基準値内。栄養状態、若干低下傾向。

 ——許容範囲か。

 ——範囲内です。被飼育体は、自身の摂食より飼育対象への給餌を優先しております。良好な兆候かと。

 ——管理者は?

 ——順調に飼育されています。なお、当該個体は自らを飼育者と認識した状態を継続中。前回の認知補正以降、安定しております。

 ——結構。次の補正は来春で。

 職員はモニタを切り替えた。次の部屋でも、男が一人、猫の皿を洗っていた。その次の部屋でも、男が一人、猫のために窓を開けていた。

 画面の中で、男は満ち足りた顔をしていた。
 膝の上で、猫が、こちらを見ていた。

飼育 了

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