フランメというミステリ『葬送のフリーレン』
こちらは「女神の石碑編」を前提にした考察です。『葬送のフリーレン』未読の方は、最後に紹介用の記事をリンクしていますので、そちらを読んでいただけると嬉しいです。アニメ版公式HPを見ても食指が動かないという方は、本作を「SFミステリ」だと思ってもらえると良いかも知れません。『葬送のフリーレン』は、一般に流布されているイメージと、しっかり読み込んだときの印象とが、かなり異なる作品になっています。
さて。
フリーレンを育てたのはフランメですから、フランメは魔王討伐の影の功労者であると言えます。
しかし、フランメは決してそれだけの存在ではありません。
フランメは1,000年先の未来を想定して、フリーレンのために「フランメの手記」を用意していました。
フリーレンのエンデ(オレオール)への旅(実はこれも「魔王討伐の旅」の一部です。興味のある方はマガジンから別記事を参照してください)の端緒となるのが「フランメの手記」です。この手記があったからこそ、ハイターとアイゼンはフリーレンの旅の目的地をエンデに設定することができました。

そして、そもそものフリーレンとヒンメルたちとの出会いを作ったのはフランメがフリーレンに教えた花畑を出す魔法です。
このように、フランメは1,000年も前の「過去の人」であるはずなのに、なぜかヒンメルたちの魔王討伐の旅の重要なポイントに深く関わっているのです。

これらの出来事は、本当に「きっとこれはただの偶然に過ぎないこと」なのでしょうか。偶然にしてはできすぎていると感じます。
第一、これは偶然だと何の疑いもなく信じているのなら、フリーレンはシンプルに「これは偶然だけれども」と言うはずでしょう。
「きっと」、「ただの」、「過ぎない」と幾重にも強調するということはフリーレン自身も何かしら偶然を超えたものを感じていることの証左です。
となれば、読者としてもこの「偶然」を疑ってみてよいでしょう。

フリーレンは第7話において1,000年もたったのに自分は未だにフランメの掌の上の存在だと感じていますが、最新話の「帝国編」においても、全体像をつかめない大きな計画の中で自分が「駒」として動いているという漠然とした不安感をもっています(第140話「ゼーリエにはどんな未来が見えているの?私の役割は何?」)。
フランメの掌の上にいるのはフリーレンだけではありません。ヒンメル、ハイター、アイゼンも魔王討伐のためにフランメに導かれるように行動しており(フリーレンと出会い、フランメの手記を探してフリーレンをエンデへ向かわせた)、彼女の掌の上です。
フランメと対等の俯瞰的な視野を持って渡り合っているのはゼーリエと魔王だけです。
仮に、フリーレンが「魔王討伐を巡って駆け引きをするゲーム」の駒だとすれば、ゲームのプレイヤーはフランメとゼーリエと魔王です。(フランメとゼーリエは決して敵対しているわけではありませんが、魔王討伐を巡って微妙な同盟関係にあります。魔王はフリーレンのタイムリープが自分の敗北条件だと気付いており(このことは女神の石碑編での魔族側の目的からわかります)、プレイヤーの資格があります。フリーレンはフランメとゼーリエの意図をまだ掴めていませんし、ゲームのルール(目的や勝利条件)を朧げにしか把握できていないので、まだプレイヤー席に着く資格がありません)
ここまで見てくると当然、ではフランメとは何者なのか?という疑問が湧いてきます。フランメの存在は『葬送のフリーレン』における魅力的な謎(ミステリ)なので、想像してみます。(私も確たる答えを持っているわけではありません)
まず、「フランメの手記」の記述を丁寧に読み込んでみれば、彼女は時空干渉を行ったことがあり、他の世界(線)を経験していることがわかります。(詳細は下の記事を参照ください)
大陸の遥か北の果て。
この世界の人々が天国と呼ぶ場所
魂の眠る地にたどり着いた。
また、フランメはフリーレンと同じく魔族に全てを奪われて、魔族を根絶やしにしたいほど憎んでいました。
こういった背景と、時空干渉の経験、さらに未来を見通す力、これらを合わせて考えるなら、例えば、フランメはヒンメルたちが魔王討伐に失敗した未来からやってきたタイムトラベラーではないか?という仮説を思い付きます。(あくまでも仮説で、私もこの説に特別な根拠を持っているわけではありません。ただ、こう考えると納得できるところがあるというだけです)
つまり、ヒンメルたちの「魔王討伐の旅」は、魔族によって全てを奪われた幼いフランメが魔王を倒すために過去にタイムトラベルしてゼーリエに助けられたところから始まっているフランメの遠大な計画の一部なのではないか…?
もちろん、これだけで前述した偶然(手記の用意、花畑を出す魔法)を説明できるわけではありません。
あくまでも、1,000年も前の「過去の人」であるフランメがなぜここまで現在に支配的な影響を及ぼしているのか?という謎を解くため仮説です。
たとえば、ここまでくると二次創作の範疇になってしまいますが―――ヒンメルがなぜ魔王討伐を目指すのか、その動機ははっきりしていません。魔王や魔族に対して義憤があるのはわかりますが、私憤を感じません。キャラクターの掘り下げがまだ足りていないのです。では、未来からやってきたフランメとヒンメルが出会っていたとしたらどうでしょう。「人類と魔族の戦争は魔族側の勝利に終わり、未来はこんなディストピアになってしまった。魔王を倒して、未来を救って」と幼いフランメに頼まれていたとしたら。
※ちなみに、この二次創作の念頭にあるのは、『シュタインズ・ゲート』に登場する二人のタイムトラベラー・XXXXX(フランメ)と岡部倫太郎(ヒンメル)の出会いです。(ヒンメルは第1話でタイムトラベルをしていると考えています。マガジンから別記事を参照してください)
こんなふうに、フランメは「過去の人」どころか、これからまだまだ活躍しそうなキャラクタです。
フランメの存在は『葬送のフリーレン』における魅力的な謎(ミステリ)の一つになっています。
いろいろと想像してみると、より一層『葬送のフリーレン』を楽しめると思います。
※本文は以上です。以下は『葬送のフリーレン』をお勧めする記事へのリンクです。
※『葬送のフリーレン』をまだ読んだことのない方へ
※アニメ第1期を観た方へ
※「女神の石碑編」まで読んだ方へ
※「とりあえずここまで読めば面白さが分かる」というライン
※『葬送のフリーレン』に関する記事をまとめています。ネタバレありです。
