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「この判断でいいのか」が消えない理由―経営者が決めきれなくなる構造

「本当に、この判断でいいんでしょうか。」

後継者との面談で、何度も聞いてきた言葉です。

投資するか。
採用するか。
新規事業を始めるか。
設備を入れるか。
幹部を任せるか。
見送るか。

経営は常に選択の連続です。

しかし多くの後継者は、
決断するたびに不安になります。

そして、
決めた後も不安が消えません。


会社は赤字ではありません。
社員もいます。
資金繰りもすぐに破綻する状況ではありません。

それでも本人は言います。
「何が正解なのか分からないんです。」
私はこの言葉を聞くたびに思います。

多くの場合、
問題は能力不足ではありません。

むしろ、
経営という仕事そのものが、
正解のない世界だからです。


例えば、
設備投資をするとします。
投資すれば生産性が上がるかもしれない。
しかし借入も増える。

採用するなら組織は強くなるかもしれない。
しかし固定費も増える。

新規事業に挑戦すれば未来は広がるかもしれない。
しかし失敗するかもしれない。

どちらを選んでも、

リスクは残ります。


学校のテストなら答えがあります。
しかし経営にはありません。

だから経営者は迷うのです。


ある後継者もそうでした。

会社は順調でした。
売上も伸びている。
利益も出ている。

しかし本人は苦しそうでした。

理由を聞くと、
こう言いました。

「情報が足りないんです。」


実際に整理してみると、

数字はありました。
会議もあります。
幹部もいます。

しかし、
本当に判断に必要な情報が揃っていなかったのです。


この設備は何年で回収できるのか。
採用した場合の固定費増加はいくらか。
失敗した場合に会社は耐えられるのか。
投資余力はいくらなのか。
どこまでなら挑戦できるのか。


第6回で、
利益ではなくキャッシュを見る話をしました。

実は、

決断できない理由の多くは、
情報不足です。

しかも、
情報量が少ないのではありません。

判断に必要な情報が整理されていないのです。


しかし、
情報が揃っても苦しさは消えません。

なぜなら、
最後は経営者が責任を負うからです。


社員は提案できます。
幹部も意見できます。
銀行もアドバイスします。
専門家も助言します。

しかし、
決めるのは社長です。

失敗した時に責任を取るのも社長です。


だから経営者は、

情報不足だけでなく、
責任の重さにも苦しみます。


ある日、
その後継者に聞きました。
「もし失敗しても会社が潰れないとしたら、その投資をやりますか。」

すると本人は少し考えて、
こう答えました。

「やります。」


そこで見えてきたものがありました。
本人は投資判断に迷っていたのではありません。
失敗した時に説明できないことを恐れていたのです。


社員に。
銀行に。
先代に。
自分自身に。


経営者が決められなくなる理由は、
案件ではないことがあります。

本当は、
自分が背負っている責任の重さに苦しんでいるのです。


そこで私たちは、
もう一度整理しました。

何を目指すのか。
何を守るのか。
どこまでなら挑戦するのか。
何を基準に判断するのか。


すると本人は少しずつ変わりました。

以前は、
「どうしましょうか。」
と言っていた話が、

「私はこう考えています。」
に変わりました。


正解が見つかったわけではありません。
未来が見えたわけでもありません。

しかし、
自分の判断軸ができたのです。


年間400件を超える経営相談に関わる中で感じることがあります。

経営者が決められなくなる理由は、
優柔不断だからではありません。
知識不足だからでもありません。


正解がない。
情報が整理されていない。
責任が重い。


だから苦しくなるのです。


しかし、
その状態から抜け出す方法があります。

それは、
正解を探し続けることではありません。


自分は何を守り、
何を目指し、
何を基準に判断するのか。

それを言葉にすることです。


経営者に必要なのは、
未来を当てる能力ではありません。

自分なりの判断軸を持つことです。


もし今、
「この判断でいいのか」

が頭から離れないのであれば、

必要なのは情報を増やすことではないかもしれません。

まずは、
自分が何を基準に決めるのかを整理すること。

そこから始めてみてください。


次回予告

第8回

社長一人では見えないものがある
― 外部の視点が必要になる瞬間

なぜ経営者は同じ悩みを何度も考えてしまうのか。
なぜ一人で考え続けると判断の質が落ちるのか。

そして、
「熊谷さんほど同じ視点で考えてくれる人はいない」
と言われるようになるまでに何が起きたのか。

外部の視点が経営にもたらす価値についてお話しします。

はじめての方へ

私は主に、
事業承継後の後継者、
第二創業フェーズの経営者、
新規事業責任者の伴走支援を行っています。
経営の正解を提示するのではなく、
頭の中を整理し、
判断基準を明確にし、
経営チームが機能する状態をつくることを重視しています。
売上は伸びている。
利益も出ている。
それなのに不安が消えない。
そんな時ほど必要なのは、
気合いや精神論ではなく、
お金の流れを構造的に整理することです。
もし今、
「投資判断に迷っている」
「資金繰りに不安がある」
「自分の判断基準を持ちたい」
そんな状況であれば、お気軽にご相談ください。
※事例は一部加工しています。実在の企業・人物とは関係ありません。
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熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士

承継・第二創業・新規事業の現場で、経営者が判断できる状態をつくる伴走支援を行っています。

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