売上は伸びたのに、お金が残らない―利益ではなくキャッシュで考える経営
「売上は伸びているんです。
でも、お金が残らないんです。」
後継者との面談で、頻繁に聞く言葉です。
赤字ではない。
受注もある。
社員も忙しく働いている。
それなのに、なぜか資金繰りが苦しい。
設備投資もしたい。
採用もしたい。
新しい取り組みも考えている。
しかし動けない。
そんな状態です。
ある後継者も同じ悩みを抱えていました。
売上は順調に伸びていました。
取引先との関係も良好です。
案件も増えています。
外から見れば順調な会社でした。
しかし本人は言いました。
「利益は出ているはずなんです。
でも、お金が増えないんです。」
実は、この状態は珍しくありません。
多くの場合、
利益とキャッシュを同じものとして考えている
ことが原因です。
利益は会計上の数字です。
一方でキャッシュは、
実際に使えるお金です。
この違いが見えなくなると、経営判断は難しくなります。
例えば、
売上が増える。
すると仕入も増える。
在庫も増える。
売掛金も増える。
人も増やしたくなる。
設備投資もしたくなる。
しかし、
お金が入ってくるのは数か月後
ということがあります。
売上は増えている。
利益も出ている。
それなのに口座残高は減っている。
こうしたことは実際によく起こります。
ある会社では、
売上数十億円規模にもかかわらず、
資金繰りに大きな不安を抱えていました。
表面的には黒字です。
しかし借入返済もあります。
設備投資もあります。
運転資金も必要です。
そこで最初に行ったのは、
立派な中期経営計画を作ることではありませんでした。
資金繰りを見える化すること
でした。
毎月いくら入るのか。
毎月いくら出るのか。
借入返済はいくらか。
税金はいくらか。
設備投資はいくらか。
そして、
最後に自由に使えるお金はいくら残るのか。
これを整理しました。
すると、それまで見えていなかったものが見えてきました。
売上が問題ではなかった。
利益も問題ではなかった。
問題は、
投資余力が見えていなかった
ことでした。
第2回で、
会議が決まらない会社には判断基準がない
という話をしました。
実は投資判断も同じです。
キャッシュが見えていないと、
何を基準に投資を判断すればいいか分からなくなります。
この設備投資は本当に必要なのか。
採用して大丈夫なのか。
新規事業に挑戦していいのか。
M&Aを検討できるのか。
すべて不安になります。
しかし、
「自由に使えるキャッシュはいくらか」
が見えるようになると、議論が変わります。
この投資は何年で回収できるのか。
どれくらい粗利が増えるのか。
失敗しても会社は耐えられるのか。
今やるべきなのか。
半年後でもいいのか。
こうした会話ができるようになります。
正解が分かるわけではありません。
しかし、
判断するための土台
ができます。
その後継者も変わりました。
以前は、
「投資したいけど怖い」
と言っていました。
しかし資金繰りを整理した後は、
「この範囲なら挑戦できる」
と言うようになりました。
重要なのは、
お金が増えたことではありません。
判断基準ができたことです。
年間400件を超える経営相談に関わる中で感じることがあります。
後継者や第二創業の経営者が苦しむ理由は、
売上が足りないからではないことがあります。
むしろ、
使えるキャッシュが見えていない
ことの方が深刻です。
売上が伸びても安心できない。
利益が出ても不安が消えない。
投資したいのに決められない。
そんな時ほど必要なのは、
利益ではなくキャッシュを見ること
です。
もし今、
「売上はあるのにお金が残らない」
「投資したいけど判断できない」
「資金繰りが漠然と不安」
そう感じているなら、
まず見るべきは売上ではないかもしれません。
会社が自由に使えるキャッシュがいくらあるのか。
そこから整理してみてください。
次回は、
「この判断でいいのか」が消えない理由
― 経営者が決めきれなくなる構造
についてお話しします。
はじめての方へ
私は主に、
事業承継後の後継者、
第二創業フェーズの経営者、
新規事業責任者の伴走支援を行っています。
経営の正解を提示するのではなく、
頭の中を整理し、
判断基準を明確にし、
経営チームが機能する状態をつくることを重視しています。
売上は伸びている。
利益も出ている。
それなのに不安が消えない。
そんな時ほど必要なのは、
気合いや精神論ではなく、
お金の流れを構造的に整理することです。
もし今、
「投資判断に迷っている」
「資金繰りに不安がある」
「自分の判断基準を持ちたい」
そんな状況であれば、お気軽にご相談ください。
※事例は一部加工しています。実在の企業・人物とは関係ありません。
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熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士
承継・第二創業・新規事業の現場で、経営者が判断できる状態をつくる伴走支援を行っています。
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