バラと文学と写真論 vol.1 シェイクスピアが見たバラ

『ロミオとジュリエット』(1595年ごろ) ウイリアム・シェイクスピア
シェイクスピアが見たバラ
時代は16世紀
21世紀の現在、植物園で見かけるバラの多くは、
ハイブリッド・ティー・ローズ(HT)
と呼ばれる系統です。
大輪、カラフル、花付きよしで、豪華絢爛です。
欧州の育種家が中国産のバラを交配し、HTを発表したのは、19世紀。
ウィリアム・シェイクスピアの生没年は、1564-1616年で、
『ロミオとジュリエット』が執筆されたのは、1595年ごろとされています。
シェイクスピアが生きた16世紀に、HTは存在していません。
シェイクスピアが見たバラは、現代人が想い浮かべるバラとは異なります。
欧州のバラ、オールドローズ
欧州には、欧州の、バラの原種があります。
それらの交雑グループは、古典的品種という意味で、
オールドローズ
と呼ばれます。
花形は「くしゅくしゅ」、サイズは中輪、花色は通常、ピンクです。
欧州の原種は、花色が白~マゼンタで、交雑種では淡いピンクが出やすい。
HT系統を見慣れた現代人の目には、主張が弱く映るかもしれませんが、
手に収まる大きさで、丸くて、柔らかくて、ピンクというのは、
とてもロマンティックな花容で、現代でもファンは多いです。
[原種]
・Rosa gallica(ピンクかマゼンタ、八重、中輪) 芳香
・Rosa moschata(白、一重) 芳香(ムスク調)
・Rosa phoenicia(白かピンク、一重) 芳香
・Rosa canina(ピンク、一重) 芳香
・Rosa eglanteria(ピンク、一重) なぜか葉が香る
[交雑種]
・Rosa × damascena(ピンク、八重) 特に良い芳香
・Rosa × centifolia(ピンク、八重) 芳香
・Rosa × alba(白、八重) 芳香

ガクに毛が密集し、コケ(moss)のように見えることから、モスローズと呼ばれる。

至近に写っているのは、ダマスクローズ系統のCelsiana。
自然交雑種のほとんどが、ピンク花。
主枝、花茎とも細く、ふんわり茂り、うつむきに咲く。
ローズ香の魅力
オールドローズのもう一つの特徴は、甘い香りです。
欧州原産のバラの多くが、質の良い芳香を持ちます。
甘く、麗しく、みずみずしく、果実のようでも花のようでもあり、
しっとり落ち着き、それでいて、さわやかで、華やかで・・・
語彙不足と責められようと、ローズ香としか表現しようがない。
中でもダマスクローズは、特に香りのよいバラとして知られます。
交雑関係は不詳ながら、少なくとも八重咲きのガリカは含みそうです。
花弁に芳香成分が含まれるので、花びらが多いほうが有利でしょう。
ダマスクローズの発見は、1560年以前とされています。

合成香料が大半になった現代において、天然のバラの香りとして最高級の香料に格付けされる。

シェイクスピアが見ていたのは、おそらく、ピンクの中輪バラです。
そして、そのバラは甘い香りを漂わせていた。
ジュリエットは、花容をさておき、甘い香りに言及します。
トップ画: 映画『ロミオとジュリエット』(1968年)
挿画: Julikis_Seto
本シリーズは、全8回の予定です。
またー(^^)/
[ バラと文学と写真論 シリーズ目次 ]
vol.1 シェークスピアが見たバラ
vol.2 最初の赤いバラ
vol.3 象徴と象徴性
vol.4 秘密の花園に植えられたバラ
[フォトアルバム 薔薇の季節 シリーズ目次 ]
vol.1 バラの庭園
vol.2 原種1 欧州
vol.3 原種2 日本・中国
