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【中学受験 小5】「ぼちぼち行こうか」――家族で見つけた、信じる力の形

「信じる力を信じる」。
そう決めたはずなのに、現実はそう簡単ではありませんでした。
前回の記事では、息子から“親としての在り方”を教えてもらった話を書きました。けれど今回は、「信じたいのに信じきれなかった」僕たち家族の揺れの記録です。

※前回の記事 → 【中学受験 小5】「信じる」ってこういうことか――息子が教えてくれた“親の在り方”




■ 妻の不安と距離

息子が「塾を休む」と言うたびに、妻の不安は募っていきました。

「このまま、塾へ行かなくなるんじゃないか」
「もういっそ、塾を辞めた方がいいんじゃないか」

もともと中学受験に強いこだわりはなかった妻。
それでも、泣きながら癇癪を起こす息子を見続けるうちに、心が限界に近づいていたんだと思います。

直接声をかけると息子が余計に荒れるので、妻は「私からは何も言わない方がいい」と距離を取るようになりました。

でも、その「距離」や「不安」は、息子にもしっかり伝わっていました。




■ 息子の言葉と揺れる家族

ある日、お風呂の中で、息子がポツリと言いました。

「生まれてこなきゃよかった」

胸を突き刺す言葉でした。
きっと、「もう限界だよ」というサインだったんだと思います。

頑張りたいけど、頑張れない。
塾に行きたいけど、行けない。
宿題をやりたいのに、手が動かない。

そんな自分に苛立ちながらも、母の不安を感じて「自分が家族を苦しめている」と思い込んでしまう

息子の気持ちは不安定になり、家族全体の空気もどんどん重くなっていきました。

僕は「もう中学受験をやめた方がいいのかもしれない」と考え始めました。
「夏までは頑張ろう」と決めた区切りも近づいていたし、この4か月で得た学びもあったからです。




■ 崩れそうになった夜

ある夜、息子が「塾を休む」と言ったとき、僕が塾に電話することになりました。
その後、妻は夕食中に一言も話さず、部屋に閉じこもってしまいました。

理由がわからず、家中が重たい空気に包まれました。

話してみると、妻が怒っていたのは「塾を休むと電話している最中に、息子がゲームを始めたこと」。
さらに、他の約束を守れていなかったことも重なって、妻の気持ちはもう限界に近づいていました。

僕もそのときの息子の行動は、良くないことだと感じ、そして、そのまま不満を溜めていても、空気が悪くなるだけだと感じたので、思い切って家族で話し合うことにしました。




■ 話し合いの空気と、壊れそうな心

けれど、その話し合いはうまくいきませんでした。

妻ができていないことを話し出すと、息子は泣き出しました。
言葉を交わすほど、家の空気はどんどん重くなっていきます。

正しいと思って息子に話しているのに、響くどころか、むしろ心に傷を増やしているような感覚でした。

以前なら何でもない会話だったはずなのに…
どうしてこんなに苦しく感じるんだろう――

このまま続けたら、本当に家族が壊れる――
そう強く感じた僕は、静かに言いました。

「もう中学受験はやめた方がいいと思ってる。
もう、みんな限界じゃないかと感じてる。」

そして、こうも伝えました。

「お父さんの判断が悪かった。みんなを辛くさせてごめん」

謝るしかありませんでした。




■ 息子の涙が教えてくれたこと

そのとき――
息子が涙を流しながら、声を振り絞りました。

「僕、何回も心が折れてるし、これからも折れるかもしれない。」
そう言って、少し息をのみ、
「でも……まだ挑戦したい。」
と続けました。

正直、驚きました。
何度も「辞めたい」と聞いてきたので、息子の中にまだこんな気持ちがあるとは思っていなかったからです。




■ 妻への問いかけ

それでも妻は、不安を口にしました。

「本当に大丈夫なの?また休みたいって言うんじゃない?」

そこで僕は、息子に向き合いながら言いました。

「やりたい気持ちも、辛い気持ちも、どっちもあるよね。
きっとその間で揺れてるんだよね」

ただ、妻が「できないこと」にばかり目を向け続けるのを見て、こう伝えました。

「それでお母さんは、もう無理だと言ってるの?
それとも応援したいと思ってるの?」

「息子はできてないことばかりと思ってる?
それとも頑張ってるって思ってる?」

しばらく沈黙があって、妻は小さな声で答えてくれました。

「頑張っていると思う。」
「応援したいと思ってる。」

この言葉を引き出せたことは、大きな一歩でした。




■ それぞれ少しずつ変えていく

僕は、妻にこう伝えました。

「〇〇は、生きる意味がないってまで言ってる。
頑張ってるのに、お父さんとお母さんの期待に応えられてないって、自分のことを駄目だって傷つけてる。
この状態で続けるのは、難しいと思う。」

「みんなで協力して応援しないと乗り越えられないのに、今は家族が壊れそう。
このままじゃ、挑戦をする一番大変な〇〇が、辛い思いをしてしまうよ」

そして、妻への感謝も伝えました。

「お母さんが辛い中でご飯を作ってくれたこと、息子と2人で『ありがたいよね』って話してたんだよ。
我慢して言葉を飲み込むより、一発思いきり怒ってくれた方が、息子にはきっと伝わるよ」

最後に、息子にはこう話しました。

「お母さんが言ったことは、態度とか約束を守らなかった部分についてだからね。
勉強とは関係なく、そういう部分は直していこう」




■ 話し合うことの大切さ

この日は、家族みんなでギリギリの話し合いをしました。

僕はあらためて思いました。
「話すこと」は、本当に大切だということ。
そして、それ以上に大切なのは――

「話しやすい雰囲気をつくること」

息子に「塾に電話するときにゲームするなよ」、
妻に「できないことばかり、見ないであげてよ」――
できないことを指摘するのは簡単です。

でも、それよりもまず、
できていることに目を向けて、そのことを言葉にして伝えること

それは息子にとって大きな力になるし、妻に対しても同じ。
そして、僕自身も忘れないようにしたいと思っています。

偉そうに書いていますが、僕自身もできていないことが沢山あります。
だからこそ、家族で寄り添いながら進むしかないんだと思います。




■ 「ぼちぼち行こうか」

当時のメモを見ると、こう書いてありました。

「ぼちぼち行こうか」

https://news.yahoo.co.jp/articles/fe625fb0fad8fcd482443666a4817ec20de24719


これは、張り詰めたやりとりがあった日の夜、テレビの野球中継で見た阪神タイガースの外国人選手・デュプランティエ選手のヒーローインタビューでの一言です。

戦いを意識しすぎると、空気が張り詰めてしまう。
でも、この言葉は力を抜かせてくれつつ、それでもちゃんと前に進んでいける。

あの夜、この言葉を聞いた瞬間、家族3人で顔を見合わせて笑いました。
「ぼちぼち行こうか…なんか、いいね。」
その一言で、ピンと張りつめた空気が、ふっと緩んだ気がしました。

今思うと、あのとき僕たちは「応援の在り方」を教えてもらったのかもしれません。

今も時々、「ぼちぼち行こうか」という言葉を思い出します。
信じるって、一気に走ることじゃなくて、家族で歩幅を合わせて進むことなのかもしれません。

少しずつ、でも確かに。
家族で歩幅を合わせながら、僕たちは前へ進んでいる気がします。




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