メタル君の「今日の精神医学豆知識!」(996)-(1000)
皆様、こんにちは。
鹿冶梟介(かやほうすけ)です☺️
先週のXで、最も反響のあったポストです(2.5万インプレッション)
↓
【ワールドカップ医学ネタ(11)】
— 精神科医・鹿冶梟介(かやほうすけ) (@kayahosuke) June 26, 2026
「ワールドカップ後うつ病(Post-World Cup Depression)」
という言葉をご存知だろうか。
医学用語ではないがW杯終了後に生じる
空虚感や喪失感を指す俗語である。
要するに「祭りの後」なのだが
この言葉を聞くと精神科医・木村敏が論じた… https://t.co/hN3gzXdTUY
「Post-World Cup Depression(ワールドカップ後うつ病)」という言葉は、医学的な診断名ではありません。
海外メディアやSNSなどで使われる俗称であり、4年に1度の大会が終わった後に感じる空虚感や喪失感を表現したものです。
もちろん、これは病気という意味ではありません。「毎日楽しみにしていたものが終わってしまった」「生活のリズムが急に変わった」ときに生じる、ごく自然な心理反応と言えるでしょう。
しかし、この「祭りの後」という表現を目にすると、私は精神科医・木村敏の論じた「ポスト・フェストゥム(post festum)」という概念を思い出します。
ポスト・フェストゥムとは、ラテン語で「祭りの後」を意味します。
木村は、うつ病患者の時間意識を考察する中で、人は大きな出来事の最中ではなく、それが終わった「後」に精神的な変化をきたすことがあると論じました。
例えば、受験や結婚式、大きな仕事の終了、定年退職などです。
目標に向かって走り続けている間は気力で乗り切れていても、それが終わった途端に張り詰めていた糸が切れたようになり、急に世界が静かになったように感じることがあります。
ワールドカップも、それに似ています。
約1か月間、世界中が同じ試合を観て、同じゴールに歓喜し、同じ敗戦に肩を落とす。
朝起きれば結果を確認し、夜になれば次の試合を楽しみにする。
日常の時間が、ワールドカップという「祭り」を中心に回っていきます。
そして決勝戦が終わると、その熱狂は驚くほどあっさりと日常へと戻ります。
テレビでは特番が減り、SNSのタイムラインも静かになり、「次の試合」はもうありません。
この静けさを寂しく感じるのは、ごく自然なことです。
もちろん、多くの人は数日もすれば普段の生活に戻ります。
Post-World Cup Depressionは医学的な病名ではなく、精神疾患を意味するものでもありません。
それでも、「祭りの後」に世界が少し違って見えるという感覚は、多くの人が共有できるものではないでしょうか。
それから、このnote記事をもって”メタル君の「今日の精神医学豆知識!」”も終了となります。
4年に渡り掲載してきましたが、よくここまで続けたな...と思います(自分を褒めたいです)。
このシリーズを通して、少しでも精神医学に興味を抱いていただければ幸いです。
この記事を書き終えたとき、「後の祭り」と同様、小生にも「静かな時」が訪れる気がいたしますーー☺️
メタル君の「今日の精神医学豆知識!」は、X(旧: twitter)で毎朝8時にアップしておりました(3月いっぱいで終了)。
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【今日の精神医学豆知識集!(その200)】
996.「「自宅の居心地が悪い患者は 早く退院したがる」は精神病学理者の中井久夫の言葉だよ。日頃から自宅の居心地が悪い、家族との折り合いが悪い患者ほど、「一度入院すると入院が長期化し、益々自宅に居場所がなくなるのでは...」と不安がるそうだよ。
【メタルのおまけ】
家族と仲が悪ければ入院を長引かせたくなる...と思いがちだけど、自宅に居場所がない患者さんは、留守にすればさらに戻るべき場所がなくなる...という結論に至るのかも知れないね。確かにサポーティブな家族ほど、「いつでも帰っておいで」という雰囲気があるから、患者さんも安心して療養に集中できるのかも知れないね。
↓中井久夫著作集、いずれも名著です。
997.「一つの仕事が長続きせず 転職が多い患者は 何度も採用試験に合格した人である」も精神病理学者の中井久夫の言葉だよ。”長続きしない”というネガティブなポイントではなく、再就職(転職)できたというポジティブな面に着目した中井らしい表現だよね。
【メタルのおまけ】
これは中井久夫の言葉の中でも、僕はよく使っている言葉だね。転職しまくって「仕事が長続きしない人」って、精神科の患者さんには結構いるんだよね。日本では転職っていまでもネガティブなイメージが強いけど、米国ではむしろ転職が多い方が評価されるんだよね。中井もこうった日米の転職文化の違いを知ったうえで、転職のポジティブな面を患者さんに気づかせているーーのかも知れないね(しらんけど)。
↓中井久夫先生は、歴史にも造詣が深いのです。これも超おすすめ!
998.「ヒステリーをみたら 器質性疾患を疑え」は信州大学の名誉教授である原田憲一の言葉だよ。ヒステリーは現代における転換性障害や解離性障害のことだけど、意識水準の低下によって類似の症状が起こることがあるから、症状のみで心因性と決めつけるのは良くないね。
【メタルのおまけ】
この格言は、”一応”原田憲一先生の言葉とされているけど、類似の表現はどこにでもあって、僕の場合は「ヒステリーを見たら脳腫瘍を疑え」と教えられたものだね。要するに、心因性の病気と診断するには、器質性の疾患をしっかり除外してからにしましょうーーという警句なんだよね。
↓原田先生の書籍も読みやすいですよ!
999.「あたたかく突き放し 冷たく抱き寄せる」は心理学者である河合隼雄の言葉だよ。心理療法(精神療法)においては、心理士(医師)はクライアント(患者さん)と適切な距離感を保ちながら、転移・逆転移を抑制するべし...という警句だと思うよ。
【メタルのおまけ】
これは精神科や心理の臨床家にとっては至言とも言えるね。精神療法・心理療法においては互いの信頼関係が大前提なんだけど、患者・クライアントの人生を全部背負いこんで、何でもかんでも引き受けるわけにはいかないんだ。だから「あなたなら、これは一人でも解決できると」背中を押し出す優しさを意味すると思うよ。一方、冷たく抱き寄せる、というのは苦しんでいる人に寄り添うことは重要だけど、情に流されてはダメ、巻き込まれてはダメ、という基本的な姿勢を意味すると思うな。かなり簡単な言い方をすれば、「優しさの中にも厳しさを、厳しさの中にも優しさを」という、対人関係における基本原則を示していると思っているよ。
↓こころの処方箋、随分前に読みましたね。
1000.「人生に失敗がないと 人生を失敗する」は精神科医かつ随筆家である斎藤茂太の言葉だよ。僕も患者さんに語る名言のひとつだよ。失敗は脱線ではなく点検の機会。時には立ち止まって、自分の人生を振り返ることも大切だと思うな。
【メタルのおまけ】
この言葉は、僕が臨床家の言葉の中で一番好きな言葉だよ。ずっと成功し続けている人は、少し注意が必要だと思うな。人生には失敗や挫折があってこそ、人は謙虚さを学び、他者への思いやりを育むことができるのではないかな。そうした経験がないと、知らず知らずのうちに天狗になり、人の痛みが分からない人間になってしまうこともあると思うよ。一方で、「失敗ばかりしてつらい」と感じている人もいると思うけど、それは失敗を通して大きく成長している過程なのだと捉えたほうが、前向きに歩んでいけるんじゃないかな。この言葉は、裏を返せば「失敗のない人生は、必ずしも成功した人生ではない」とも言えるね。成功した人生の定義は人それぞれだけど、僕は「自分らしく生きる人生」こそが、本当の意味で成功した人生だと思ってるよ!
↓斎藤茂太先生の本、どれもおすすめですね!
【メタル君の考察】
今回は「精神科医の格言」に関係する精神医学ネタをポストしたよ!
精神科医の格言、どれも心に響くね。
僕も患者さんと話すとき、彼らの言葉を引用することはよくあるよ。
精神科医は他の科と違って、「言葉を処方」するのが特徴。
だから精神科医は多くの言葉、先人たちの格言、素敵な表現を知っておく必要があるんだよ。
要するに精神科医は精神医学のスペシャリストであるのと同時に、言葉選びのスペシャリストである必要もあるんじゃないかな?
そのためには、精神科関係の著書だけでなく、文化・芸術・歴史・音楽、そして最近のエンタメなんかもちゃんと理解していた方が良いと思うよ。
このように精神医学はとてもすそ野が広い分野なんだよ。
今回の投稿で「メタル君の今日の精神医学豆知識!」のマガジンの更新は終了だよ。
この「豆知識」を介して、いろいろな人に出会たのは本当に貴重な体験だったよ。
このシリーズは終了するけど、
これからもマニアックな精神医学ネタを形を変えながら紹介していくぞ😆
今まで、応援ありがとうございました!
↓メタルスライムシリーズ、かわいいですね。
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— 精神科医・鹿冶梟介(かやほうすけ) (@kayahosuke) March 22, 2022
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