Pawn shopは「劇場」だった
― 2011年のPhiladelphiaと、私のリユース店
最近、2011年のPhiladelphia Inquirerに掲載された、Upper Darbyの老舗pawn shop「Lou’s Jewelry & Pawn」の記事を読んだ。
Lou’s Jewelry & Pawnの創業1921年。100年以上続く、Philadelphia郊外のpawn shopだ。記事を読んでいて、不思議な感覚になった。なぜなら、その記事が書かれた2011年、自分はまだTemple Universityの学生としてPhiladelphiaにいたからだ。
当時のPhiladelphiaは、まだ今よりずっと「リアル店舗の時代」だった。
SEPTAに乗り、Manayunkを歩き、古いdinerやmusic storeやpawn shopが普通に街に存在していた。一方で、smartphoneはまだ普及し始めたばかり。2010年代前半はinternet resaleやAmazonは既にかなり普及していたが、InstagramやSpotifyなどのSNSやストリーミングサービスはまだ初期段階にあった。つまり、「古いアメリカ」と「インターネット後の世界」が混ざり始めた時代でもあった。Lou’sについてのこの記事は、その空気をそのまま閉じ込めたような内容だった。
記事の中でオーナーのStan Myersonはこう語る。
“The pawn business is theater.”
「pawn businessは劇場だ」と。
これを読んだ時、妙に納得した。最近、自分もリユース業に対して、似た感覚を持ち始めていたからだ。
リユース業というと、「中古品を安く売る仕事」と思われがちだ。でも実際には違う。そこにあるのは、人生・趣味・挫折・思い出・地域文化・景気・時代などの痕跡だ。
最近、うちのリサイクルショップにも日本刀の持ち込みがあった。制度の関係で買取はしなかった。
私はInstagramに、
「さすがに日本刀は買取りできません(今のところ)」
と投稿した。すると妙に反応があった。
また、以前買い取ったベースの試奏動画も伸びた。
イギリス人夫婦の来店投稿は、普通の商品投稿の10倍以上の反応があった。
最近のInstagramでも、こういった傾向はかなり極端に出ている。普通の商品投稿は、「いいね」は10程度。日本刀投稿は15。ベース動画は72。そして、イギリス人夫婦が来店した投稿は150だった。
つまり、人は「何が売ってるか」以上に、「どんな世界がそこにあるのか」を見ているように思える。
Lou’sの記事にも、それが出ている。Lou’s Jewelry & Pawnの店内に並ぶのは、第二次世界大戦のグッズ、モハメド・アリのサイン、楽器、貴金属、そしてダイヤモンドなどだ。
Myersonは自分の店を"poor man’s bank"と呼ぶ。恐らく、「毎月の支払いに追われて、所有物を売りにくる低所得者への街の銀行の役割を果たしている」という意味だろう。Pawn shopは単なる在庫ではない。「人生の交差点」なのだ。
個人的に記事で印象的だったのは、Myersonが店舗を5店舗から1店舗へ集約したことだ。通常、小売業では「店舗数を増やすこと」が成長だ。
でもインターネットの台頭により、中古品の価格情報は民主化された。今やeBayもある、メルカリもある、Amazonもある。つまり、実店舗で「物を並べるだけ」では差別化できなくなった。
だからMyersonは、恐らく気づいたのだと思う。自分の本当の強みは、店舗数・在庫量・チェーンによる規模などではなく、ユーモアセンス・物語性・査定スキル・地域からの信頼・自分自身の人格などにあることに気付いたのだろう。
これは最近、私自身の会社でも感じ始めている。先述した様に、普通のインスタの商品投稿は殆ど反応が無い。でも、ベース動画、珍しい買取品、外国人との交流、私のユニークな目線を描いた投稿などには反応がある。つまり、人は「価格」以上に、「人格」を見ているのだ。
しかも面白いのは、この世界が決してロマンだけではないことだ。
Myersonは、
“If you get sucked in, then you’re broke.”
「感情移入しすぎると破産する」と言う。
これはかなりリアルだ。pawn/reuse業は、人を見る力・モノを見る力・数字を見る力の全部が必要になる。情だけでもダメ、数字だけでもダメなのだ。
昔、自分はもっと「経営」というものを、KPI・PL・CF・restructuringのような世界として見ていた。もちろんそれも重要だ。実際、今も固定費や資金繰りは毎日見ている。でも最近、
それだけでは説明できないものを感じ始めている。
最近、私のリサイクショップでも面白いことがあった。以前は他の部署で働いていたスタッフが、リサイクルショップへ異動し、釣具売場を担当するようになった。すると急に楽しそうに働き始めた。
休みの日も釣り。お客さんとも釣り話。知識が接客になる。
“好き”が仕事になる。
これは今後の地方での小売のヒントなのかもしれない。
インターネット時代になるほど、逆説的に、「人間がいる店」の価値が上がる。ECは便利だ。もちろん、うちの会社もEC販売は強化している。でも、ユーモア・物語性・奇妙さ・偶然の出会い・会話・空気感などは、リアル店舗にしか作れない。
最近少しずつ感じ始めている。自分は、「スーパー経営」より、「世界観を持ったreuse/pawn店」の方が、自分のOSに合っているのかもしれない、と。
そしてそれは、Temple University時代に見ていたPhiladelphiaの空気と、どこかで繋がっている気がしている。
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