電車の中で、一人で千羽鶴5|神棚が動く、いい仲間と
「一人で千羽鶴」プロジェクト開始後、2週間と少し。
順調に、一人で楽しく通勤時間と土日のプロジェクトは進行している。折りながら聴いている『銃・病原菌・鉄』は下巻まで来た。
雨の日でも紙を汚さず、没頭して、そしてこっそり。
まだ、仕事のプロジェクトメンバーにはバレていない。 ※通勤時間と休日しか対応していないのでそりゃそうや。バレようがない。
途中で嫌になってやめることはなさそうと見えてきたので、そろそろ、次のステップの下ごしらえをしておきたい。
オフィスの中で、飾る場所を確保しなければ。
前回までのまとめ
素因数分解してツルの房1本あたりの羽数と房の本数を考えた
ヒソカの薄っぺらの嘘(ドッキリストラクチャー)と戦って、色構成を決定し、紙を用意した
「一人で千羽鶴」は土日と平日の通勤時間だけでT+54日目で達成できそう。
国際宇宙ステーションでも千羽鶴できるノウハウを身に着け、周囲の奇異の目にも、気象にも負けず、順調に折り続けている
※今日はこんな内容です。

1. (T+16日目)進捗確認と技術の進化
折り始めた当初は、通勤電車の中でダイナミックフォールドスタイルで折る速度は242秒=約4分/羽だった。
T+16日目。帰宅の電車内で折っていて「かなり熟練してきた気がする」と感じた。この日、少し車内が空いていたので立って折りながら時間を測ってみた。
…125秒=約2分。
なんと!ほぼ半分だ!!「自分、電車の中で成長しているっ、、、!」
せっかくなので、まだ元気があったその日は帰宅後に進捗を数えてみた。少し細かめなシミュレーション上は、この日の累計ツル数は285羽のはずだ。

…495羽、折っていた!
周囲を気にしない、耳を充実させる作戦。 ※オーディブルやCOTEN RADIOやゆる言語学ラジオがおもしろいだけで、気にしている場合ではない、という説もある
その日の気象状況を気にする職人性。
ジップロックでの宇宙標準の運用。
それらが知らぬ間に、ものすごいアドバンテージを生んでいた。。
ここまでの折る速さを基準に、この変動要因を推定すると、こうなった。

実は作業時間は足りていなかったものの、効率が上がることでそれがカバーされている可能性が高い。。。
2. (T+17日目)社内交渉とノリ
急に完成が近づいてきたところで、プロジェクト完成後のボトルネックを取り除いておいたほうがいい、という気になった。翌日、先回りした。千羽鶴完成後の根回しをしておこう。
過去、社内プロジェクトの成功を祈って、小さな神棚を勝手にオフィスに構えたことがある。成功祈願に伊勢神宮で勝手に御神楽をお願いし、授けていただいたお札や神饌(しんせん)をお供えするために。
社内のみんなはその神棚が勝手に設置されたことを認知はしているが、僕が注意されたり、とがめられたことはない。
「これなに?」と聞かれたことは… たくさんある。でも、みんな優しくにやけながら受入れてくれた。
普段から優しく職員にかかわってくださる社外監査役に「…これ、神棚? どうしたの…?」と控えめに、(思想が偏ったわけではないよね?と)確認はされた。でも、趣旨や意図を知ると、誰も反対したり懸念を示したりしない。
あるいは、同じプロジェクトに携わっている人は、ご神体やお供え物を増やしてくれたことすらある。つまり、なし崩し的に認めてもらい、文化にしてくれた。
その経験があるので、千羽鶴を飾ること自体はすんなりいくだろうという目論見とともに、社内ですごく軽い気持ちで2人に相談してみた。「いま、プロジェクトの成功を祈って一人で千羽鶴作ってて、完成したらオフィスに飾りたい」と。
まず、普段から社内レイアウトなども取りまとめてくれている社内デザイナに聞いてみた。
「許可とか、だれの権限でOK出すのかとか知らないけど、面白そうじゃん!勝手に飾っちゃおう!」「あの神棚も、みんな反対してないじゃん?」
いとも簡単に背中を押してくれた。
このデザイナは当該プロジェクトにはかかわっていないので、つまり、プロジェクトメンバ以外の代表に承諾いただいたも同然だ。
続いて、当該プロジェクトに携わっている上司にも相談した。つまり、プロジェクトメンバ代表だ。
普段から密にコミュニケーションをとっているけれど、週一で実施している1on1の時間に相談した。
「いや、ちょっと待ってwww、えwww、千羽鶴ってwww一人でできんの?ww」「プロジェクトメンバに言わずにこっそり無謀なことやってるあたりが、”ぽい”ねー」
ニヤニヤとともに、まず一人で千羽鶴に関する事後稟議をご承認いただく。
そのうえで、
「いいじゃん!むしろいま神棚がある場所だと来客に見えないから、千羽鶴できたら神棚ごとまとめて移動して来客からも見えるとこに飾っちゃおう!」

なんとも、いい職場である。
3. (T+23日目)ばれかける
ここまで、「神棚ごとまとめて、来客からも見えるとこに飾っちゃおう!」と全肯定してくれた上司以外、千羽鶴の存在はプロジェクトメンバには黙っていた。
しかし、プロジェクトの飲み会をした帰り道、酔って気が緩んでいて、同じ路線で同じ方向に帰るプロジェクトメンバとしゃべりながらつい、折り始めてしまった!気が緩んでいた!
おもむろにカバンからジップロックを取り出す僕。隣で話していたメンバはそれをふと見て、
「お、千羽鶴ですか?」
と少しだけ触れてきた。ここで僕はようやく、自分のミスに気付いた(酔っていて、それまで気づかなかった!)。
「うん… まあ、そんなとこよ……(もごもご)」
と口を濁す僕。彼は詮索せず、
「そうっすか。。。じゃあ、俺にも1羽折らせてくださいよ」
理由を聞かずに1羽協力してくれる。
「折りヅル、久しぶりで折り方あやふやですわー」
「ってか、え?どんぐりさん、折るのめっちゃ早くないですか?」
「つーか、立ちながらだと折るのむずいっすわ… よく電車の中で折れますね…」
と自然に、驚きながら、苦労して、1羽協力してくれた(この間、僕は4‐5羽折った)。
きっと彼は折るのに協力しながらも、「こいつはなんで千羽鶴を折ってるんだろう?しかも電車の中で」という不審と、翌日からも一緒に仕事して大丈夫かという疑念がもたげていたことだろう。
でも、つべこべ言わずに手伝ってくれた。「なんか事情があるんだろうなあ」「手伝おう」の優しさが不審感と疑念をいとも簡単に上回ったのだろう。
きっと彼は「誰か友達が体調崩したりしてるのかな」くらいの予想のもとで、楽しみながら手伝ってくれた。
※本当は彼も携わるプロジェクトの成功祈願だ
やはり、なんともいい仲間である。こんなメンバと全力投入して進める仕事が一区切りつくときの成功祈願以上に大切なことを思いつかない。
彼らとのプロジェクトの成功を祈ることには、意味がある。プロジェクトメンバに、「一緒に成功しよう」「人事は尽くした、天命を待とう」と思ってもらえたら、もはやそれでいい。

4.(T+31日目)秒読み
ここでひとつ気づいたことがある。
オーディブルで「銃・病原菌・鉄(全部で約23時間あった)」を聴き終わったあたりから、満員電車の中のツル時間も、実は音声コンテンツがなくても奇異の目が気にならなくなった。というよりおそらく、奇異の目で見られなくなった。
きっと熟練したからだ。あまりに迷いなくスムーズかつスピーディーに(繰り返すが、2分/羽だ)ツルを折ると、感心こそされるものの、不審の目では見られなくなる。
手前味噌ではあるが、4分かかっていた頃は拙く気色悪く感じたものが、地下鉄1駅ごとに1羽のペースで折ると「鮮やか」に見えるのではないか。
などと自分の成長の悦に入っている間に、T+31日目(木曜日)にして残すところシルバーグレー色のみとなった。シルバーグレー色はもともと総数40枚で、時折、雨の日にはしろ色の代わりに折ったりもしているので、結果、この時点で残り27枚だった。
この日は木曜日。明日金曜日で27枚は折りきれなさそうではあるものの、確実に土曜日には終わる。秒読み(正確には”羽読み”)段階だ。
5.(T+32日目)ラストスパート
翌日、金曜日。朝は急ぎのスラックが入ってきたので通勤電車内で対応し、折れなかった。
業務中、正直、早く帰り道に折りたくてムズムズしてしまう(註:真面目に働いてます!)。
ちなみに、「早く帰り道で折りたい」であって、必ずしも「早く帰りたい」訳ではない。折りたいだけだ。
満を辞して帰宅の途につく。普段なら、この日のように朝に新聞が読めなかった時は、諦めた朝刊を取り出して帰宅中の電車で読むが、この日は新聞には目もくれず、折り紙ジップロックを取り出す。
一心不乱に折る。イヤホンを着ける数秒すら惜しい。
…気づいたら最寄り駅を一駅乗り過ごしていた。この時の感想は「ミスった」ではなく、素直に「折る時間を追加で確保できた!」だった。
完全に何かを取り違えている。
結局、帰り道の電車の中で折ったのは14羽。残り13羽。
これまで、平日は基本的に帰宅後に折ることはなかったが、この日は待てなかった。帰宅して夕飯後に再開し、最後の折り速度を測りつつ、遂に折り切った。
そう、T-1日目に2羽折ってから33日間で折りきった!!!

5.(T+33日目)ついに1000羽達成!でもまだ終わりじゃない
いよいよ明日は、「1000羽のツル」を「千羽鶴」に組上げよう。
これはこれで楽しそうだけれど、作業工程にどれほどの時間がかかるかよくわからない。。
けれど、仮に組上げにものすごく時間がかかったとしても、折る工程が21日も想定より早く圧倒的前倒しで終わっているので、間に合わないことはなさそうだ。
とりあえずこの日は貯ツル箱を10分くらい眺め、札束風呂ごっこのようなことをしてから、達成感に浸かって寝た。
残るは組上げだ。


この連載の全体像
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回:この投稿
第6回
